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フリーランス映像クリエイター独立ロードマップ

はじめまして、映像ディレクターの松浦です。
山口県のインターネットが届かない限界集落の古民家に移住してから
映像制作の個人事業を立ち上げ、5年目になります。

今回は2022年までの振り返りを兼ねて、僕が全くカメラも編集ソフトも触ったこともない時期からどうやって個人事業として独立してきたのか、そのロードマップを書いていきます。これからクリエイターやフリーランスとしてお仕事をされたい方の参考になれば嬉しいです。まず、僕の経歴と自己紹介は下記の通りです。

経歴・自己紹介

実写のブランディング映像が得意なディレクター。ブライダル動画制作会社にて動画カメラマンとして100本以上の撮影経験を積んだ後、2018年に個人事業で独立。主にWEB向けのブランディング映像、企業紹介動画、採用動画、教育動画、商品・サービスプロモーション動画、インタビュー動画などを制作。東証一部上場企業テレビCMなども制作。映像の企画、演出、撮影、空撮、編集、カラーグレーディング、サウンドデザインなど制作の上流から下流まで一貫して担うことができます。詳細はHPにて↓

僕が制作の過程において「できること」のカバー範囲は広く、また今までの実績のうち90%以上は下請けではなく直案件です。つまり、ほとんどすべての制作に関してヒアリングから納品・アフターフォローまでの過程を僕一人でおこなっています。また、制作だけでなくソーシャルメディア等での動画の活用についての知見も深い方です。いずれのスキルも世の中のニーズに応えようとした結果、必然的に培われてきた力と言えるでしょう。おそらく山口県内でここまでやっている人はごくわずかのはずです。

初期段階でやったことは2つ

そんな僕ですが、2015年ぐらいまでは撮影機材に触れたこともなく、個人事業の経験もありませんでした。当時の僕が最初期の段階でやったことは、次の2つでした。

① 知らないことを知る

まず最初にやったことは「知らないことを知る」ことでした。「無知の知」という言葉があります。僕の場合はまず自分が「知らない」ということを知ってからがスタートでした。インターネットでありとあらゆる情報にアクセスでき、SNSを通じていろいろな人とコミュニケーションをとれるにも関わらず、昔の僕は世の中の情報に疎く、あまり社会に目を向けていませんでした。しかしある休日、何気なくネットサーフィンをしていたら、自分が世の中のことについて知らないことだらけだと、ふと気づいたのです。その「無知の知」から、僕はありとあらゆるニュース記事を読み漁り、気になった分野の本は書店や図書館で棚ごと読んでいきました。これから世の中はどう変わっていくのか、想像するだけでワクワクが止まらず、朝から晩まで情報の海を泳いでいました。無知の知は自らの目的意識を育み、さらなる能動的な探究へとつながっていきます。そして、いろいろと世の中のことを学んでいくうちに、下記のようなことを思い描くようになっていきました。

  • 将来は働き方の選択肢がもっと増える

  • 大きな組織や団体に所属する以外にも、個人レベルで人や資金を集めて自分のやりたいことを実現できる世の中になっていく

  • そのためには情報を発信することが大切

  • 情報発信の最もパワフルな手段はテキストや写真から動画にシフトしていく

  • 自ら仕事をつくれるようになりたい

  • 仕事といっても、自分にとって好きで、得で、人の役に立つ仕事をしたい (これは別の記事にもまとめてあります)

②「できること」をつくる

次にやったことが、「できること」をつくるということでした。好きなことを得意になるまでやると、できることが増え、できることが増えると人に貢献できるようになり、だんだんと仕事につながっていきます。動画をつくることに関心を持ち始めた僕が、2014年頃の当時にたまたま見つけたのがブライダルの動画撮影カメラマンの仕事でした。仕事の内容は、結婚式の一日に密着してカメラマンが撮影を行い、もう一人の編集者が同時並行で編集した動画を披露宴の最後に流すというものでした。しかし、動画に関心があるとはいえ、当時の僕にとっては全くの未経験です。それでもとりあえずやってみようと決めて、契約カメラマンとして研修を受けながら仕事を始めました。

会社はスキルが身につき給与までもらえる

映像制作の仕事と言ってもいろいろな分野や入口があります。僕は撮影技術を身につけることから始めましたが、撮影なり編集なり好きなものからとりあえずやってみるのがいいと思います。僕の所属したブライダル動画制作会社では撮影機材を一式使わせてもらいながら、技術を一から教えてもらえて、しかも給与まで出るので、なんてラッキーなんだと思っていました。初期の撮影研修については、筋がよかったのか、通常半年、早くて3ヶ月はかかると言われていたところを2ヶ月弱で終えることができ、撮影は「好き」で「得意」な仕事かもしれないと早い段階で自信がつきました。結局、1年半で120回ほど撮影現場に立ち、撮り漏らしもなく全てノーミスで撮影をやり切りました。こういった小さな成功体験を重ねるなかで、これなら自分でも仕事にできるとの手応えを感じました。

2018年に独立して以降はブライダル業界の仕事はほとんどしていませんが、現在では新型コロナウイルスや少子化、社会の経済状況等の影響でブライダル業界は苦しい状況にあると思います。今後企業で技術を学びたい方は、他にもテレビCMやWEB動画などの制作会社という選択肢が増えてきているので、おもしろい会社を見つけてそこのリソースを最大限に享受しながら学ぶと最速で技術が身につくと思います。

一つずつできることを足していく

このようにとりあえず撮影の仕事を通じて「できること」を一つつくり、一眼レフ等の撮影・編集機材も最低限揃えました。当時はまだ編集はほとんどできませんでしたが、僕はこの段階で住んでいた神戸から山口県の限界集落に移住しました。

知り合いもほとんどいない土地。入居先はボロボロの古民家。今思えばいろいろと無謀だったと思います。2018年の夏でした。

こういった流れで僕は移住と同時に映像制作の活動を開始していきました。漠然と動画をつくって売ることはイメージできていましたが、まだ編集が十分にできなかったので、朝から晩までYouTubeのチュートリアル動画を参考にしながら独学で学ぶ日々が続きました。しばらくすると段々とAdobe Premiere Proでの編集ができるようになっていきました。一つ、二つとできることが増えると、その分自分が担える役割も増えます。その後も仕事の幅を少しずつ広げながら、できることを一つずつ足していきました。

独立までのロードマップ

ここでは僕の場合の仕事の取り方を経験を踏まえて解説します。

①支出を下げる

独立にあたって、収入を得る前に必ずしなければならないことは、生活費等の支出を下げることです。独立してから仕事の受注が安定するまでにはある程度時間がかかることを想定した場合、収入がゼロになったとしても暮らしていける期間をできるだけ長くすることが大切です。仮に十分な貯蓄がある状態で個人事業を始めたとしても、支出が大きければ生存期間は短くなってしまいます。支出を下げるために、まずは固定費を限界まで下げてください。僕の場合は、古民家の家賃が母家と離れの2軒を合わせて1.5万円です。

②自主制作の作品をつくる

支出を下げたら、自主制作の作品をつくります。これは僕の失敗談でもありますが、独立当初は自分自身の実績と言えるようなものは何もなく、自主制作した映像もほとんどありませんでした。最初の仕事を取るにしても、そもそも自分がどんなものをつくれるのか示せるものがないため、僕の場合は自主制作の作品をつくるところから始めなければなりませんでした。自主制作の作品を事前に用意していれば、最初の仕事を取るまでがスムーズです。独立されたい方は、慎重になりすぎる必要はありませんが、最低限でもまずは自主制作の作品をつくってからスタートすることをおすすめします。

③口コミで自分を売りこむ

僕は独立して5年目に入った今でも、ほとんどの仕事は口コミでいただいています。SNSでの発信が仕事につながる場合もあるかとは思いますが、認知も実績も発信力も少ない初期段階で仕事につなげるためには、口コミが最も有効だと思います。僕の場合、最初はどうやって仕事に結びつけたらいいかわからず、いろいろなお店やイベントを訪れて、出会った人に自分が映像制作をしていることを伝えたり、SNSでつながったりしていきました。まずは自分のことを知ってもらったことで、後々その方の知り合いの知り合いの方から仕事のご依頼をいただくなど、口コミで僕のことが広がっていきました。

④価格を下げて受注しポートフォリオを磨く

口コミでたくさんの方に自分を売りこんだら、最初は価格を下げて案件を受注します。「まだ実績が少ないため、価格を下げるので制作をさせていただけませんか」と正直に伝えていいと思います。

僕の記念すべき最初の案件は、街なかで知り合ったバーのオーナーさんからいただきました。開店20周年のDJイベントを記録撮影してほしいとの内容でした。撮影は夕方から朝方まで続き、編集も膨大な時間がかかってしまいましたが、当時は価格のつけ方がわかっておらず、後々計算すると報酬は時給300円ぐらいになってしまっていました。一方、そこで稼働時間と制作費とのバランスや価格交渉の大切さなど、制作を仕事として成立させるために大切なことを身をもって学ぶこともできました。こういったかたちで経験を積み、サービスを磨きながら、少しずつ自分自身のポートフォリオを磨いていきます。これがクリエイターとしての信頼につながっていきます。

ちなみに実績はポートフォリオサイトを作成し、そこに掲載することをおすすめします。最初はAdobe Portfolioなど無料の簡単なものでいいと思いますが、デザインは簡素なものになってしまうため、大きな案件にはつながりにくいと思います。ある程度実績が増えてきたらしっかりとHPを制作した方が良いです。

⑤磨いたポートフォリオをもとにもっと大きな案件を狙う

価格を下げて実績を重ねてきたら、ポートフォリオをもとにもっと大きな案件を狙います。僕の場合、最初期は個人店のプロモーション動画などが主な仕事でした。そういった実績をポートフォリオに掲載し、また多くの人とつながっていくことで、徐々に個人店だけでなく中小企業の企業紹介動画や採用動画などのご依頼もいただくようになっていきました。最初は収益化すら大変な状況だと思います。しかし、だからといって価格を抑えた仕事をずっと続けていては、心身ともに疲弊してしまいます。その状態から抜け出すためには、実績を積み重ねながら、自分のサービスの付加価値を高め続けていく必要があります。僕の場合は、新しい案件を受注する度に表現や技術など新しいことに挑戦し続けて、自分自身の付加価値を高めていきました。

⑥余った時間や利益は自己投資にまわす

案件の規模が広がってくると、余剰の時間や収益が少しずつ出てきます。ここで大切なのは、生まれた時間やお金をさらに自己投資に回すことです。新しいことを学んだり身につけたりして、さらに付加価値を高めていきます。僕はできるだけ最短ルートで付加価値を高めたかったので、余った時間や利益は自己投資に全振りし続けました。機材も買い足し、ドローン、音響、及び照明機材なども徐々に揃えていきました。結果的に「できること」の幅はいまだに広がり続けています。

⑦チームをつくりディレクションを行う

付加価値を高めながら案件が大きくなっていくにつれて、だんだんとワンオペでの制作には労力や制作時間といった面で限界が出てきます。ワンオペで制作する場合は、どうしても制作できる本数に限界ができてしまうためです。また、機材が増えてくると、どうしてもアシスタントの存在が必要になってきます。この段階では制作の上流から下流までの一連の流れをすべてできる状態になっているので、チームをつくったり制作の一部を外注したりしながら、自らはディレクションを行います。

⑧得意な分野を伸ばして希少性を高める

たくさんの案件と向き合っていく中で、自分自身の得意な分野を見極め、長所を伸ばしていきます。最初は何が得意か判断が難しいと思いますが、それが見つかるまではとにかくたくさんの映像をつくると良いです。希少性を高めることで、たくさんの映像制作者たちのなかでも「この人に頼みたい」と、選ばれる人になっていきます。

⑨コンサルティングなど制作以外の周辺領域の仕事も増やす

これまでの段階で案件が継続的に受注できているのであれば、ほとんど独立は成功していると思います。しかし、まだ案件の受注量に波があることなどが原因で収益が不安定な場合は、月額契約のコンサルティングを行うなど、継続的な収入源をつくることで、収益がより安定していきます。これまでに積み上げてきたノウハウを多くの人に提供するなど、自分の「できること」を活かしながら制作以外の周辺領域でも活動の幅を広げ、自分の目指したい方向へ向かって進んでいきます。

まとめ

以上が、僕の経験を踏まえた、フリーランス映像クリエイターの独立ロードマップです。映像制作に限らず、他分野のクリエイターさんにも共通点が多いと思います。かつては「できること」が少なかった僕ですが、一つひとつ積み上げていくことで段々とできることが増え、それが得意になり、人に貢献できるようになっていきました。これからフリーランスやクリエイターという働き方を目指される方は不安なこともたくさんあるとは思いますが、まずはできることを増やす行動を一つひとつ積み重ねてみてください。もしこの記事が気に入った方やご相談のある方は、お気軽にコメントいただければと思います。拡散もしていただけるとうれしいです。僕もまだ旅の途中ではありますが、皆さんが一人ひとりが思い描く働き方を実現されることを心から願っています。

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