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20230110 祭心理学が貢献できること

 祭心理学という大層なタイトルを掲げてNOTEを始めましたが,何の準備も蓄積もないまま手探りとしてCiNiiで心理学に限らず「祭」関連の文献を探して読んでみることを続けています。
 その方針は今後も継続する予定ですが,この調子で「何の方針も無くただ祭に関する文献検索をする」のを続けると,祭についての知識はどんどん広がり楽しくはあるのですが,その知識は拡散していくだけで「祭心理学」へ収束していくことがないのではと思い始めました。
 この問題には一朝一夕に目からうろこ的に答えが出ることはないと思うので焦らずじっくり考えるつもりですが,本日祭関係の論文を読んでいて「心理学的な視点を足せるのでは?」,「従来の他の分野でなされてきた祭研究を心理学の概念で解釈しなおしてみるとかできるとよいのだろうなあ。」と思いついたのがありましたのでそれについて書いてみたいと思います。
 
 本日拝見したのは「小笠原盆踊り」の成立と発展という論文で,以前より「新興住宅地での祭の成立」,「最近新しく祭の創始や復活がなされたところ」への関心にあったので読んでみました。論文へのリンクと要約を以下に挙げます。
 
小西潤子 2020「小笠原盆踊り」の成立と発展. 小笠原研究年報, 43, 51 – 70.

 

本稿では、父島の「小笠原盆踊り」が1968年小笠原諸島返還後、いかに形成されいかな る意味を帯びてきたのかを小笠原青年協議会の活動に注目し、1.萌芽期、2.返還踊り期、 3.≪小笠原音頭≫の転換期、4.観光資源化とブランド化の4つのフェーズから論じた。そ して、返還記念祭が村民参加型エンターテインメントとしての性格を強めていったこと、 返還 10 周年以降の記念行事開催時期の限定に伴って踊りの転換が生じたこと、国の施策によって小笠原盆踊りが観光資源化、ブランド化し踊り歌に変化が起こったことなどを明らかにした。さらに、小笠原盆踊りを巡って人々の間に「死者の歓待と鎮送」という原点回帰が起こっていることを論じた。

 私が特に面白いなと思ったのが,「2.返還踊り期」の「返還10周年記念行事と記念浴衣の制作(1978)」のところでした。「お揃いの浴衣を着て返還踊りを踊ることで、父島の人々の返還10 周年への思いが高まったことであろう。」と考察されていますが,このあたりについて心理学の集団アイデンティティの形成過程などとしてみたりすると「10年後に浴衣をそろえようとした行動」の考察を深めることができるのかもなどと思ったりしました。
 
 ここからは妄想ですが,「1.萌芽期」では「返還の記念として外から異物として持ってきた日本的アイデンティティとしての盆踊りが,「2.返還踊り期」では内集団のつながりを深めるためのものとなっており,「3.≪小笠原音頭≫の転換期」では外集団との区別や内集団の独自性の獲得のためのよりどころになっていっているなどのプロセスが考えられ得るように思えました。
 記憶では以前もこの集団アイデンティティについて全然知らないので勉強しないとと思った気がしますが,今回この論文を読んで本当に勉強しないといけないと痛感したので良い本を探してみたいと思います。
 
 最後に,研究と関係なく面白いと思ったのが祭の中で金魚すくいではなく「グッピー掬い」が行われていたようで,色鮮やかなグッピーが夜店の明りに照らされてゆうらり泳いでいるさまをみてみたいなあと思いました。

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