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言葉は人を縛る、という話

 社内のとある出来事をきっかけに「言葉は人を縛る」ことについて思うことがあったので、自分のメモがてら書き留めておきたいと思います。

役員から発せられた残念な言葉

 先日、部署のミーティングに特別に出席した役員が「ITインフラ運用は動いて当たり前で怒られることしかない」という話をなさっていて、僕はとても残念な気分になりました。
 この言葉は続けて、「だが、これからのIT運用は事業部門のビジネスを一緒にドライブするパートナーとして協働して欲しい」という言葉に繋がります。この方自身が過去に責任ある立場でITインフラに携わり、散々辛酸を舐めたはずで、先の言葉はIT運用に従事する社員の気持ちに寄り添い、勇気づけるための言葉でした。
 つまり決してネガティブな文脈ではなかったのですが、私は「あぁ、トップマネジメントからも未だにそう言う言葉が出てくるのだなぁ」と、少し残念に思ったのは事実です。

自分も過去に同じ発言をしていた

 思い返すと、僕も過去に同じような発言をしていたんですね。
 2年ほど前、組織開発の部署に複業で携わっていた際に受けたインタビューで、「ITインフラ運用は動いて当たり前で怒られることしかなく、やりがいが持てないが、組織開発を通じて組織を活性化し、事業部門と協働できるIT部門に変えていきたい」みたいなことを偉そうに語っていたわけです。

 社内に記事が掲載された後、先の方とは別の役員から電話でお叱りを受けて、曰く「君のような次代を担う中堅がネガティブなことを言うもんじゃない。若手に悪影響を与える」と。
 わざわざ時間を割いてくれたのは嬉しく思いつつ、内心(いやそもそも誰のせいでワシら若手がこんなに苦しめられとる思とんねん)とちょっとしたモヤモヤを抱えたのを鮮明に覚えています。

 こんなエピソードが先日の話で思い起こされて、2年越しに「あぁ、あの人が言っていたのはこういうことだったのか」と、スッと腹落ちした次第です。

言葉は人を縛る

 「言葉は人を縛る」と言われます。
 たとえば、親から「お前はバカだ」と罵られて育った子供が、自己肯定感を失い、学習意欲を無くして本当に成績を落としてしまう。

 そこで「ITインフラ運用は動いて当たり前で怒られるばかり」と言う言葉。たいてい後に「だけど、大事な仕事だから価値を認めているよ」と肯定が付け加えられますが、前段の「怒られるばかり」という言葉は滓のように心に残り続け、社員の自己肯定感を蝕みます。

 だったら、「ITインフラ運用は安定稼働させるのにプロフェッショナルスキルが不可欠で、そのプロフェッショナリズムがビジネスを支えている」と徹底的に前向きに言い換えた方が良い。事実は確かに「怒られるばかり」かもしれませんが、言葉に縛られてネガティブスパイラルに陥るくらいなら前を向いて歩いた方が良い。

 日々発する言葉の一つひとつにも意味を持たせたい、そう思った秋の昼下がりでした。

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