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30 1年の早さについて

年の瀬ともなると「1年って早いねえ」と言う声が聞こえて来る。子供の頃はもっと長かった気がしたのだけれど・・と、そんな実感を持っている方も多いのではないだろうか。一説には1年の早さの実感は、現在の自分の年齢を分母として感じるからだと言う。つまり、3歳の子供にとっての1年は人生の3分の1であり、30歳の人にとっては30分の1である。だから、子供の時より年齢を重ねるほど1年が短く感じられる、と。
しかし、生物学者の福岡伸一氏はそうは言わない。
「もし記憶を喪失して、ある朝、目覚めたとしよう。あなたは自分の年齢を『実感』できるだろうか。自分が何歳なのかは、年号とか日付とか手帳といった外部の記憶をもとに初めて認識できることであって、時間に対する内発的な感覚は極めてあやふやなものでしかない。したがって、これが分母となって時間感覚が発生しているとは考え難い」
その上で私たちが1年の早さを測る基準は体内時計にあると言う。細胞分裂のタイミング、つまりタンパク質の新陳代謝の速度が体内時計の秒針であると。そして私たちの代謝速度は加齢とともに確実に遅くなる。それは体内時計の回転が徐々にゆっくりになって行くことを意味する。その結果、体内時計による1年の感覚は徐々に長くなっていく。にもかかわらず実際の物理的な時間は昔も今も変わらない。だから、自分の体内時計ではまだ半年くらいしか経っていないのに実際の1年が過ぎ去っているという実感となる。
 
この1年、駄文にお付き合い頂きましてありがとうございました。読みやすくとは思いつつ、それが難しいのだと実感する1年でした。新年度はもっともっと精進し、ややこしいことを平明に語る事の出来る大人になりたいと思っております。

*今週の参考図書
・『動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか』福岡 伸一  2009年/木楽舎

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