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#29 この島の人たちは「仕方なさ」を知っている

世界自然遺産に登録されてからというもの、奄美大島でテレビの撮影クルーを見かける事が多くなった。NHK WORLD-JAPANでも連続して奄美が取り上げられている。海外向けの番組で全編英語だが、しばらくはネットでも視聴可能なのでぜひご覧いただきたい。
 
出演者には知人が多い。と言うか、ほぼ知人である。大島紬の染色工房「金井工芸」の金井志人(ゆきひと)氏もその一人だ。「台風や水害の多い島は、人間本位になり切れない場所です」と彼は言う。「それは有難いこと。島では人が島に合わせないと生きては行けない。その上に現れる文化こそが奄美の独自性だ」と。
 
金井氏は、さりげなくLocus of Control(ローカス オブ コントロール - 統制の所在)に繋がる話をしている。チャットGPTに、Locus of Controlについて尋ねてみる。
 
「Locus of Controlとは、行動や評価の原因を自己や他人のどこに求めるかという教育心理学の概念です。統制の所在が内側 - 良くも悪くも自分のせいと考える、外側 - 他人や環境のせいと考える、という分類があります。例えば、テストで悪い点数を取った場合、内側に統制の所在がある人は、『自分が勉強不足だったから悪い点数を取った』と考えます。一方、外側に統制の所在がある人は、『先生が出題した問題が難しかったから悪い点数を取った』と考えます」
 
うまく行かない原因を、外に求めるのか自らの内に求めるのか。どちらが建設的で希望があるかは一目瞭然だ。ネットで「Locus of Control」を検索した場合、内側にLocus of Controlを持つことを「自責」と言ってしまっているものがあるが、これは「転換」と言い換えるべきである。様々な困難を自らの成長へと転換する。一見、災難に見える事象を未来への因へと転換する。すべてに意味を見出し行く姿勢、これは「随縁真如の智」とも言い、仏教思想の根幹でもある。社会で活躍する人には、Locus of Controlを内側に持っている人が多い。
 
外部と内部の干渉と折り合いの中に、知恵が生まれ文化が生まれる。奄美大島の世界自然遺産登録に先立って、平成29年3月に奄美は国立公園に指定されたが、その際の趣旨が、「人間と自然が深く関わり調和してきた関係そのものを対象とする<環境文化型国立公園>」である。奄美に暮らす人々は、生活の中で自然環境との調和の仕方を身につけて来た。この島の人たちは「仕方なさ」を知っている。その上に紡ぎ出される文化は、まさに世界遺産なのである。
 
【NHK WORLD-JAPAN】
「Design Hunting in Amami Oshima」
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/ondemand/video/2101006/
 
「Amami Oshima: Shaped by Adversity」
https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/ondemand/video/2032292/

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