#怪談好き

YouTubeでは怪談系のチャンネルが人気のようだ。かくいう私も怪談好きで、昼食後の休憩時には耳元のスマホで怪談を流しながら15分ほど仮眠をしたりする。おすすめのチャンネルは、定番どころでは『島田秀平のお怪談巡り』、私がよく聞くのは新興どころでいま一番勢いのある『好井まさおの怪談を浴びる会』だ。多くの人から怪談を聞いている好井は怪談の分析眼も鋭い。

人が怪談を聞きたがる心理とは、ある種のカタルシスを求めての事なのではないかと、自分自身の感覚から推測している。わざわざ劇場に悲劇を観に行く心理と同じなのではないだろうか。それによって、ある種の克服感、達成感を得ることが出来る。

世には怪談師という人もいて、この人たちは、みずから怪談を創作してしまう。しかし多くの怪談を聞いていると、実話かそうでないかを判断出来るようになって来る。創作ものは人が怖がる一連のパターンから抜け出す事はない。白い服の長い髪の女性が出て来た場合、創作の疑いが発生する。友人たちと夜中の廃墟に行ったり、使われなくなったトンネルに行ったりするパターンも同様だ。

そんな風に分析が出来て来ると、今度は自分で意外性のある怪談が作れるのではないかと考え始める。白い服の長い髪の女性など登場しない。マクドナルドで明るく接客してくれるボーイッシュで元気な女の子が登場して、いい娘だなと思ってネームプレートを見る。いつまでたっても注文したものが出て来ないので「○○さんに頼んだんですけど」と訊ねると「そんな人はいません」と言われたり。「昔いましたがバイトに来る途中で・・」とか。ここまではまだありがちだ。

高校時代、よく出来てるなと感心した怪談がある。筒井康隆の『給水塔の幽霊』という短編だ。ある男性が会社で、どこどこの給水塔には幽霊が出るらしいとの噂を聞く。帰宅前に男性は、幽霊が出るのを見てやろうと件の給水塔へ行き、待ち構えるが一向に幽霊は現れない。あきらめて帰宅した男性は妻に「噂の給水塔に行ったけど幽霊なんか出なかったよ」と言うと妻が、「その給水塔なら3ヶ月前に取り壊されたわよ」と言う。・・高校時代、喜び勇んで友人にこの話をしたが、「意味わかんない」と言われてガッカリしたことがある。「だから、『給水塔の幽霊』だったわけよ」と説明しても「え?何が怖いの」との反応で、私の感動は伝わらなかった。

実話の場合、本当に背筋がぞくぞくする。そのような怪談話は信じないという人もいるのだろうが、私自身が数々の経験を経て来ているので、実際にそのような事はあるのだと言い切る事が出来る。自分以外の何かが体に入った場合、喉の奥が詰まった様な感覚になるようだ。

以前、静内の親戚を訪ねたついでに、母と共に面白半分に、作家の佐藤愛子氏のポルターガイストで有名な浦河の山荘へ行った。その際、私の母に何かが入った。「何か入った・・・とにかくここを出て」と母が言う。町中へ降りたところでクルマを止めた。外へ出た母が背中を叩いてくれと言う。軽く叩くと「もっと強く!」と言う。強めに叩くと「出た」と母が言った。私には何が入って何が出たのかもわからないが、迂闊にそのような場所へ行ってはいけないと言うことだけはわかった。

好井まさおのチャンネルでは、この「喉の奥が詰まった感じ」の話もあって、真実味があった。怪談は、怖いけど面白い。ようこそ怪談愛好家の世界へ。

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