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合気道マニアック本解説『武の真人』著:砂泊兼基

個人的にはこのくらいの本はマニアックでもなんでもないとは思うが、現実問題としてはそうでもなさそうなので解説する。

万生館合気道の砂泊諴秀の兄、砂泊兼基が開祖の話を聞き取ったものをまとめたのがこの本だ。

もともと砂泊家は大本教にいたらしく、盛平とは親しかったと思われる。そのためか植芝盛平本人による自分の生涯や思想をインタビューできたということらしい。

歴史パート

だいたい2/3くらいは生い立ちから合気道を創設するまでのエピソードになっている。

兵隊の神様と呼ばれたとか、熊と仲良くなって一緒に寝たとか、中にはホントか怪しい話もあるので話が盛られてる部分もある気がする。盛平だけに。

とはいえモンゴルで革命を起こしにいった話なんかはけっこう詳細に顛末が書いてあるなど、面白い部分も多い。

合気道をはじめたころに読んだ時はなんか開祖を持ち上げるための本かな?という感じだったけれど、改めて歴史を理解した上で読むと、けっこうマジな話を本人視点で語ってるんだなというのがわかった。

思想パート

残る1/3には合気道の思想的な意味についての解説があり、こちらは自身の合気道思想の解説なので貴重な資料だと言える。

わけがわからないことを除けば。

開祖は基本的に物事を陰と陽のような対になるものとして分類しているのだけれど、ここでは肉体的分類と精神的分類があることが解説されている。

ほとんどの人には興味ない話だろうけど、「一霊四魂」が精神の分類で「三元八力」が肉体の分類なのだそうだ。

開祖はとにかく座り技の稽古が好きで、弟子達が座り技の稽古をしていると機嫌が良くなったと言う。

その理屈も解説してあって、座り技は「地」にあたる稽古で、半身半立が「人」、立技は「天」の稽古であり地で下半身、人で腰、天で上半身を練磨する段階的な稽古と考えていたらしい。

余談

本人によって語られた様々なエピソードは脚色があるとはいえ、本人の考えを知る上では大切だ。

特に思想面は本人にしかわからないような話でもあるので、解説してくれるのはありがたい。

開祖が亡くなる2ヶ月前くらいにギリギリ本が完成して出版されたというのもわりとドラマチックな話だ。

ちなみに著者の砂泊兼基氏はあまり知られてないけど、砂泊気海を名乗り「流道」という一派を興している。

剛道、柔道に対する流道ということらしい。これはこの本でも語られている事で、剛柔流すべての道をバランスよく使うのが合気道なのだという思想からきているのだろう。

砂泊兼基的には「流道」が不足していたということだと思われる。

おススメポイント

個人的にはおれが作った年表を観ながら読むと、わりと話のウラが取れるので面白かった。


マツリの合気道はワシが育てたって言いたくない?