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合気道マニアック本『合気道神髄 創元之巻』を部分的に解説【呼吸とは何か?】

今回紹介するのは大阪合気会の創始者である田中万川先生が合気道の正しい知識の普及を目指して限定600部、価格1万円で販売したという『合気神髄 創元之巻』だぁ!

その部数の少なさから中古価格はアホみたいに値上がりしており現在では6万~10数万円あたりで取引されているっぽい。

ヤフオク!より抜粋 クリックでリンクに飛べるよ!

たけぇ~~~~~、単体の合気道に関する本としてはかなりの高値だと思う。

といっても内容は96ページくらいだし挿絵や余白も多い。

文字数にしても2万5千字いかないくらいなので、ボリュームとしては少なめなので価格と内容が釣り合っているかと言われると……ちょっと高すぎる。

せっかく合気道の真の意義について広めるために書かれた本なのに希少過ぎて多くの人が読めないというのも残念な話だ。

というわけで、この本を何故か入手したことがあるこの私がどんなことが書いてあるのかポイントを絞りながら少し解説してみたい。

著者:田中万川ばんせんとは?

本題に入る前にまずは田中万川という人の経歴を書いておこう。

本名、田中伊三郎。1912~1988年。合気道八段。

戦前からの弟子ではあるけれど、戦後に岩間で集中的に稽古し、その後は大阪で自宅を道場に改造し開祖を招いて合気道の稽古と普及を行った。

田中が合気道をはじめる前から親交があって合気道を大阪でやっていた阿部醒石はたまたま家を訪ねたら、家に合気道開祖がいたからめっちゃびっくりした的な事を語っていたりする。

開祖が泊まり込みで稽古をつけて、大阪の拠点を守る人として育てたのが田中万川先生なのだろう。

数少ない動画などから個人的なイメージを言えば「気合」の人

「合気道はパピプペポ」と言ったとかいう話もあり、技をするときには「パッ」とか「ピッ」みたいなことを叫ぶし、技の説明でも大阪のおっちゃんらしい擬音表現が多い。

ただこれは合気道開祖も「気合」を重視しており、YouTubeで見られる開祖の演武なんかはほとんど声が入っていないけれど、実際はかなり叫んでいたらしいので、ある意味では合気道開祖の伝統を受け継いだ先生だ。

合気道神髄その内容とは?

この本の一番大事な部分は合気道開祖である植芝盛平の言葉の解説書となっているところにあると思う。

合気道の稽古そのものと絡めながら、なぜ開祖の言葉が合気道の修行において重要になるかが書かれている。

まえがきによれば開祖からはこうしたことを文章にすることは戒められていたのだけれど、合気道の格闘化や道からの逸脱を憂いて筆を取ったということのようだ。

教えたいことのあらましを全部この本にブチこんだらしく、続く巻からは細かい部分を詳細に解説していく予定だったらしい。う~ん、残念。

呼吸の意味

合気道でいうところの『呼吸』とは何か?については色々と議論があるけれど開祖から学んだ田中万川によれば呼吸とは呼と吸であり、つまりは陰と陽のことでもあり、すべてのものが対応関係にあるということらしい。

火と水は父であり母、これらが合わさって世界ができる💕
軽いものは息で重い物は形になる、組み合わさるとコエが出る。

みたいな感じで、とにかく物事はすべて対応する関係、陰と陽から成り立っているってことが細かく説明されている。

躰用、主に一刀流でいうところの体(業)用(心)、清いものと濁れるもの清濁せいだく、といった対応関係も陰陽であり、それと同じように火と水も陰陽。

昼と夜が太陽と月によって巡るのは天の呼吸、潮が満ちたり引いたりするのは地の呼吸。波が打ち寄せる時には音が出て、引くときは静かなように人間の呼吸も吐くときは声が出て、吸う時は音はない。

人の体は水氣ミギ火垂ヒダリに分けられる。みたいなことまでとにかく陰陽の関係にあるというわけだ。

そしてこうした相反するものが合わさってはじめて中心が生まれる。これが息でもある。水火と書いてイキとも読む。それを反対にすれば火水カミで陰陽こそが万物の中心

だから合気道は呼吸(息)によって妙法を知る。

この本には『天地の真理を知らんと欲せば、近くは己の水火イキにあり』と書かれており、まずは身近な所からしっかりとした陰陽の分類が必要でありそれらをもって一つにすることが森羅万象の動きとなると説明されている。

これはある種の合気道における修行の過程とも言えるだろう。

まとめ

火と水、左と右、バラバラのものを「中心」である自分が統合して一つにしていくことで、物理法則にのっとった自然な動きができてくるというわけだ。

まずは自分から、そして自他という陰陽、自分と他人をもひとつにしていく……ということかも知れない。

稽古をこうした視点から考えてみることも合気道を知ることに繋がるんじゃないだろうか?

正直なところ、こういう神話的な話は理解していても別に合気道が上達するわけじゃない。

けれど、理解していることで稽古すべきこととそうでないことがわかってくる。

反対のもの、逆のものを稽古していくことで、それはまた別の陰陽へと派生していって、やがて丸い円が描かれていく。

ひとつひとつの技は別々の稽古ではなく、同じ中心がある。

呼吸は別々ではなく息であり、息があるからこそ生きることができるし、それがすべてに活きていく、そんな稽古が良い稽古なんだと思う。

というわけで今回はこんくらいにしといてやるか!
気が向いたら続くかも知れないし、続かないかも知れない。
まとめるのめっちゃ大変だったんで。



以上

マツリの合気道はワシが育てたって言いたくない?