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29歳から観葉植物のアルバイトを始めた話。

観葉植物のアルバイトを始めてから約4ヶ月。
水やりの仕方から教わり、日々の業務内容や基本的な接客。少しずつお客様にヒアリングしてオススメの植物を提案できるようにもなってきた。

未経験にして植物の仕事をやってみたい!
と思ったのは、コンクールの披露演奏会で友人から頂いた花束がきっかけだった。

人からお花を貰う経験が今までなく、初めて自分の部屋にお花を生けてみて、驚くほど癒されたのだ。
毎日くたくたに疲れても、
ちょっと嫌なことがあった日も、
帰宅して自分の部屋に入ると、いつも花が癒してくれた。
さらに、初めて貰った花たちをそう簡単には捨てたくないと思い、YouTubeでドライフラワーの作り方を調べて、麻紐で部屋の空間に吊るして飾ることも楽しんだ。(今はYouTubeでなんでも勉強できていい時代…。ありがたい。)

それから、今まで利用したことがなかったお花屋さんにも通うようになり、休日には3,4件ほどお花屋さん巡りをした日も。

最初は気になったお花を買って飾ることで自己満足していたけれど、だんだん花束も作って誰かにも喜んでもらいたいと思うようになった。

ミニブーケに挑戦


ただ、なにもわからない。
お花屋さんの前に立ち尽くして、どのように組み合わせたらいいのかなにも分からなくて、、店員さんに聞くしかなかった。

花束に関する本を買い漁ったけれど、そのお花が必ず花屋さんに置いてあるわけではないし、YouTubeで作り方の動画を見様見真似でやってみたけれど、ヘナチョコ花束しか作れなかった。

花のことをもっと知りたい。

どうしようか。
ワークショップもいいけど毎回の出費が痛い。
独学でコツコツ、YouTubeで見様見真似で実践を繰り返そうか。でも、動画を見ていてもわからないことがあって苦戦する。直接教えてもらいたい。

よし、働こう!

そんな流れで決めた。正直不安だった。
未経験でもう若くもない自分がお花屋さんにアルバイトで応募。雇ってくれるところはあるのだろうか。

"未経験でもOK"

その言葉を信じて第一希望のお花屋さんに応募するも、書類選考で落ちてしまった。笑

次はカフェ勤務の日数を減らしてもらうように交渉して、再度希望条件を変えて応募することに。

とにかく早くお花屋さんで働いてみたかった。

しかし、未経験からの募集は数少なく、あっても場所が遠かったり、時給が低すぎたり、、(音楽とカフェだけの収入源が少ないので外せなかった…)希望に合わないものばかり。

その中で見つけたのが、観葉植物のお仕事。

お花屋さんじゃないけれど、
植物も似たようなものかしら…?

と、ほんの興味本位で募集要項を確認してみる。
未経験でもOK。さらに、目に止まったのは学部専攻不問という言葉。今まで植物に関わっていなくても、無知でも、過去ではなくこれからをちゃんと見てくれる会社なのかもしれない。

決して「花屋ではないけれど観葉植物でもいいや。」という適当な気持ちなんかではなく、社風に惹かれて、この会社で働いてみたい。という強い気持ちで応募した。

面接は大緊張。
でも、担当してくれた方はそんな緊張もすぐ解してくれるような、話し方もおおらかで笑顔が素敵な方だった。

面接ではいつも自分のどうしても外せない要望は必ず伝えるようにしている。

毎日楽器の練習をしたいので19時以降は働けないこと、毎週土曜日は終日予定があるので出勤できないこと、演奏会本番前はお休みを多くいただくこと、、、未経験ながらにして、なかなか贅沢なわがままだ。でも、音楽の方も真剣にやりたい自分にとっては必ず伝えなければいけなかった。

面接の最後には、
「ほかにも応募者がいるので全ての面接が終わってから連絡します」
と、伝えられて終わった。


帰り道は、
『ああ、、落ちたかもしれない…。
また、ほかのところ探さなきゃ…。』
と、思いながらも
実際に植物を仕事にして働かれている方とお話できたことが嬉しくて足取りは明るかった。

自分よりいい人、現れなければいいなぁ…。
とか思っちゃったり。笑


そして、
なんともありがたいことに、
数日後採用の連絡が入った。

未経験でわがまま盛りだくさんな自分でも採用してくれた…。これは、がんばらなきゃ!!

採用されてから、
働き始めるまでに期間があったので、観葉植物の本を買い漁って勉強を始めた。

ただ勉強するだけじゃつまらないので、
せっかく得た知識を自分と同じ植物初心者の人たちにわかりやすく伝えようと、インスタグラムで発信するようにもした。(更新頻度はマイペースだけど。)

今まで花を生けることだけを楽しんでいたので、観葉植物も何か育ててみようと購入した。

最初に購入したのは、ペペロミアホープ。

ペペロミアホープ

プニプニした葉が可愛い多肉植物だ。
勤務先のカフェの窓際席に置いてあった植物で、テーブルを拭きに行くたびに密かに可愛いと気になっていたのだ。(ちょっと触ってみたりもしていた。)店には月に数回業者の方が植物をメンテナンスしにくる。その時に、名前を教えてもらった。たまたま植物を買いに帰り道の雑貨屋さんに寄ったら売られていたので、運命を感じた。

最初はこの子だ!
と、即決した。

育て方を調べると、
ペペロミアホープは葉っぱの中に水をたくさん蓄えているので、プニプニしているらしく、その分やや乾燥気味で大丈夫らしい。水をあげるときは、土が乾いてから鉢底から水が出るまでたっぷりとあげる。日当たりが悪いと、ヒョロヒョロと茎だけが伸びてしまうらしい。寒い時期は水やりは控えめに、日中の温かい時間帯にあげる。

なんだか、おもしろい。

わたしは、ペペロミアホープを日当たりのいい場所に置き、水やりは土の状態を確認してからあげるようにした。

しばらく曇りの日が続くと、たしかに茎だけが長くなってしまった。

あれ、、この場合はどうしたらいいんだろう?
またGoogleやYouTubeで調べる。
"徒長"と言って、茎の根本から切って"挿木"にするとそのまま育てて増やすことができるらしい。

増やせるんだ…。すごい!
植物1つ購入しただけで沢山の知らないが知れた。何もかもが新鮮だった。

わたしはまた新たに植物を購入した。
まだ高めなものに手を出すのは勇気が出なかったので、小さなパキラとシェフレラを迎え入れた。

ペペロミアホープとパキラとシェフレラ

パキラは大きな手のひらのような葉。
シェフレラはやや垂れ下がり気味な葉。
どちらも可愛い。

直射日光に当てると黄色くなって枯れてしまうので、ブラインドで調整をする。水やりは乾いてからたっぷりが基本。風通しもよくしてあげて…。

今まで観葉植物は、部屋に置いて観賞をすることを楽しむものだと思っていた。しかし、実際に育ててみると、毎朝、帰宅時、植物たちを実際に触れて管理する時間も癒しとなっていた。

お花は飾ると部屋に彩を与えてくれる。ただ、いずれ枯れてしまう。けれど、観葉植物だったら成長を感じながら、育てていく時間も楽しめるのだと感心した。

そんな植物の世界に足を踏み入れ始めたものの、実際に勤務して1ヶ月ほどは役立たずだった。植物の説明もうまくできないし、作業も遅いし、ミスもする。(ミスは未だにたくさんする)

それでも、一緒に働くスタッフの方々が寛容で、優しく接してくれた。だから余計に、役に立てるように頑張りたいと思えた。
しかし、専門知識が身につくまでは時間がかかり、なかなかすぐ追いつかない。植物の本以外に接客に関する本も買い足して、退勤後に夜22:00までカフェで勉強する日もあった。植物の接客は、カフェでの接客とまた違っていてより専門性が求められる。
カフェ接客は、ひとりのお客様と関わる時間は、ドリンクやフードを伺い、精算するという流れで一瞬だ。お店が落ち着いていれば世間話や雑談もする。専門知識が必要になるのは、ほとんどコーヒー豆の味の説明(豆の生産国での味の違い、ウォッシュド式やナチュラル式などの生産過程による味の違い等)だ。それも、全てメニューに載っているものなので、範囲が定められている。それに、なかなかのコーヒー好きでないとあまり詳しく聞かれることもなかった。
今の植物の接客は、化粧品販売員や携帯販売員のようなイメージに近い。ひとりのお客様と関わる時間が長い分、接客技術も特に重要になる。

本には以下のようなことが書かれていた。

「幸福感を与える」接客は、いつまでも価値が薄れない。

商品説明やお会計業務はネットで個人ができてしまう時代。この先接客で重要となるのは幸福感を与えることだそう。これを果たすことで接客をする意味があると書かれていた。
今植物販売員の仕事をしてる自分の存在も、この先価値があると言ってもらえてるようで嬉しくなった。幸福感を与える接客…。その時はまだ文面上でしかわかっていなかった。

そんなある日、お客様から「お姉さんからこの植物を買えてよかった」と言われた。
鳥肌が立った。まだまだ勉強不足であるからこそ、接客だけは丁寧に行おうと決めていたので、それが伝わったような気がして、嬉しくて鳥肌が立ったのだ。眼頭も熱くなってきて、「わたしもうれしいです。ありがとうございます。」と、目をうるうるしながら伝えた。(涙腺は人一倍弱い人)

実際、接客技術とかそういう細かいことは何も考えていなかった。お客様の話に共感をして、提案するために必要なことを質問して、ただ目の前のお客様に喜んでもらいたくて、自分にできることをやっただけだった。
幸福感を与える接客は、お客様だけではなく自分も幸福な気持ちにさせられるのだと知った。それは、人と人との直接的なやりとりからしか生まれない。接客で鳥肌が立つことも、眼頭が熱くなることも、温かい気持ちになることも、思わず顔がほころぶことも、"人"との関わりの上で起こることなのだと、実体験を得て学んだ。"幸福感を与える接客"はこれから先もずっと強く意識し続けていこうと決めた。

観葉植物のアルバイトを始めてから4ヶ月ほど経過した今、家にある植物はいつの間にか17種類にもなり、本もたくさん。完全に植物の沼にハマり始めた。

エバーフレッシュ 


覚える知識も無限のように幅広くあり、それがまた楽しい。お客様も優しく温かい人が多いような気もする。植物を好きになる人は自然とそうなるのだろうか。


こんなに、楽しい世界があったなんて。
人生29年目にして初めて知った。
知れてよかった。

友人から花束を貰わなければ…。
コンクールで賞を取らなければ…。
コンクールに挑戦していなければ…。
音楽を始めていなければ…。
保育士を辞めていなければ…。

この植物業界に関わることはなかったかもしれない。本当に知れてよかった。働けてよかった。

もっともっと知りたい。
ずっとずっと楽しみたい。
そして、広めたい。共有したい。

いつか花束も作れるようになれたらいいな。
何十年後も、植物と関わって生きていたい。

初心を忘れないように。
時々この記事を見返そう。
そして、また綴ろう。


そんな気持ちを大事にして、これからも。

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