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MUD マッド

秘密基地・エロ本・ホームレス

南部のアーカンソーに暮らす少年エリス。
ある日彼は、親友のネックボーンと怪しげな男・マッドと遭遇する。
マッドは愛する女性のために殺人を犯して追われる身で、
彼女と一緒に逃亡する準備をしていると告白する。
エリスは逃亡を成功させようとマッドに協力する。
【amazonプライムビデオの紹介文より】

 *  *  *  *  *  *  *

愛の存在を賭けて少年達が危ない橋を渡る、
つーか、ボートで川を何度も行き来するんだけど、
危なっかしくて目が離せない。

愛する女性のために殺人を犯した男を助ける、
その理由は何なのか。それは、
離婚寸前の両親の愛、
年上女子に対する恋愛、
愛の存在を揺るがされる境遇に悩む少年は
愛の存在を信じたい一心で
殺人犯の愛を叶えるための危険な行動を手伝う。
そこに愛の存在を賭けた。
その結末にあるものは何だったのか。

 *  *  *  *  *  *  *

小中学生の頃、
友達とよく武庫川にエロ本を探しに行った。
風雨に晒されガビガビになったエロ本を見つけると、
ページの端をつまんで丹念に読み込む。無言で。

なぜ人は河原にエロ本を捨てるのか、
謎だったが、行くと必ず落ちていた。

海ならもっと落ちてるかと思い、
遠征して甲子園浜まで行った。
テトラポットの底の方に
白地に紺色の水玉柄のワンピースと
下着が捨ててあるのを見つけた。
僕たちはそれに触れること無く、
長い間見つめていた。
着なくなったから捨てたのではないのは明らかで、
あれはたぶん夜遅く帰宅途中にレイプされたのだと思う。
服がそのままということは、
女の人はたぶん裸で泣きながら家まで帰ったか、
それか、裸のまま加害者の車に押し込まれてさらわれたか、
僕たちはそれを見つめながら仮説をめぐらせ、
長い時間語り合った。

だけど今思えば、
あれは単に自分で捨てた物なのかもしれないな。
何かの思い出と一緒に。

と言うのも、あれは24才頃だったか、
中学の卒業アルバムを武庫川に捨てに行ったことがある。
フリスビーのようにして川に放り投げた。あれはよお飛んだ。

また、
占いの本を大量に捨てたこともある。
自分の未来や運命を悲観して買いそろえた本だったが、
45才頃、衝動的に武庫川に捨てた、南武橋の中ほどから。
占いなんかに縛られていてはダメだと思ったのだ。

しかし、
なぜゴミ箱では無く、資源ゴミとしてでは無く、川だったのか。

そう、
たぶん、川は、思い出を捨てる場所なのだろう。
重い、記憶を、捨てる場所なのだ。

だから人は河原にエロ本を捨てる。
エロ本を買い求めるのも
ひとつの恋であり思い出なのだ。
そして、飽きたら捨てる。
ただ、川ではなく、河原なのは、
また誰かに拾ってもらえよ、
というせめてもの愛なのだろう。きっと。

 *  *  *  *  *  *  *

2012年 米国 ヒューマン映画
監督 / 脚本 : ジェフ・ニコルズ
出演 : マシュー・マコノヒー / タイ・シェリダン


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