見出し画像

中医学の角度から見る中国の「ココナッツラテ」ブームと牛乳

Twitterに中国のココナッツラテについて書こうと思ったら、長文になってしまったので、久しぶりにnoteを更新することにした。筆者は中国・大連在住で情報誌の執筆の仕事をしている。

中国では「ココナッツラテ(生椰拿铁)」がここ数年すごく流行っている。ブームを牽引したのはおそらくラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)。


ブームの火付け役、ラッキンコーヒーのココナッツラテ


チェーン店だけでなく、最近オープンした全てのカフェのメニューにあると言っても過言ではない。コンビニコーヒーにも進出している。昔からあるブランド、ネスカフェにもラインナップされていて驚いた。 

昔ながらのネスカフェもココナッツラテを発売

元々中国国内の海南島でココナッツが栽培されており、果物として流通しているほか、飲み物としてココナッツジュースが既に広く市場に出回っているので、中国人の味覚と相性が良かったのが理由の一つだろう。さらに、中国人は「乳糖不耐症」の人がとても多く、牛乳以外の選択肢としてオーツミルクやココナッツミルクが選ばれている。オーツミルクも一時期流行したが、ココナッツの人気がそれを上回る印象だ。

中国で昔から愛されるココナッツドリンク「椰樹牌」

中国でコーヒーが広く飲まれるようになったのはここ数年の変化。私が10年前に大連で留学していた頃は、個人経営のカフェなどほとんどなく、コーヒーといえば数店舗のスターバックスか、インスタントコーヒーだった。しかし現在、多くの人がカフェで挽きたてのコーヒーを飲むようになり、カフェラテなどの牛乳を使ったコーヒードリンクを飲むようになった。しかしカフェラテを飲むとお腹を下すという人も多く現れた。そこで登場したのがココナッツラテである。

牛乳は「極寒」、ココナッツならお腹を下さない

中国医学の角度から見ると牛乳は「寒性」の飲み物であり、中医学では陰陽のバランスを重視するので、中医師は積極的な牛乳の飲用を勧めない。特に女性は体が寒性に偏りがちなので、元々冷えている体をさらに冷やしてしまい体の巡りを悪くしてしまうのだそう。

一方でココナッツはどうか。中国には「椰子鶏」という鶏肉をココナッツの果汁で煮込んだ料理もあり、漢方の薬剤としても使われ、中国人には馴染みのある果物だ。ココナッツの果肉の性質は「平性」脾臓や胃腸を補う効果がありココナッツの果汁は「温性」で津液を補い体の水分巡りをよくする効果があるという(ココナッツ果汁は「やや涼性」とする文献もあった)。ともかく牛乳ほど体を冷やす飲み物ではなく、乳糖も含まれていないので牛乳を飲めない中国人から愛されているという訳である。

私は冷たい牛乳は元々飲まない。多くの中国人と同じくお腹が痛くなってしまう。ただ朝はシリアルに常温の牛乳をかけて食べていたし、カフェラテやホットココアなど暖かくした牛乳はむしろ大好きだったのだが、産後に中医学をかじり始めてから牛乳を避けるようになった。「あなたは牛乳を飲むのに適していない」と中医師から言われた時はかなりの衝撃だった。“牛乳は「寒性」”という概念も結構深く中国人のなかに浸透していて、それもココナッツブームを後押ししているのかもしれない。

その中医師曰く、牛乳は「子どもの飲み物」だそうだ。子どもは大人に比べて陽気が多く、牛乳の寒性を大人ほど影響を受けにくい。また、西洋人は牛肉、羊肉など熱性のものを多く食べアジア人に比べて体が冷えていないので牛乳を飲んでも体調を崩さないのだという。そもそも牛乳は牛の母乳であり、牛の赤ちゃんの飲み物だ。本来赤ちゃんが飲むべき飲み物を、大人が飲むのは自然の摂理に反している。ましてや現在の牛乳はホルモン剤を打った牛により生産されているので、長期に渡る飲用はホルモン剤の影響を受けアレルギーや体の炎症を起こしやすくなるのだそうだ。 

しかしココナッツラテには盲点がある。甘いのだ。元々糖分が含まれている上に、ラテに使われるほとんどのココナッツジュースには砂糖が添加されている。私のように血糖値が気になる人や肥満気味の人は注意が必要である。つまり、どんな食べ物も飲み物も、摂取し過ぎれば害となる。かの有名な中国の孔子は最高の「徳」として「中庸」の大切さを説いている。何事も偏りすぎはよくない。

以上、中国で流行している「ココナッツラテ」について考察してみた。私はココナッツラテが好きだ。美味しい。飲みすぎないように気をつけたいが、このブームはもうしばらく続いてほしいと願っている消費者の一人である。中国のコーヒードリンクはアレンジが大胆なので、次はどんなブームが来るのか楽しみだ。

サポートとても励みになります。自分の言葉で生きていけるように、試行錯誤しながら頑張ります。