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働き方に貴賎なし

友人が、ある不動産会社で営業の仕事をしている。中途採用での正社員を希望していた彼は、入社を目指していた会社の人件費抑制の方針からその会社との業務委託契約を結ぶことになったという。今は週5で営業をこなしながら、正社員を目指している。

いま世の中には、この友人のように、正社員を目指していても業務委託での働き方を選択せざるを得ないような人がいる。ウーバーイーツのような手軽な働き方もその流れを後押ししている。

前回の副業とベーシックインカムで触れたように、この国は会社一筋の正社員での働き方を前提として社会が組み立てられているがゆえに、そうでない人の働き方が不利になるケースが多い。

この友人の働き方はその典型だ。正社員を雇用すると会社には保険や年金など様々な負担が生じる。業務委託契約を結んで働き手を確保するという手法は、それを逃れるための手法となっている。

同じような光景はかつてもあった。派遣労働だ。

自由な働き方を選択できるという名目で対象が広げられてきた労働者派遣制度は、実質的には会社のコスト削減の手段となった。「非正規社員」という言葉を生み、序列や階層のような見えない壁ができ、その働き方を選ぶ人たちの行く手を阻んでいる。

業務委託による働き方もまた、同じような壁を作ってしまうかもしれない。より自由な働き方が可能だという人がいるが、そこが問題なのではない。

自由な働き方をする人がみなうまくいくわけではない。失敗も付き物だ。自由の格差が広がってしまわないような仕組みがどうしても必要なのだ。僕らが問題にすべきは、そこだ。

今、自ら望んで起業も念頭においた業務委託を選択する人も増えている。会社と新しい働き方の共存を目指す動きもある。電通が業務委託を主軸に置いた会社をつくったのも記憶に新しい。

https://www.dentsu.co.jp/news/release/2020/1111-010273.html

こうした野心的な試みが、単なる人件費抑制としか見られない社会であってほしくない。

働き方に貴賎があってはならないのだ。すべての働き方に共通する自由の礎を組み立てないといけないし、そのために残された時間は多くない。

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