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「ブチッ!!」

日記の一番最初は、怪我をした2月24日。


後から落ち着いて書こうと思い、1週間経った日、日記の最初のページの空欄に文字を綴りました。


僕は小さい頃から記憶力が少し良くて、高校卒業でプロサッカー選手の世界に入ったので、話す人が基本的に歳上となり、人の話を聞き逃さないよう、より注意深く聞くようになりました。


この日の日記も、朝から記憶を辿って、書き始めました。


やっぱりどんどん鮮明に思い出して、その日の練習までの自分の流れ、ミーティング、練習メニュー、怪我する前のプレー、怪我した瞬間、直後、その日の夜まで全部思い出して、書き出したペンが止まらなかった。

直前のプレーは味方のパスをファーストタッチで相手と入れ替わるトラップ。
(今日は感触が良い) そう感じた。

ポゼッション練習の2本目。開始すぐだった。この練習の意図は、短い時間、かつ少数、狭いピッチのポゼッションで、時間内フルパワーでボールを取りに行く練習です。

出されたボールに対して常にプレッシャーをかける。練習強度も極めて高いメニューの一つです。

相手ボールに切り替わった瞬間。僕もいけると思い、プレッシャをかけ、半身気味の相手に対し、スライディングに近い形でボールを奪い取った。

と、思った時でした。相手もバランスが崩れ、僕ともつれ、膝に乗っかってしまうような形となりそのまま負傷してしまう形となりました。


ただ、一つ。僕自身が選んだプレーで、自分の選択に間違いは無かったし後悔もありません。自分がいけると思って全力でプレーした結果、不慮の事故なので仕方ないです。


接触した選手にも「あんなの事故だから。どうしようもないよ!」と伝えているので、サッカーのような接触スポーツなら避けては通れない道です。


(なんでこの日に限って特に覚えてるんだ.....)


この時だけは、自分の記憶力の良さが悲しくなり、文字を書くスピードもどのページより早かった。そして、字も雑になるほど鮮明な記録でした。

「多分膝やってる!やばい!」



負傷した瞬間チームメイトの誰かが言ってた。


(いや、え、ほんと?そんなやばいやつ?)
その声を聞きながら思ってました。


痛くて声も出ないほどで、すぐに膝を抱えて倒れ込んだ。この瞬間、その瞬間を見ていた選手たちは、僕が普段痛がったり怪我をしない選手だと知ってるので、明らかにおかしいと思ったと、後々聞きました。


僕自身も、たまにある接触の際の突発的な痛みかなと。少し経てば落ち着いて多分やれると思ってました普通に。


ただ、

「なんか音聞こえちゃったんですよ」


すぐに近くにいたトレーナーに伝えた。


「それが何の音か、練習着の音か、スパイクの接触かちょっと僕も分からないんですけど......」 


MCL、いわゆる内側側副靱帯は痛めた。とすぐに自分でも分かりました。少し落ち着いて、トレーナーと確認しつつ、一回ボールを軽くパスしてみたけど、


「あ、ダメです。なんか膝抜けそうな感覚です。」


こう伝えたこともはっきり覚えています。ただ、MCLが痛いから膝に力入らないだけ。と思って、とりあえず今日はこのまま練習は引き上げ、アイシングして様子見ることにしました。


僕が鮮明にもっと細かくトレーナーに伝えたら、すぐに前十字かもと分かったかもしれない。すいませんの気持ちで、曖昧な表現になっちゃってたなと。


ただ、先ほども書いたんですが、怪我の耐性があまりないので、骨折とかしない限りプレー出来ると思うタイプです。肉離れすらしたことありません。


その時周りの選手にも


「多分大丈夫。内側ちょっと傷めた感じ。」
「歩けるし、数日様子見ればやれるよ。」


と伝えてはいたものの、開幕2週間前。コンディションも昨年より上がっていて、状態も抜群でした。ここからラストスパートって時だったから悔しかった。

そののまま練習後に治療へ行った時も、寝る時も、あの瞬間に聞こえた


「ブチッ」

この音だけがずっと頭に残ったまんま
翌日MRI検査へ行くことに.....

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