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【読書感想文】2014年夏、別れと出会い〜わたしの水玉自伝

『水玉自伝 アーバンギャルド・クロニクル』の感想文…さてどう書いたものか。早々に読み終えたものの、感想と言われるとなんだか書きづらいしちょっと恥ずかしい。そうこうしているうちに、noteを1ヶ月くらい寝かせてしまいました。(締め切りに追われすみません書きます、のメールばかり送ってる書く書く詐欺みたい。)

自伝で一番心を打たれたのは、松永天馬編に綴られているおおくぼけい加入の経緯。特にけいさまから天馬さんへ送られた手紙のくだりは、天馬さん視点でもけいさま視点でも割と淡々と語られていたけれど、【アーバンギャルドに人生を賭けたいです】という一文がとにかく衝撃でした。

人生を賭けたい ── 思ってはいても言葉にして誰かに伝えたことないし言われたこともない。近そうなのは結婚とか?健やかなる時も病める時も。いやちょっと違うかなぁ…なんて考えていたら、そういえば自分がアーバンギャルドと出会ったタイミングはまさにこの手紙が送られたとされる頃で、“おおくぼけい加入前”のとても微妙な時期だったことを自伝を読んで知りました。
ということで、この当時のことをファン目線で綴ってみたいと思います。これは信徒からの手紙です。

* * *

アーバンギャルドとの出会いは2014年7月。サエキけんぞうさんが主催するセルジュ・ゲンスブールをリスペクトするイベント「ゲンスブール・ナイト2014」(@六本木スーパーデラックス)に彼らが出演したときのことでした。

自分にとって2014年は特別な年で、この年の6月に父が癌で亡くなり、葬儀や手続きなどひと通り落ち着き改めて喪失感を感じ始めた頃。
ゲンスブール・ナイトのチケットは前々から押さえていたものの、ライブに行って楽しめるかどうか不安もあって躊躇していたとき、「今年はアーバンギャルドが出るんだね、面白そう。せっかくだから行ってきたら?鈴木慶一のControversial Sparkの新年ライブにアーバンギャルドの人が出ていて印象深かったんだよね」と夫に背中を押されたのでした。
確かサエキさんのイベント告知文にアーバンギャルドの紹介として“下僕戦争”みたいなことが書かれていて、どういうことなんだろう?と印象深かったのを覚えています。

ちょっと話は逸れますが、私はフランスのアーティスト、セルジュ・ゲンスブールが昔から大好きで、このイベントも恐ろしいことに15、6年くらい前から通っています。スシ頭の男・サエキさん率いるクラブジュテームやトースティ(バゲット・バルドー)を筆頭に、毎年“ゲンスブール”を合言葉に多彩な表現者が出演。過去には、かしぶち哲郎、佐藤奈々子、いまみちともたか、YMCK…大昔だとサエキさんがプロデュースしていた頃のデジっ娘が出演していたこともあったっけ?
すでに懐かしきかな輝かしきビフォアコロナのライブハウス。

この年のゲンスブール・ナイト、期待を裏切らずアーバンギャルドはかなり目立っていたように覚えています。
ポイズン・ガールフレンドのゲストヴォーカルとして登場した松永天馬fromアーバンギャルド。今思うと、珍しくフランス語での歌唱でした。第一印象は・・・独特の陰鬱とした空気をまとった人だなぁ。(この人が下僕・・?混乱)

そして浜崎容子fromアーバンギャルドの登場。
迫力ある美しい人が現れてハッとした途端、澄んで芯の通ったウィスパーヴォイスが聴こえ、フレンチファン的には鷲掴みにされました。
そして、よこたんがセルジュ・ゲンスブールの曲からインスパイアされて作ったという『スカート革命』の演奏を聴いて、あ!この人ゲンスブール大好きなんだなぁ+曲の良さ+歌詞の良さに、俄然アーバンギャルドに興味を持ちました。(ちなみに、水玉自伝プレイリストに入ってるゲンスブール曲、『おれの外人部隊』が入っててテンションあがりました)

このときピアノを演奏していたのが大久保ケイ。
「ゲンスブールの曲をあんな風にピアノで弾くなんて凄すぎる・・このピアニストの大久保ケイさんって・・?」フロアもその迫力に、固唾を飲んで聴いていたのを記憶しています。
ピアノでそこまで弾く⁉︎というくらいガツンとしたオケのようなピアノ、これは伴奏じゃない、凄い人を知ってしまったな〜!とかなり興奮しました。単純に出会いが嬉しかったです。
MCで、「バンドのメンバーではないけれど、とても信頼している素晴らしいピアニストの大久保さんです。」というような紹介があり、アーバンギャルドのメンバーではないのかぁ…ちょっと残念だなぁと当時何も知らない自分は思ったのでした。

* * *

つい先日、父の七回忌をおこなったこともあって、亡くなった当時のこととか病院で交わした会話なんかを振り返っていました。故人の思い出は年々純化されて結晶の粒になり、心の小箱にそっとしまわれていきます。
2014年夏のゲンスブールナイトのことを何かSNSなりに記録していたかな…と見てみましたが何も発信していませんでした。喪に服していたのかもしれません。なのであのときの感動を改めて振り返ってこうして綴ることができて良かった。
ありがとうございました。

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