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マーケティング観察 #003 空きスペースを貸し借りできる Webプラットフォーム「スペースマーケット」

こんにちは。matsumotoo(@matsumotoo988)です。

今回は空きスペースを貸し借りできる Webプラットフォームサービス「スペースマーケット」について、貸し手側を中心に観察していきたいと思います。

まずは、スペースマーケットとシェアリングエコノミーについてです。

スペースマーケットとは?

あらゆるスペースを簡単に貸し借りできるプラットフォームです。
わかりやすい資料があったので、以下参考ください。

第11回 シェアリングエコノミー検討会議 【資料11-5】より引用

シェアリングエコノミー

「個人が保有している遊休資産の貸し出しを仲介するサービス」のこと。
貸主は遊休資産の活用による収入を得られ、借主は所有することなく利用できるメリットがあります。

海外でもAirbnb(2008年〜)、Uber(2010〜)などが有名ですが、日本では以下のようなサービスがあります。

第1回 シェアリングエコノミー検討会議【資料1-6】 より引

事業内容と競合について

■事業内容
1.「スペースマーケット」の運営
2.イベントプロデュース事業
3.プロモーション支援事業

◾️スペースマーケットの対象領域
・お寺から野球場、結婚式場、古民家、お化け屋敷などユニークなスペース
・全国各地の会議室、ホール、オフィス等のビジネス用途のスペース
・地方自治体が保有する公共施設や、商業施設、廃校など公的スペース
・宿泊できる民家

◾️競合
対個人:Airbnbとまりーな など
対企業:軒先SHOPCOUNTERSpacee など

競合と比べてみると、スペースマーケットがカバーしている範囲がとても広いため、対象領域で完全にカニバリが起こることはなさそうです。またスペースマーケットでは、とても独特な貸しスペース(ex.宇宙とか)がありますが、サービスの認知/知名度の向上などを狙ったものと思われます。

またスペースマーケットの運営以外にも以下などのやっており、他サービスのイベント/プロモーション事業もかなり相性が良さそうです。

◾️事例
まるごとイケアでコーディネートした一軒家で最高のホームパーティーを!
民泊施設でライオン製品とのコラボレーションを開始!人気商品を無料で試せる「ライオンハウス」を都内30箇所に


PEST分析

どの観点からも成長が見込める/環境が整ってきているように思われる。ただ、シェアリングエコノミー検討会議でも触れられているように、以下が課題となる可能性が高そう。

◾️課題
・不特定多数の個⼈間の取引(C to C)を基本としているため、「事故・トラブル時」のルールの整備が必要
・個⼈間等の⼀時的取引が、従来型の個別サービスの営業ごとに規定された現⾏法令(=「業法」)に抵触する可能性


STP分析

対象セグメントとしては、おそらく借り手側の需要について仮説構築→物件登録を優先して進めたと考えられます。後述しますが、初期ほど営業経由での登録割合が高く、認知度が高くなるに伴ってセルフ登録の割合が高くなっている可能性が高いと思われます。

またどのような借りられやすい物件傾向(需要)の抽出が特に初期フェーズでは重要になってきます。このインタビューでも触れられていますが、有望物件となり得る条件と金額のデータは内部でも蓄積されているようです。 


他競合はテーマ型の訴求(ex.Airbnb:次の旅を計画しましょう→旅行先でのスペース探し)であるが、スペースマーケットは「貸切のレンタルスペースで"やってみたい"を叶えよう」というユーザーのニーズに対してオンデマンド型であるのが特徴的。またスペースマーケットが創業したタイミングだと、競合もすでに存在しているので、to B/Cと対象を広く設定したのは、ある程度のシェアをとれる見込みがあったのでは?と思えます。


上記はどのようなユーザーが物件登録をするか?を逆説的に考えて見たもの。スペースマーケットの資料(2016年)によると、収益化が可能な遊休スペースは全国に約1,000万物件存在しているとのデータがあるので、もし上記のようなターゲットから1%の物件登録を取得できた場合でも10万件の登録される計算になります。これはかなりの潜在的な可能性を感じられました。(2017/12月時点で1万2000スペース以上の登録があるようです。)

4P分析

個人的に気になったところだと、以下3点になります。

(1)在庫となる登録物件数が競合比較でもかなり優位に立っていると思われる。また今後も伸びていくことが想定される(後述の表参考)

◾️登録物件数について
軒先:7000件以上(2019/1月)
SHOPCOUNTER:1,092件以上(2019/1月)
Airbnb(日本):1万3千件(2018/6月)
※とまりーな、Spaceeについては正確な物件数は不明

(2)スペースマーケットの手数料はゲスト < ホストの割合で設定しているが、サービスにより考え方が異なっている(ex.Airbnbと比べると、ゲスト側のハードルを下げることに重きをおいた設定と考えられる)

◾️手数料について
・軒先:ゲスト→なし、ホスト→35%
・SHOPCOUNTER:ゲスト→5%、ホスト→最大35%
・Airbnb:ゲスト→0~20%、ホスト→3%
・とまりーな:ゲスト→予約時に表示、ホスト→0% or 3%(方法による)
※Spaceeについては不明

(3)「promotion > シェアエコノミーの浸透/普及の推進」は自分が調べた限りでもかなり注力していたと感じました。以下2015-2016年あたりの記事ですが、業界としての基盤・認知度/信頼性/法整備などの課題への対処・行政への働きかけなど早い時期から動いていることがわかます。

◾️参考記事
シェアリングエコノミー協会の設立発表会を行いました。
シェアリングエコノミーの業界団体が2016年1月に発足、今後はUber、Airbnbの取り込みが鍵に?
自由民主党のIT戦略特命委員会において、シェアリングエコノミーの概況ついて両代表がプレゼンしました

気になったこと

サービスを調べていく中で気づいた重要そうな施策。

(1)各種イベントの開催
 └ 古民家で結婚式/映画館で社員総会/島でコスプレ撮影会など独自のイベントを積極的に行い、認知度の向上を行なった(特に初期フェーズ)

(2)フード系サービスとの提携
 └ PRIME CHEF、REALBBQ、UberEATSなどと提携(利用者の35%以上がパーティー目的というデータがあったので、幹事向けの訴求と思われます)

(3)行政との連携
 └ シェアリングエコノミー伝道師の任命などもあるが、長崎県島原市、千葉県千葉市などと地方創生への貢献(企業の社会的信頼にも繋がる動き)

(4)決済の強化
 └ 2018年にはJCBカードやGoogle Payでの支払いへの対応を実施(今後も継続して決済の簡易化は進めていく可能性が高い)

(5)経営体制の強化
 └ 2018年にCFO/社外取締役/社外監査役4名が就任(体制強化)

(6)TVCMの開始
 └ 2018年11月〜12月にかけて実施。以下記事にもあるが、プロダクトの磨き込みや付随する機能開発なども行い、アーリー/レイトマジョリティ層のユーザー獲得アクションを開始した可能性が考えられる


まとめ:観察して感じたこと

スペースマーケットを観察していて感じたのは、貸し手(物件オーナー)と借り手の2タイプのユーザーがいるため、かなりハードルが高くなりそうと感じました。特にこのようなマッチング系サービスだと、それぞれの勝ち筋を見つける必要があるため、初期にコストが高くなってしまう構造がありそうです。

また調査する中で、スペースマーケット社でもスペースの運営を行う体制を持っているようでした(課題抽出や運用テストなどを行なっており、サービス運営にとても効きそうな取り組みだと感じました)

最後に気になったこと。以下資料だと、2015年の4月あたりからセルフ登録の伸び率が高くなっています。他サービスでもこのようなターニングポイントとなる時期があるのですが、今回調べた限りだと発見することができなかった..。
(直前にテレビ東京/NHKでスペースマーケットが取り上げられ、認知度/信頼性が上がったため、という仮説は持っているのですが、確信を持てず。)

第2回 シェアリングエコノミー検討会議【資料2-2】 より引用


今回のマーケティング観察はいかがでしたでしょうか...?
自分なりに解説して見ましたが、もし何かの参考になりましたら、幸いです!

お読みいただき、ありがとうございました。

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