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【当方見聞録】空のおもてなしとアゴのおもてなし

久々に国際線でJALに乗った。

JALといえばクリステルもびっくりのホスピタリティでお馴染みの、日本の翼。
海外のエアラインだと、JALクラスのおもてなしはそうそうない。

JALのCAさんは甲斐甲斐しい。

いくら私の方が背が高くとも、
荷物入れ閉めるときは駆け寄って交代。
背がギリギリでなかなか閉まらないから代わりましょうかと申し出ても、
過剰に感謝しながら閉めようとし続ける。
逆に話しかけてしゃべりながらで余計ツラくしてごめんね、
と、こちらは心の中で謝る。

機長のあいさつは完成されたスピーチの様相。
この日は天候不良で40分ほど出発が遅れていたが、
平謝りに遅れを詫びる。
遅れを取り戻すべく策も練っているらしい。

「ご出発の遅れを少しでも縮めできうる限り早く到着すべく、いつもより少し速い◯◯ノット、新幹線の約4倍のスピードで、
高度◯◯メートル、富士山の約3倍の高さを東京へと航行しております」

細かいニュアンスは忘れたが、
人気予備校講師かのような、
淀みなく通る声と分かりやすい例えがスッと入ってくる。
これから先わたしは生涯、
飛行機の速度と高度は新幹線と富士山に例えるだろう。

しばらくしてトイレに立った。
通路逆側のトイレが空いていたので、
あの、バックヤードみたいな、
CAさんの待機所みたいな場所を通る。
すると皆さん満面の笑みでこちらへどうぞとトイレ前までご案内。
邪魔してごめん、、、と思いながら、
帰り道も気を使いつつ戻る。

CAさんの甲斐甲斐しいホスピタリティは続く。
やれ、アイスだ毛布だ新聞だ、
ご要望はあくまで床にひざをつき、
「お客様より下から目線」で承る。

そうこうしているうちに、もう一度トイレに立った。
今度は逆サイドも埋まっていたので、
自分の席サイドで空き待ち。

すると向こう側が先に空いたらしい。
通路的バックヤードで休んでいたCAさんが、
足を斜めに組んで何か飲みながら、
アゴで逆側指して教えてくれた。

「あ、ありがとー」と思って移動。
、、、って、あれ。
今のCAさん急にホスピタリティ忘れてアゴシャク案内?

その後席に戻り行き来するCAさんをよく見たら、
アゴシャクさんは、中国人CAだと言うことが発覚。
日本人CAはバックヤードでも過剰なホスピタリティを発揮するが、
中国四千年の歴史の前では些細で面倒くさすぎる過剰供給なのだ。

でもって、フライト中で一番ありがとー、って感じたCAさんの仕事はアゴシャクなのだ。

たった10分遅れにまで挽回した機長率いる飛行機を降り立ち、
日本品質の未来を思う冬の夜。

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