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【Kindle本の構成とは?】「今さら病」を治すウサギの場合

Kindle本の構成って
あなたはどのくらい考えて書いていますか?

ぼくは去年まで放送作家をやってました。
放送作家って
別名『構成作家』なんて呼ばれます。

なのでパーツをどう組み合わせて
物語を作っていくのか
かなり頭を使って『構成』します。


読者の1人からは
『この物語の流れには
 計算された設計図がちゃんとあるのだなと思います』


・・・というレビューも頂きました。
鋭い! その通りです。

別に隠すことでもないので
今回、どんな風に話を構成したのか
書いていきます。

軽く本の紹介



タイトルは
『人生に「今さら」はない!
 「今さら」病を治すウサギ」』


表紙に書かれた二人の人物。
ウサギ(ウサオ)とトキオ(右下のサラリーマン)

この二人の対話によって展開する物語です。

「今さら病」とは
「今さら〇〇やってもなあ・・・」と諦めて
何もせずに人生が停滞してしまう病気です。

「今さら朝活やってもなあ・・・」
「今さら筋トレしてもなあ・・・」

・・・みたいなことってありますよね。

そんなトキオの夢の中にある日突然、ウサオが現れます。

だらしなく生きているトキオに対し
ウサオは世界の偉人たちのエピソードを使って
「今さら」って諦めずに、やってみろ!

・・・と背中を押して行動させます。

そこからトキオの人生が少しずつ変わっていく。
色あせていた世界が少しずつ輝きだす。

そんなお話です。


noteで目次を下書き

ぼくは下書きにnoteを使います。
今回は対話形式なので、
まず登場人物を書きました。

さっき書いた通り、登場人物は二人です。
関西弁を使うナゾのウサギ。

そして人生に行き詰っている40代男。
「今さらなにをやっても遅い」
グダグダ考えて動かない
40代男にガンガン突っ込む話にしようと考えました。

以下が実際に書いた設定と目次です。



登場人物

ウサオ
関西弁をしゃべるウサギ

トキオ
人生全くうまくいっていない
何をやっても楽しくない40代男
1年前に奥さんと別れ
仕事は営業だが、向いてないと思いながら
ダラダラと続けている
完全夜型で肥満気味
最近、服を買った記憶がない

物語の始まり

ウサオ
「お前の今さら案件書き出せや!
 わしがやれるのは順番決めることや」

ウサオ
「ほー頑張って書いたやん
 ただこれ、順序よくやらんとあかんから
 わしが順番だけ決めたるわ」

目次案

今さら朝活やっても・・・

今さら運動しても・・・

今さらオシャレしても・・・

今さら足が遠のいた行きつけのお店行っても・・・

今さら部屋を片付けても・・・
(メルカリに出したら手元にお金が出来た)

今さら最新のデバイス買っても・・・
(メルカリで手に入ったお金でマックブックエア
 買ったらどうや。最新デバイスって多幸感しかないで)

今さら勉強しても・・・

今さら転属届け出しても・・・
(転属届けを出すのは簡単や
 でも営業マンは会社のものを売るんやない
 お前からなら買っていいという信用を売るんやで
 トキオさんが言うなら・・・ってお客さんおるか?
 せめてそういう客を一人でも作ってから考えたらどうや?)

今さら初恋の人に会いにいっても・・・
(初恋の人に会いに行って自信をもらう)

今さら奥さんとよりを戻したいと思っても・・・

今さら縁を切った母親に会いに行っても・・・


ラストは決める

最後は母親に会いに行く。
このラストだけは決めていました。

途中の展開は書いた通りです。

これが大まかな目次です。

今さら朝活やっても・・・
今さら運動しても・・・
今さらオシャレしても・・・
今さら足が遠のいた行きつけのお店行っても・・・
今さら部屋を片付けても・・・
今さら最新のデバイス買っても・・・
今さら勉強しても・・・
今さら転属届け出しても・・・
今さら初恋の人に会いにいっても・・・
今さら奥さんとよりを戻したいと思っても・・・


偉人エピソード

偉人エピソードは入れようと思っていました。
「夢をかなえるゾウ」からの着想です。

ウサオがエラそうにトキオに「朝活やれや」
・・・って言っても説得力ないので、
偉人たちの話を入れながら説き伏せようと考えました。

最初から書こうと思っていたのは・・・

☆ダニエル・クレイグ
☆横溝正史
☆ジャンゴ・ラインハルト(ギタリスト)
☆ビル・ポーター(脳性まひのセールスマン)
☆二宮和也

この5人。
ココイチの宗次(むねつぐ)さんと
HIKAKINさんは書きながら調べて加えました。

入れるのをやめた偉人は
カーネル・サンダースさんですね。

この方が人生で大成功したのは60代以降、
「今さら病」というテーマにはピッタリなのですが
みんな知っているし
有名すぎるので
あえて取り上げませんでした。

松本清張さんも一瞬頭をよぎりましたね。
この方も遅咲きの作家さんなんですよ。
ただ、横溝正史さんとかぶるし、
こちらも今回は入れるのを断念しました。

偉人は新旧入れることを意識。

古い人だけにしちゃうと
若い読者は引くかもなあ・・・と考えて
HIKAKINさんや二宮くんを入れて
バランスを取りました。

ジャニーズのファンの方って
めちゃくちゃ熱心な方が多いので
そういう層にも刺さらないかなあって
期待した部分もあります。

全体の構成

ザックリ書くと・・・
軽めのエピソード(ココイチ)から入って
少し重くして(ダニエル・クレイグ)
休憩パート入れて(HIKAKIN)

しっかり感動エピソード(横溝正史)
(ビル・ポーター 脳性まひのセールスマン)

とどめの感動エピソード
(ジャンゴ・ラインハルト ギタリスト)

・・・という感じで配置しました。
その上でやったことが。

予定調和を壊していく

本や物語には緩急が大事です。

今さら朝活やっても・・・
今さら運動しても・・・
今さらオシャレしても・・・
今さら足が遠のいた行きつけのお店行っても・・・
今さら部屋を片付けても・・・
今さら最新のデバイス買っても・・・
今さら勉強しても・・・
今さら転属届け出しても・・・

最初はこの通りに書いていったのですが、
『今さらオシャレしても・・・』を書いた辺りで
同じテンポで書いても面白くないな!

・・・って思っちゃったんです。
だから。

☆今さら足が遠のいた行きつけのお店行っても・・・
☆今さら部屋を片付けても・・・
☆今さら最新のデバイス買っても・・・
(※今さら勉強してもはカット)

この3つを一気に展開させることにしました。

その方が話にテンポが出るし、
「今さら病って芋ずる式に回復する」
・・・という部分を描くことができます。

「却下!」という展開も作る

これも途中で変えたポイントです。

問題提起⇒解決!
問題提起⇒解決!
問題提起⇒解決!

このパターンを最後まで続けるのも面白くない。
・・・って思ったんですね。

そこで問題提起するも
却下される展開を作ることにしました。

却下された方がトキオが「自分で人生を考える」
・・・という流れを作れます。

対話形式の場合、
どうしても教えられる側が言われたことを
「ハイ!」「ハイ!」って何も考えずに進むパターンが
多くなってしまいます。

それだと人物に人格がなくなって
RPGのNPC(村人Aとか)になり果てるので
これは避けたいと考えました。

トキオに意志を持って欲しかったんですね。

上手くいかない展開も作る


ラストに行く前の
今さら案件は2つ予定していました。

☆今さら初恋の人に会いにいっても・・・
 (初恋の人に会いに行って自信をもらう)
☆今さら奥さんとよりを戻したいと思っても・・・

どちらもエピソードとしては似ているので
初恋の人に会いにいっても・・・はボツ!

これ以上入れたい!という偉人エピソードも
なかったのと、物語のテンポ的に最後に向かって
とっとと助走に入った方が良いと思ったんですね。

ここでも予定調和を壊そうと考えました。

問題提起⇒失敗!

・・・という場面も
描く必要があると思っていたんですね。

人生簡単にうまくいくもんじゃありません。

女性の気持ちを想像するのは難しいですが
ちょっと見た目が変わったぐらいで
よりが戻るなら、苦労はしないよなあと考えました。
(この辺りは女性の意見も聞いてみたいところ)

ラストは走る

ラストの展開。
実家に向かって走っているトキオを
描きたいと思いました。

漫画でも映画でも
物語の最後は、ストーリーがうねるように加速します。

心が動くと体が動きます。
それを表現したいと考えました。

10年会ってない母親に向かわせるには
強烈なエピソードが必要です。
そこで、
ジャンゴ・ラインハルトの力を借りました。

ジャンゴはかなり昔、週刊少年マガジンに連載されていた
超マイナーなバンド漫画に
一瞬だけ登場した伝説のギタリスト。

それがずーっと頭に片隅にあって
どこかで紹介したいと思っていたんです。

「大事なものは
 絶対に手放してはいけない」

それを描くにはジャンゴしかいない!

・・・そう思ったんですね。

最後まで書いた後 冒頭を加える


最初に登場するおばあちゃん。
実はこのパートは最後まで書いた後で
付け加えました。

カンのいい読者なら気づくだろうし、
気づかないとしても
「そういえば、あのおばあちゃん誰なんだろう?」

・・・という興味で読んでもらえると思ったんですね。

これはマンガや小説、映画でも使われる手法です。

一見、物語と関係なさそうなシーンから入って
それが伏線となって最後まで読者を引っ張っていく。

そういう “引っ掛かり” や “違和感” が作れれば
良いと思って加えました。

ウサオのローキック
「さ」を「か」に変える


この2つのアイディアは
完全にアドリブです。

ウサオのローキックは
「普通に起こすのは面白くない」と考えた結果
可愛らしいウサギがローキックしたら
面白いかもなあ・・・と考えました。

普通に〇〇したら面白くない。

こう考えると案外アイディアって出るものです。
多少とっぴでも
自由に発想して思い切り書いた方が良いです。

ノウハウ本にしても
「こんな細かい話、書いても仕方ないか・・・」と
捨てずに取りあえず一度書いてみて欲しいです。

どこに需要があるか分かりませんから!

「さ」を「か」に変えるは
最後、奥さんと電話をするトキオのセリフを
考えている時に思いつきました。

だった一文字だけど、
世界がガラッと変わるなあ・・・って気づき、
これはいいかもなって思ったんですね。

原稿を書く前は1ミリも思ってなかったです。
これがKindle本の面白さ、
文章を書く面白さです。

書きながら思考をつなげていくと
神さまが時々、ご褒美をくれます。
それを運よくすくい取っただけなんですね。


構成のリズムは普通の本も同じ


これは対話形式に限った話ではありません。

普通のノウハウやマインドを書いた本でも
最初は簡単な疑問から解決していきます。

しばらく同じ展開で書いていき、
中盤あたりでギアチェンジします。

例えば確定申告の本なら

☆『確定申告あるある』
☆『著者本人のコラム
 【初めての青色申告】』

・・・みたいなミニコーナーを入れてもいいんです。

申告を忘れるとこんな怖い目にあいます!
・・・という話でもいいかもしれません。

とかく人間という生き物は飽きっぽいので
テンポを変えて、最後まで読んでもらうことが大事です。

構成は最初にある程度作っておくと
書くのがラクです。

同時に縛られ過ぎると予定調和な話になって
面白くないので、意識的に壊すと良いです。

最初は慣れないと思いますけど
構成があると本を書いてて迷わずに済みます。

簡単な目次からでもOKなので
ぜひやってみて下さい!































これでまた、栄養(本やマンガ)摂れます!