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YouTubeで狐娘に出会って人生変わった話 ~refine~

この記事は、一昨年8月にふしめろ氏とはれのそら氏が主催して作られたnoteマガジン『私の人生変わった話』の中に寄稿させていただいた記事を、改めて書き直してみて、皆に見てもらうために「無料公開」させて頂いたものでございます。

こちらのマガジン、寄稿者の皆様の記事、どれも素晴らしいので、ぜひまだ読んだことのない方は購入していただき、読んでいただけたら嬉しいです。

有料記事を書き直しという『無料化』に許可していただいた主催者二人に最大の感謝を。




私は、昔からYouTubeが嫌いだった。
何故あんなサイトがこの世の中に蔓延っているのか、理解に苦しむほど、大嫌いだった。
当時の私の唯一の居場所は、ワイワイとコメントが流れる『ニコニコ動画』だけであった。

これはもう2年以上も前に、生きることへの楽しみを失いつつあった私のくだらない人生観を変える、出会いの話である。


2017年、人生の底のワタシ。

私は2017年の年明けから、とある施設で保護(収容?)をされ、ネットや世間からは断絶された状態で生活を送っていた。
『療養』という名目の元、ただただ無為な時間を過ごしていた。

そんな生活から解き放たれたのがその年の6月。
それまでの「世間とのズレ」をひしひしと感じつつも、私はネット世界に戻って、またニコニコとできればいいやと思っていた。
しかしそんな私に待ち受けていたのは、半年程度放置していただけでニコニコアカウント強制削除という、深い絶望だった。

どれだけのマイリストが消えたか。どれだけのお気に入り登録が消えたか。
私の居場所だったモノは、居場所自身から拒絶される形で、目の前から消え去ってしまった。

しかし、ちょうどその時期に、私の好きだった配信者たちが一斉にニコニコから別の配信サイトへと移っていく動きがあった。


歪んだ眼鏡をかけた視聴者


繰り返すが、当時の私はYouTubeが大嫌いだった。
今でこそ普通に受け入れているが、当時は「普通の人」「ホームビデオ」のごった煮、国籍なども関係ない。
おすすめ動画を見ても、果たしてどの動画がしっかりとした面白い動画なのか、さっぱり分からない。
アニメ本編の違法投稿やニュース番組のミラー放送がトップページに並び、それらを咎めるような動きも一切見られない。
動画に付くコメントも大して面白いわけでもなく、ニコニコのコメント付き動画の無断転載が再生数を稼いでいた(これらは現在も変わらないが)。

その上で、YouTuberという存在が私の不透明な憎悪を更に加速させていた。

『~してみた』系動画を「つまらない」と一笑に付しそれまで一切見ていなかった私であるが、YouTuberの動画というのは大抵それらと何ら変わりないという思いを持って、サムネイルが目に入るだけで胸いっぱいに得体のしれない嫌悪を感じていた。

「なんでこいつらは、私よりも幸せそうなのだろうか。」
「素人が顔出しで遊んでいるだけの動画を、なんで皆見ているのか?」

今思うと、私が追っていた配信者さんも当時からYouTuberとの違いは然程なかったのだが、当時の私は『YouTuberはツマラナイもの』という歪んだ眼鏡をかけてモノを見ていたのである。


私の歪んだ視界をぶち壊したもの


さて、好きな配信者を追って嫌々YouTubeに移った私を待っていたのは、先述した通り半ばYouTuberと化したそれらの姿だった。
その姿を見た私のショックの大きさは、今も文字に起こすことができない。
その時はとにかく配信や動画を見るのがつらく、私の偏屈な考え方と、「好きだった人を変えてしまうYouTubeというサイト」をひたすら逆恨みした。


話が少し脱線してしまうが、当時の私は医者から就労禁止を言い渡され、自分の家で引きこもりの状態であった。
(この記事を書き直している現在も、あまり変わりがないのが悲しい話)

療養を終え、念願の自由を手に入れても、結局自分は何もできない・しないままであった。

バイトすら探せない。探しても就労はダメだと言われる。こっそり応募しても良い結果は返ってこない。
何もできない、知人すら一人もいない、孤独な場所で、ひっそり生きるだけの日々を過ごしていた。

そんな、ひねくれ燻っていた私をネット上で待ち受けていたのは『バーチャルのじゃロリ狐娘YouTuberおじさん』こと、ねこますさんだった。


世知辛いこの世界に投石を


初めての出会いはTwitterで得た情報からだった。
「おじさんが3Dのかわいいキャラクターで、YouTubeで世知辛い話をしている」

その文言だけで何故か私は「見なければならない」という思いに駆られた。
今思うと、これは当時抱いた劣等感の解消、懶みに出来るのではと考えていたと思う。

すぐにYouTubeを開き、動画を見た私を待っていたのは、本当に文字通りの光景だった。

狐娘が男性の声でただ自分の境遇を世知辛いと嘆いていた。

まず面食らったのが、声が思っていたよりも若いじゃないかという、どうでもいいところだった。(この記事を書いてから数年経つが、今ではより可愛さに磨きがかかっている。)
おじさんというよりは、まだ働き盛りの若者の感じがした。

そして、更に私が驚いたのが、いつもだったらどうでもいいと思うような内容の動画に、無意識に惹きつけられている自分が存在していることだった。

YouTube上には自分の境遇を嘆く愚痴動画なんてゴマンとあるはず。
それでも私は、ねこますさんの動画に謎の親近感を持ってしまったのだった。
その現象?出会い?を未だに(現在も)上手く言葉にすることができないのだが、

私はYouTubeで狐娘に出会って、その時燻っていた心の火を、一瞬で炎のように燃え上がらせてしまったのだ。


ハートに火をつけて

そこからは、YouTubeでねこますさんの動画を漁り、更にねこますさんの影響で世に出始めてきていたバーチャルYouTuberの動画を必死になって漁った。
どれもこれも、私の心の火に燃料を注いでいくような出会いばかりだった。
底なし沼のように、ずぶずぶと私はバーチャルYouTuberにのめりこんでいった。
この世界こそ、まつりぴにとっての「リアル」なのではないかとさえ考え始めていた。

そんなある日、私は家を出て、ハローワークに行った。
働けないのは分かり切っていたが、何かできることはないか、確かめたかった。
すると、そういった人のための支援施設があることを知った。
医者にも就労禁止を解いてもらえないか相談をした。
話したら案外すんなりと解いてもらえた。(時間制限はあるが)
私の世界も、まつりぴの世界も、どんどんといい方向に進めたいと願った。

のめりこんでいった沼は、私たちにとってどんな療養よりも効果のある、薬湯のようなものだったのだ。


変化していく世界

私は「自ら表現すること」は好きだったが、決して得意ではなかった。
だからこそ、努力や技術でその壁を乗り越えていく人々(=当時のバーチャルYouTuber)を見るのが好きになっていた。

ふと気付いた時には、あんなに大嫌いだったYouTubeを毎日時間があると必ず開いていた。
両手に抱えられなくなるくらい沢山のバーチャルYouTuberと出会い交流をした。
楽しい思いも、辛い思いも山のようにした。

そして、振り返るといつの間にか私自身も『表現する側』になっていた。


狐娘からの大きな一歩

現在、私は前向きに人生を歩んでいる……と思う。
ブランクや障害はあるけれども、少なくとも後ろ向きに進んではいない。
好きなものや好きな人たちに囲まれて、今までで一番充実した時を過ごしている。

あんなに嫌っていたYouTuberも、今では色々と見るようになっている。
様々な人たちと意見を交わし、交流を持つようになったおかげで、人と話すことへの苦手意識も減っていった。
リアル友達も0から多少増えた。
好きなものに対して臆面なく好きだと言えるようになった。


リアル世界で落ち込むことや泣きたくなることもあるが、その時はYouTubeでおじさん声をした狐娘の動画を、何度も何度も見に行くのだ。

私は、YouTubeで狐娘に出会って、人生を前向きに変えてもらったのである。



後書

さて、一番上にも書いたとおり、この記事は2年ほど前に企画として発表された文章であります。
多少表現の変更などはしましたが、ほとんど原文ママだと思います。
そのため、当時の私の考え方や当時のバーチャルYouTuberの在り方で書かれており、かっこがきで付け加えた部分もありますが、色々と現在の状態とは違う点がございますがご容赦ください。

なぜ、私がこの記事を『無料化』したいと考えたか。
それは、この記事が2020年4月現在までの私にとって、一番真摯に書き上げたnote記事であるからです。
一番読んでもらいたい記事が有料のまま埋もれてしまうのは、何だか勿体ない気がしたのです。

誤解なきように言い訳をさせていただくと、今まで真摯に書き上げなかった記事などほとんど無いのですが、「一番」となると、やはりこの記事だろうと思った次第です。

今現在、VTuberの在り方というのは、この記事を最初に書き上げた時から一変してしまいました。
記事に取り上げさせて頂いた「ねこます」氏も、なんやかんやで一周まわって当時の雰囲気を漂わせていますが、色々とありました(よね)

当時の私がねこますさんの動画を見て気持ちを改めたように、今の私は当時の記事を読み直して、なんとなくですが気持ちが改まった感じがします。
純粋だったんだなぁ、私。

まぁ色々余計なことを書いてきましたが、最後に一つだけ。

今でもバーチャルYouTuberが、大好きです。


ここまで拙文に付き合っていただいた皆様、そしてマガジン企画者のふしめろ・はれのそら両氏に、最大級の感謝を。



私自身に何かしらの魅力を感じて頂けたなら、よろしくおねがいします!!