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引きずりまわす男

「引きずり回す」という動詞を、日常生活においてどれだけ使うだろうか。

宮本浩次氏の場合。

目下私のいちばん好きなアルバムである「昇れる太陽」(2009年)では、

「魂引きずりまわせ!」
(Sky is blue)

揺れる想い 引きずり回して進め!
(to you)

と2曲で使われている。40代前半、引きずりまわしたいお年ごろだったのね、と思ったものだ。

遡って2003年のアルバム「俺の道」でも、表題曲に、

満たされないまま 引きずりまわして歩け

がすでに登場している。宮本さん30代半ば。

そして2018年、宮本さん50代。情報番組における対談で、代表曲のひとつ「俺たちの明日」の「10代、20代、30代」の歌詞になぞらえて「50代は?」と問われ、

引きずりまわして自由に向かう。

という名言を産んでいる。

ことばはそれがあらわす概念と対だ。
宮本さんの中には「引きずりまわす」というイメージがつねにある。だから折にふれて歌詞としてあらわれる。
魂を、想いを、満たされない何かを、「引きずりまわして」生きているのだ。

そして私は(そしておそらく多くのご同輩も)、縦横無尽な彼の魅力と活躍に右往左往しながら、日々「引きずりまわされる」ことによろこびを感じているのである。

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