現実を拡張せよ_泥棒かささぎ編
今日は朝5時半に家を出ていつも通り手稲山にロードバイクでヒルクライム。今日は走っていたらコースの途中で旧道から合流してきた方に声を掛けられた。歳上の方だと思うけれどヘルメットとサングラスをかけているのでよくわからない。
何気なく挨拶して追い抜いたら、追いついてきてしばらく並走状態になり、
「いつも見ますけど長く乗ってるんですか?」と声を掛けられた。
「10年以上乗ってますね」と応えると
「すごいですね」と彼。
しばらく一緒に走っていたのだけど、勾配が急になるゴルフ場脇の直線で一気に加速してあっという間に見えなくなった。私より全然早い。
今年はヒルクライムのタイムがかなり悪くて体調が悪いのか心配になるほど。今日はたまたま声をかけてくれた方としばらく走って引っ張ってもらったので今年のベストタイムがでたけれどそれでも自己ベストより4分以上遅い。仕事が忙しくて土曜日に自転車に乗れなかったり、コロナが明けて飲み会の回数が激増して(会社の偉い人たちが待ってましたと楽しい札幌に押しかけてきているのだ)、いつもより体重が3キロくらい重いから良い記録が出るはずもないのだけれど、言い訳ばかりしても仕方がないので、今日は手稲山から戻ってきて妻と近くのカフェで朝食をとってから、近所の小林峠とを超えて平岸プールに行って1500m泳いできた。札幌は水泳人口がとても少ないようで、日曜日の昼間でも、50mプールがコース独占で一人で泳げる。回数券を買えば500円以下でとてもお得だ。今日の運動時間は3時間40分、消費カロリーは1800Kcal。このくらいの運動を週2回継続できれば体重も減ってヒルクライムのタイムも短縮できると信じたい。
今日は手稲山のヒルクライムのゴール地点(標高500m)にカササギがいた。手稲山でカササギを見るのは初めてだ。苫小牧には結構たくさんいて、街路樹で繁殖していたりしていたけれど、もともと日本には住んでおらず、中国大陸からのコンテナ船に紛れ込んで日本に入ってきたというのが通説だ。
トップに写真を上げたけれど、道路をふらふら歩いていて、別に人間を怖がる様子もなく、逃げる様子もない。近くに来たハクセキレイを追いかけまわして遊んでいた。カササギは鳥類最大の脳を持つといわれ頭がよくていたずら好き。ロッシーニのオペラ「泥棒かささぎ」では、ヒロインが食器泥棒を疑われて死刑になりかけるが、実際はいたずら好きのカササギが犯人だとわかって処刑を免れるというハッピーエンドのお話。これは実話をもとにしていて、実話では冤罪が分かる前に処刑されてしまったという、恐ろしい話。
先週アップルが新製品を発表した。
アップルビジョンプロ。AR(Augmented Reality:拡張現実)のためのツールだ。
ARはAiとともにいろいろなところで話題になりつつあり、私も技術系の仕事をしているとARの活用についてもいろいろな分野から問い合わせや共同研究の話が出てきている。技術としては面白いけれど、まだまだ開発中で、もう少し技術として成熟しないと実践に持ち込むのは難しいというのが私の印象だ。生産その他の業務分野で本格的に活躍できるのはゲームや映画の分野で普及してからかもしれない。
拡張現実。自分の目に映る現実に電子的な情報を付加することで現実を拡張するという意味だと思うけれど、正直そんなもので現実は拡張できないと思っている。
自転車に乗っていたら目の前にカササギがいて、アップルビジョンをかけていたらそれがカササギだという情報をくれるかもしれないけれど、ただそれで終わり。その鳥が本来日本にいるはずのない鳥で、ロッシーニのオペラのテーマにもなっていて、いたずら好きの鳥だというのは、アップルが教えてくれるのではなく、自分で現実世界を拡張しない限りは認知することはできない。
拡張現実で現実を拡張する前に、自分でいろいろなことを経験し、認識し、理解しようとすることで自分が認識している世界自体を拡張しておかないと、ただ目に映るうつろな世界をアップルやらマイクロソフトのAiにガイドしてもらうだけ、ということになってしまう。博物館のガイド機能は便利かもしれないけれど、日常生活の全てをそんな風にガイドしてもらうわけにはいかないと私は思う。
情報が増えて、アシストしてくれるものが増えるほど、自分の目に映る世界の認知できる幅を拡張しておくことが大切になってくる。そうしないと、そのうちアップルが教えてくれないとカササギが目に映っていることさえ気が付かない人間になってしまうかもしれない。
あふれるほどの情報に満たされた世界。デジタルネイティブの若者たち。彼らの目に、本物のカササギが見えているのか、私はとても心配している。