見出し画像

#41 メガネ

「松尾くん、大人の階段上ったね」と知り合いの眼鏡店の店長から言われたのは3年前のことだ。2年間使ったそれまでのメガネが合わなくなったような気がして、新しく作り直そうと店を訪ねた。「今のメガネはそのままにして近くを見る用途のを別に1本作った方が良いね」と店長は言った。つまりは老眼なのだった。手元と、2〜3mまでが見えづらい。「だったら中近両用がいいね」というのが店長の見立てだ。中近両用から遠近両用へと進むのが正しい大人の階段の上り方らしい。
そんなわけで中近両用メガネを作り、仕事と読書の際の目の疲れがグッと減った。しかし、それから3年が過ぎてその中近両用メガネも合わなくなってしまった。
 
最近は読書も電子書籍でパソコンやスマホで文字の大きさを変えて読むことが出来る。私のKindleのライブラリにも93冊の書籍が入っている。しかし昨今読む事の多くなった民俗学の古書などは紙媒体しか販売されておらず、どんなに紙面を指で広げても文字は大きくなってくれない。そこで合わなくなった中近両用メガネを掛けてみる。合わないとはいえ、メガネを微妙にズラすと僅かにピントの合う一点がある。その一点を保持しながら本を読むのだが、ツラい。ついに耐えかねた。読書専用にメガネを作ろうと決めた。
 
昨今、ドラッグストアやコンビニでも老眼鏡くらい売っている。それを使えば良いじゃないかと思われるだろうが、そうも行かない理由がある。乱視だ。とことん私の体は面倒臭く出来ている。しかも普通の乱視ならともかく、私の場合、外傷からの円錐角膜による乱視で、そんじょそこらの歪み方ではない。20分でレンズを仕上げますと謳っている量販店でも「お客様に合うレンズはお取り寄せになりますので」と「必ず」1週間から10日くらい待つことになる。
 
さて、さっそく読書用メガネをオーダーして来た。(敢えて「老眼鏡」とは言わない)ちゃんと「20分でレンズを仕上げます」と謳っている店で「お取り寄せになりますので」と言われる手続きを踏んで来た。よせば良いのに丸顔なのに最近なぜかボストンタイプのフレームを選んでしまう。以前は見栄えを気にしてスクエアタイプばかり選んでいたのだが、顔がキツく見えてしまうような気がして、結局丸顔を強調するボストンタイプになってしまう。あくまでも読書用なので(絶対に「老眼鏡」とは言わない)気にしなくても良いだろう。それに視野の広いボストンタイプは読書向きなのだ。オーダーから今日で2日目になる。たぶん今週中には手元に届いて、読書もずいぶん楽になるだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?