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“ROMANCE”という名付け

ロングヒット中の宮本浩次のカバーアルバム「ROMANCE」
「宮本が愛した、おんな唄」
女性ヴォーカル曲のカバー12曲を収めた作品集。

アルバムタイトルがいい。収録曲のひとつではあるのだけれど、それ以上に、ここにうたわれる彼女たちの12の物語をひとつにくくって名前をつけるなら、これしかないと思える。
愛や恋をあらわすことばはほかにもあるけれど、love affairは恋愛という事象だし、relationshipは利害のある関係性のように感じる。精神性が肉体性より優っている印象があるせいか。辞書を引いても、romanceという語にそういう意味はないのだけれど、なぜか不思議と。

間違いなく歴史に残るアルバムなのだけれど、それを物語る逸話がある。
このアルバムに収められた12曲のうち6曲の歌唱が、デモ音源であるということだ。
昨年春の緊急事態宣言下、宮本は作業場と呼ばれる自らのスタジオで、少年時代から慣れ親しんできた歌謡曲を中心に、1日1曲カバーし録音していたという。
つまりこのアルバムの曲の半分は、そのまま作品とすることを意図したものでなく、歌が大好きな少年だった53歳(当時)の男が、ただただその楽曲を愛し、それを自分の声であらわしたくてうたったものであるということだ。
その後練習を重ねるうち「うまくなっちゃって」(本人談)、デモ音源に込められた感情を超えられなかったのだと。ああ、だからこんなにも胸を打つのだと腑に落ちる。

リリース時、宮本はインスタグラムにこんなメッセージを綴っている。

「どうか、あなたの宝物になりますやうに。」

日本の、世界の宝です宮本さん。
宝石みたいなうたを、ありがとう。

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