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2019年にCookpadTVが一番失敗したこと

2019年の年初に、1年を振り返って「失敗したことベスト3」を社内ブログで発信した際に反響が大きかったので、今年は社外の方にもご覧いただけるようにnoteにまとめたいと思います。ベスト3をまとめるのが割と大変だったので、1位だけにします。

失敗の責任は誰にあるのか

失敗の発信をすると、そのプロジェクトや事業に関わったメンバーが少し落ち込んでしまうことがありますが、失敗の責任は全て経営者にあるので全く気にする必要はないです。失敗から学べることは非常に多いですし、失敗は次のチャレンジのスピードを加速してくれるものでもあります。CookpadTVでは失敗を奨励しています。

2019年の前に2018年の大失敗を紹介

2018年に一番失敗したことは、ユーザー投稿型スタジオ「cookpad studio」です。誰でも無料で料理動画を撮影できる場所を作ろうと思い、2017年12月にユーザー投稿型スタジオ「cookpad studio」を開設しました。SNSで料理動画を発信してみたいというニーズを持った個人のユーザーに向けたサービスでしたが、実際に利用される方のほとんどは、食品メーカーの宣伝担当の方や、ご自身で料理教室を開催されている方など、料理にビジネスで関わりを持つ法人ユーザーでした。利用者の満足度は高く維持されていましたが、法人ユーザーを中心としたモデルでは利用者数を大きく伸ばすことが難しいため、スタジオモデルの拡大は諦めることにしました。

この失敗から学んだことは、ユーザーにとってより便利な方法をシンプルに設計しないと粘着質に使ってもらえるサービスは生まれないということです。「自宅で料理動画を撮影できる」と「スタジオに来れば料理動画を撮影できる」という価値を比べた時に、明らかに前者の方がユーザーにとっては便利です。スタジオモデルにしたのは、自宅のキッチン環境がユーザーごとに大きく異なるため、どんなキッチンでも撮影できるサービスの開発が難しかったからです。開発の難しさはユーザーには関係なくて、誰もが便利だと思える方法を選択すべきであることを思い知りました。

この失敗経験を活かすべく、2018年後半から開発難易度の高い、自宅で動画撮影ができるキットの開発をスタートしています。

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2019年に一番失敗したこと

2019年は料理動画サイネージやクッキングLiveアプリが大きく伸びた一年でしたが、2018年以上にたくさん失敗をした一年でもありました。その中で一番失敗したことは「Liveコマース」です。

Liveコマースは、クッキングLiveアプリ上で展開する新しいビジネスとして2019年春から準備を始め、夏にトライアルを実施しました。クッキングLiveアプリで配信するレシピは、出演していただくキャストの好みを考慮しながら、特別な材料を使わずに、ユーザーが作りたいと思った時に気軽に作れるレシピであることを心がけて開発しています。そのため、常用されていない調味料を使うメニュー(例えばパエリア)を紹介するときには、手に入りやすい調味料や食材(サフランの代わりにグレープフルーツジュース)によってアレンジすることが多いです。もちろん美味しいアレンジレシピに仕上げていますが、本格的な材料を使えばもっと美味しい料理になるのにな、と感じることもあります。

ユーザーが利用頻度の低い調味料を買わない理由の多くは、使い切れないからもったいない、価格が高いというものです。であれば、「レシピに使用する分だけ小分け包装して、調味料キットにして販売したらいいんじゃないか」という発想で、Live配信で紹介するレシピの調味料キットを販売するLiveコマースにチャレンジすることにしました。

クッキングLiveアプリを閲覧するユーザーは出演するキャストのファンの方々が多いため、キャストがオススメする調味料という設計で商品を作ることにしました。また、Liveコマースが一般的なECに勝てるポイントは、瞬間的な熱量にあると感じていたので、欲しいと思った時にすぐに買える価格帯にすることも意識しました。一方でアプリに買い物機能を付加すると開発規模が大きくなってしまうため、トライアルフェーズでは「配信中にすぐ買える」という価値の検証は諦めて、配信後に販売サイトへ遷移してもらう動線を設計しました。

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リアルビジネスの難しさ

既製の調味料を小分け包装して、複数の調味料を組み合わせたキットにして販売する単純な作業ではありましたが、ユーザー課金モデルや広告モデルのインターネットサービスしか作ったことがない私たちにとって、初めてチャレンジする食品販売のビジネスは苦難の連続でした。

食品販売を生業にされている方々からすると当たり前のことだと思いますが、仕入れ数量によって大きく変わる原材料や包材の単価、送料を安く抑えるための1グラム単位の重さ調整、製造工程でのロスや売れ残りによるロスなど、利益を圧迫する要素が本当にたくさんあります。ユーザーから支払われる利用料や企業から支払われる広告収入が運営コストを上回ると、決済手数料以外はすべて利益というシンプルな構造でビジネスを組み立てる癖がついているので、材料費や梱包費などの変動費率が高くて、1円単位でコストをコントロールしなければならない事業モデルは私達には向いていないと思い知ることになりました。

瞬間的にモノを売る難しさ

Live配信の難しさは集客に尽きると思います。YouTubeやNetflixなど一般的な動画サービスは自分が見たい時に見たい量だけ見ることができますが、Live配信ではそうはいきません。アーカイブも用意はしていますが、Live配信時のコミュニケーションに価値があるため、アーカイブはあまり見られません。Live配信を楽しむためには、特定の曜日の特定の時間にwifiが使える環境でスタンバイしていなければならないので、Live配信はリアルのイベントに近いものだと思っています。絶対に見たいと思わせる価値が必要です。

Live配信は一般的な動画コンテンツよりも閲覧ユーザーを集めることが難しいため、Liveコマースをビジネスとして成立させるためには、閲覧者のほとんどが商品を購入したいと思う状態を作らなければなりません。調味料キットにファンの人が喜びそうな特典をつけて特別な商品にし、売価を2人前500〜600円に抑えて販売しましたが、閲覧者数に対する購入者数の割合は10%程度にとどまり、利益率の低い食品では運営コストを賄うモデルにすることは難しいと判断しました。スマホを通じたLive視聴では、リアルのイベントの熱狂度には到底敵わないので、みんなも買っているから買う、売り切れそうだから買うという心理が働きづらいのかもしれません。

新規事業の成功確率を上げる方法

決死の覚悟で新規事業にチャレンジしようとしている方をたまに見かけますが、やめたほうがいいと思います。新規事業はもっと気楽に始めるべきだと思います。大きく発想して、小さく早く試すことを心がけていれば、新規事業にチャレンジして再起不能になるようなことはほぼないと思います。

また、撤退の意思決定も重要です。新規事業は仮説の検証だと思いますので、検証の仕方にこだわりすぎず、上手くいかないときは仮説が間違っていたことを認めて、撤退し、新しい仮説を立てて違うことにチャレンジした方が成功確率が上がると思います。

私は、失敗や撤退を繰り返してもバカみたいに成功を信じてチャレンジしつづけるのが好きです。2020年もたくさんの失敗をすると思いますが、常にホームランを狙ってチャレンジしていきたいと思います。

この記事が、皆さんのチャレンジに少しでも役に立ちますように!

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