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なぜ合気道における正勝吾勝勝速日命は重要なのか?を妄想した

合気道の開祖は神道系の宗教にドはまりし、稽古中に古事記の神様の話ばっかりしていたので弟子たちはめっちゃ困惑したというエピソードがある。

でもなんで神だったんだろう?
現代の格闘技には特定の神様なんていないにも関わらず、なぜ合気道には信仰が必要だったのだろうか?

正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命

そんな謎をひもとくキーワードは開祖が頻繁に口にしていた「真の武は、正勝、吾勝、勝速日であるから、いかなる場合にも絶対不敗である。」「合気道は天の浮橋に立たねばなりません」という言葉にあるとおれは思う。

てなわけでおれの妄想におつきあい頂こうじゃあないか。

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合気道開祖・植芝盛平
(画像引用元はコチラ)
直弟子たちが語る植芝盛平 ―― 開祖が伝え残したもの

Tips
多くの直弟子たちは当時は若くて稽古したかったから神様の話は意味不明でだるいだけだったけど、今になって思うともっとちゃんと聞いときゃよかった、的なことを言っていたりする。

合気道イチオシの神様は正勝吾勝勝速日天之忍穂耳命(マサカツアカツカツハヤヒアメノオシホミミ)、なげぇので以下、オシホミミ。

おしほみみ

(Wikipediaアメノオシホミミより引用)

その名の由来

太陽神アマテラスと乱暴者スサノオのふたりの神がモメたことに起因する。

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(Wikipedia天照大神より引用)

アマテラスは「スサノオはわたしを裏切るんじゃね?」と疑っていたので、それを晴らすために誓約(うけひ)という占いみたいなやつをして互いの持ち物から子供を産み、その結果でスサノオの真意を見定めることになった。

そこでアマテラスがスサノオの剣から神を生み出すとオシホミミが生まれた。これはどうやらガチャでいうところのSSRにあたる超大当たりだったらしい。
それを見たスサノオはこう叫んだ。

スサノオ

(Wikipediaスサノオより引用)

Tips
スサノオは乱暴者で有名

「おれの剣から激レアのオシホミミが生まれた……ということは? おれの心が清らかだった証明だぁ!正々堂々勝ちました(正勝)、おれの勝ちです(吾勝)、日が登るよりも速い圧倒的な大勝利!(勝速日)」
これが由来となり、さらに生命の誕生を意味する忍穂耳という言葉を加えてあのながい名前になったわけだ。
スサノオは自分でこう言い張って事なきを得たわけだが……これは、後出しじゃんけんでは?

オシホミミのエピソード

この勝利と生命の神となったオシホミミが何をしたかというと、なんと何もしなかった。
本来なら地上を平定するため天孫降臨することが約束されていたのだが……。

天の浮橋(アメノウキハシ)という地上と天の中間にある橋で地上を眺めると、まだまだバチバチに戦争していたので「やべぇ~、めんどくせぇ~~~」と思って引き返し、代わりに息子のニニギを派遣したのだった。

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(Wikipediaニニギより引用)

Tips
こいつが面食いだったので、我々の寿命は短くなったと言われている。

くるぞ、くるぞ、と思わせて結局こないんかーい!というのがオシホミミのスタイル。

なぜこれが合気道の推しの神なのか?

なんでこんな、何もしなかったに等しい神が合気道では激推しなのか?
あまつさえ開祖は合気道の修行者は何をおいてもまず「天の浮橋」に立たなければならない(武産合気より)とまで言っている。

それを知るためにはまず、ちょっとだけカミのことを知らなくてはならない。

合気道(あるいは神道系の宗教?)ではカミのこと火・水と書く
火と水、相反するものを神と呼ぶ。

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これは天火地水とも言われていて、天には太陽、地には海がある。大自然、天地のこと。自然には陰陽があり、その両方を合わせて神と呼ぶ。

合気道の準備体操

これを前提として、合気道は準備体操で神道の行法からとったと言われる「振魂」(ふりたま)というのがある。

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振魂をする開祖
(Youtube植芝盛平 78歳 Ueshiba Morihei [Master of Aiki]より引用)

両手を合わせて、身体の前で振るのだが、このとき右手が下で左手が上と言われている。
右のみ、は水のみ。左のひは火のひ
というわけでこれを合わせる。火と水、天と地、つまりカ・ミ。相反する陰と陽とを象徴している。そしてそれが人を通して表現される、的な感じだろうか。

合気道の技が本当に効くのは押しても引いてもいない状態の時。右手と左手、全身の動きが一致したバランスの取れた状態
この状態で仕掛けられるとなすすべがなくなる。こういうカミの状態が一番技が効く。

バランス、調和、和合、陰と陽が調和したその真ん中にカミがいるってわけだ。

天の浮橋とは中心のこと

合気道開祖はかつて大東流という柔術を修行していた。しかし、その後、大本教という神道系の宗教にどハマりして大東流から距離を置いていく。
一説には宗教にハマってからの方が強くなったとの話もある。
なぜか?

象徴的なのは海軍の剣道が強いえらい人と試合した時のエピソードだ。
えらいひとなので、勝つために卑怯な技を使うわけにもいかないし、かといって海軍に指導しているので負けていいわけでもないという難しい状況だったらしい。
そこで勝とうとしないでとりあえず相手の攻撃を捌いていると、相手が疲れ果ててこんなことは初めてだと驚きながら降参したという。

この出来事には開祖自身もビックリしたらしく、この後に水浴びをしてたら悟りが開けてすべてが理解できた、みたいなことを語っている。
結局、勝とうともしない、しかし負けるわけでもない、最初から勝ってるから相手に合わせているだけで勝ってしまった、みたいなことなのだろう。
勝ちと負けという明確な物事の狭間、見えるはずのない場所にカミが見えたのかも知れない。

最初から勝っている

オシホミミは天の浮橋に立って、自分で好きな方を選んだ。地上に天孫降臨するか、それとも天に引っ込むか。
最初から勝利していたオシホミミはどちらを選んでも勝っている。それが合気道の目指す正勝吾勝勝速日の精神であり、天の浮橋に立つことなんじゃねーかな?とおれは妄想している。

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(Wikipediaイザナギより引用)

Tips
イザナギとイザナミが日本を創造したときも天の浮橋から地上を矛でかき混ぜてつくった。

正勝吾勝勝速日とは最初から勝っているという意味であり、天の浮橋に立つとは勝ったまま自由に選べるということ……そんな宗教の逸話と実際の一致が起こったからには、宗教へのどハマりもやむなし、そんな気はする。

まとめ

オシホミミを見習って、めんどくせぇことはやめてもいいようにしておきたい。

なにもせずに勝った気でいたい。

天の浮橋から下界の喧騒を見おろして「お~やっとるやっとる」みたいな感じで眺めたい。

……あれ? オシホミミ、最低なやつでは?



おわり

マツリの合気道はワシが育てたって言いたくない?