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僕を救ってくれた柔道

今から17年前のこと。当時36歳だった僕は子どもたちにどうしても柔道を習わせたくて、電話帳で調べた町の柔道場へ足を運び、周囲のすすめもあって、親である自分も一緒に柔道を始めることにした。

運動は子どもの頃から苦手で、はじめは道場へ通うのが苦痛だったけれど、やっているうちに引き込まれ、一年後には、祖父ほどの年齢の人と二人で、小学校低学年以下のクラスを教えるまでになっていた。

妹が急逝したのは、ちょうどその頃だった。僕は三日三晩、部屋に閉じこもって泣き続けた。一歩も外に出ることができず、会社にも行けないという状態だった。しかし、哀しみで動けなくなっていた脳裏に、ふと柔道場で待っている子どもたちの姿が浮かび、気がつくと僕は外へ飛び出していた。そして、子どもたちと一緒に汗を流して稽古をするうちに、心が次第に軽くなっていったのだった。

もしもあの時、電話帳で調べた柔道場へ足を運んでいなかったら、そして柔道を始めていなかったら、僕は会社へ復帰できなかったかもしれない。その後もいろんなことがあったけれど、その度に柔道は僕の心の支えになってきた。そのことを思うと、本当に柔道をはじめてよかったと思う。

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