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北海道釣り旅行2022
早いもので、(一応)SF作家としてデビューしてから、一年が経とうとしている。デビュー作の「射手座の香る夏」が収録された『GENESIS 時間飼ってみた』の出版が、昨年の10月末。その当時、自分が何をしていたのかを思い返してみると……、そう釣りに行っていた。3泊4日の釧路旅行である。
ならば、デビュー1周年を祝うためにも行くしかあるまいと思いたち、今年も北海道釣り旅行に出かけることにした。現在仕事が忙しく、毎月過労死ラインギリギリなのだが、それはそれ。無理矢理休みをねじ込んだ。流石に昨年のように3泊する余裕はなかったので2泊3日だが、朝イチの飛行機に乗れば何とかなるはず。
そして出発前日の金曜日。終電まで会社で粘ってからそのまま蒲田のビジネスホテルに直行し、あらかじめ預けてあった釣竿とトランクを回収する完璧な立ち回り。シャワーだけ浴びてベッドに潜り込み、朝に備えて就寝。
1日目
飛行機は7時40分羽田発。起床は朝5時半。この時点ですでに辛いが、何とか起き上がり空港へ。釧路は霧が濃いらしく、飛行機が飛ぶかちょっと怪しいとのこと。しばらくチェックインカウンターの周りをうろうろしていたが、無事フライトの表示が出る。何とか出発。当然、飛行機の中では爆睡して、ちょっとだけ体力を回復する。
そして9時20分、釧路空港に到着。レンタカーを借りて釧路市内へ。まずは情報収集とルアーの補充を兼ねて、ルアーショップ「ランカーズ釧路」へと向かう。
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ひとまず、湖向けのルアーが足りなかったので、PUREシェルを買い揃えておく。ついでにジグミノーもいくつか見繕ったが、正直今回のタックルだと使いこなせる気がしない。(2500番台のスピニングリールに、ナイロンの6ポンド。PEの方がいいのはわかっているが、根がかりのたびにいちいちリーダーを結ぶのが面倒すぎる)
道具を揃えた後は、和商市場の勝手丼で昼食を済ませ、そのまま車を飛ばして一時間半。阿寒湖へと到着!
すでに十四時を回っており、日の入りまでもう二時間ちょっとしかない。遊漁券を買った際に話を聞くと、湖はかなり渋いとのことだったので、この日は阿寒川の方に向かうことにした。
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先に書いておくと、阿寒川は釣れる。なぜならキャッチ&リリースが義務づけられており、かつレインボートラウトの放流に力を入れているので、魚はウヨウヨいるのである。しかし、C&Rが義務づけられているということは、魚たちの方も何度も釣られて賢くなっているわけで、大抵の場合ルアーを通しても見向きもされない。コンディションもまちまちで、ピンシャンの野生児っぽいやつもいれば、ちょっと釣り堀感漂う見た目のやつもいる。ガチのネイティブトラウト以外は邪道だぜ…!という方には、おすすめできない釣り場ではある。
しかし、せっかく飛行機に乗って北海道まで来たのだから、やはり釣りたい。川の流れに鍛えられたレインボーたちは、たとえ放流魚だとしてもかなり引くし、中にはかなり美しいヒレを持つ魚もいる。ロケーションも良く、あちこちで鹿やカワセミの声が響く中で釣りをすることができる。何より、川へのアクセスが比較的楽で、釣りやすい。釣りを楽しむという点に関してだけいえば、最高の川だと言えるだろう。
と言うことで、早速釣りを開始する。対岸の淵に向かってミノーとスプーンを投げてみるが、イマイチ反応がない。仕方ないので、管理釣り場用のクランクにチェンジして、流れに乗せながらゆっくり巻く戦略を試してみる。数投したところで最初のバイトがあったが、バレてしまった。ぐぬぬ、と唸りつつ投げ続けるも、なかなか次のアタリが来ない。そうこうするうちに日が傾き始め、めちゃくちゃ霧が出てきてしまう。深い霧の中で鹿の声だけが響く状況は、なかなか怖いものがある(主にクマ的な意味で)。
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ついに、隣で釣っていた人も撤収してしまい、一人ぼっちになる。あれ、何だろう。ちょっと寂しい。膝まで水に浸かってるから寒いし、そろそろ日も暮れてしまう……と弱気になっていたところで、ようやくヒット!バレないよう慎重に引き寄せてネットイン。
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ちなみに、ヒットルアーは管釣り用の鉄板ルアー、セニョールトルネードの赤。北海道まで来てこれかよと思わなくもないが、やはり魚の反応が段違いにいいのである。特に若干上流側に投げてから、流れに乗せてUの字を描くように引いてくるパターンが圧倒的に強い。この後、すぐさま連続でもう1匹ヒットし、無事に2匹釣り上げてホテルへと向かう。
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ほくほくした気持ちで夕飯を済ませ、大浴場でゆっくりと疲れを癒す……。至福である。今回泊まっているニュー阿寒ホテルは、なんとホテルの屋上がスパになっており、夜の湖を眺めながら(まあ暗くて何も見えないんだけど)ゆったりとお湯に浸かることができるのだ。
温泉にも入ったし、サウナも満喫したし、さて明日に備えて就寝……といきたいところなのだが、そうはいかない。
原稿である。
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これは物書きの人なら大体覚えがあると思うが、旅先のホテルは最も原稿の捗る場所だと言われている。翌朝は4時半起きという緊張感が、キイを叩く手をさらに加速させる。それはそれとして、流石に眠いが……。ということで、二時間ほど原稿をやってこの日は就寝。
2日目
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4時半に起きるつもりだったが、流石に疲れていたので目を覚ますと5時だった。急いで早朝の釣り場へ向かう。今回釣るのは阿寒湖の釣り舟屋さんの前にある桟橋。前回来た時、地元の人に一番釣れる場所として教えてもらったところである。サイズは小さいが、日の出前後ならほぼ確実にアメマスが釣れるという。
このポイントの何がいいかというと、まず桟橋なのでウェーダーを履いて水の中に立ち込む必要がない。そして釣り舟屋さんの明かりがあるので、日の出前の暗い時間でも釣りがしやすい。流石にほぼ冬の湖の中に、真っ暗な日の出前からバシャバシャと1人で入水していくのはちょっと怖い。(熊も出そうだし……)。ということで、明るくなるまでは桟橋で釣って、その後湖の他のポイントを探るという作戦で行くことにした。
早速、ミノーを投げて探っていくが反応なし。しかし遠くでライズの気配はある。ルアーをシェルスプーンに変えてしばらく試していくと……
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綺麗な金色のアメマス!大きさは30センチないくらいだが、コンディションがとても良い。ちなみに、アメマスというのはイワナの降海型のことで、海ではなく湖に降りてきたやつのこともアメマスと呼ぶらしい。阿寒湖のアメマスは綺麗な金色をしていることで有名である。
その後、同じシェルスプーンでレインボーを2匹釣り上げ、計3匹に。時刻は6時半を少し過ぎたところ。死ぬほど寒いので一度ホテルに戻ることにする。
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……眠い。薄々気づいていたが、体力の限界が来てしまった。早朝に3匹釣れたことで心に余裕が生まれたこともあり、一度仮眠を取って休むことにする。
目を覚ますと8時半頃。体はちょっと回復している。早速湖に行こうとしたが、窓の外を見ると天気が悪い。なんか風も強いし、雨もパラついている。これだと湖は厳しいかもな……と考え(湖は周りに何もない水の中に腰まで浸かって釣ることが多いので、風が強いと釣りにくい&死ぬほど寒い)、結局阿寒川に向かうことにする。
同じことを考えた人が多かったのか、この日の阿寒川はちょっと混みあっていた。いつものポイントで早々に1匹釣りあげたので、少し川を上がってみることにする。
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が、釣れない。時間が悪いのか、あまり良いポイントを見つけられいないのか。しばらく釣り上がってみたが、全然反応がなく、なんか雰囲気的にめちゃくちゃ熊が出そうだったので諦めていつものポイントに戻ることに。
戻ってみると、死ぬほど寒いせいかフライマンが1人いる他はみんな撤収してしまっていた。少し離れた場所を攻めていると、フライマンのおじさんにいきなり声をかけられる。
「あのさあ、向こう岸のところに魚がいっぱい溜まってるんだけど、フライだとうまく流せないんだよね。君のルアーで釣ってみてくれない?」
えーっ、マジか。いやポイント譲ってくれるのは嬉しいけど、これ責任重大じゃん。釣れなかったら恥ずかしいやつじゃん。どうしよう…と悩む暇もなく、おじさん完全に水から上がってスタンバっている。渋々場所を交代し、3gのスプーンで流れを攻めてみることに。おそらく手前側の流れと奥側の流れの2本があり、奥側の流れにうまく乗せないと釣れないパターンっぽい。木の枝に引っ掛けないよう、下投げで何度かキャストを繰り返して試すと……。
「あ、来ましたね」
無事にヒット。しかもめちゃくちゃジャンプしまくる元気なやつだ。結局途中でバレてしまったのでネットには入らなかったが、まあ食わせることには成功したのでミッション達成だろう。その後、おじさんと少し雑談してから、お昼を食べに湖の方に戻ることに。
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体が冷えて死にそうだったので、ラーメンを食べた後は一度ホテルに戻って温泉に浸かり、体力の回復をはかる。もう若くないのでこうやって休んでいかないと体がもたない。老いって悲しいね…。
午後は別のポイントを攻めてみようと思い立ち、上流の滝見橋と呼ばれるポイントへ「ヒグマが目撃されました!」との看板(しかも日付が最近だ)ビビりつつ探ってみるが、なかなか釣れない。ちょっとフライ向きのポイントなのかもしれない……。仕方なくまたいつものポイントに戻り、夕方に2匹連続でキャッチ。この日は計6匹で終了。
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この日の夕食はアイヌコタンにある「喫茶ポロンノ」。現代風にアレンジしたアイヌ料理が食べられることで有名なお店。鹿肉のユック丼とポッチェイモ(発酵させたじゃがいもで作るお餅。アイヌの伝統料理)をいただく。本当はビールも飲みたかったが、この後はまた原稿タイムなので諦める。帰りに去年見かけたカフェでコーヒーを買って帰ろうとしたら、閉店してしまっていた。悲しい…。
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3日目
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起床チャレンジ成功!
予定通り4時半前に起きて、日の出のきっちり一時間前には例の桟橋へ。万事順調、これで釣りまくるぜ……と言いたかったのだが。
寒い。
そりゃ10月の北海道なのだから寒いのは当たり前っちゃ当たり前なのだが、それにしても寒い。気温は2度もないんじゃないだろうか。風も強く、おまけに小雨がパラパラと降っている。当然のごとく、桟橋には自分以外誰もいない。辛い。寂しい。それでも気合いを入れて竿を振っていると……
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小さっ!!
日の出が近づいたあたりでようやく1匹釣れたが、あまりにも可愛いチビ鱒。違うんや、おじさんが釣りたいのはな、アメマスって言ってな……
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キタ━━━━(゚∀゚)━━━━ !!!!!
思わずいにしえの顔文字を貼ってしまうくらいに綺麗なアメマスがヒット。これこれ、こういうのですよ。
無事にノルマを達成したので桟橋を離れ、一度駐車場に戻ってウェーダーに着替える。せっかく来たのだから、一度くらいは湖に立ち込んでおきたい。遊覧船乗り場の脇から遊歩道を歩いていき、「ボッケ」と呼ばれる場所に到着。火山活動によって、地下からめちゃくちゃに熱い泥がボコボコと湧き出している場所である。ここは地熱のおかげで水が(少しだけ)温かいので、寒い時期にも比較的釣りやすいのだ。
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ようやく晴れ間も見えてきて、非常に気持ちが良い。腰まで水に浸かりながら、どこまでも広がる湖面めがけてガンガン遠投していく爽快感!これが湖の釣りの醍醐味でしょう。(釣れないけど)。この辺はかなりの遠浅なので、岸から十メートルくらい離れた場所まで入っていくことができ、それだけでもかなり楽しい。何より水の綺麗なこと!(釣れないけど)。
ちなみに、去年来た時はウェアの胸ポケットにiPhoneを入れていたのだが、調子に乗って深いところに行き過ぎた結果胸まで水に浸かって水没してしまい、あっさり壊れてしまった(アホ)。今回はその反省を活かし、ちゃんと防水ケースに入れてきた……のだが、やっぱりウェアは水没したので、途中からぐしょぐしょに濡れた格好で釣りをしていた。寒すぎる。
というわけで、二時間くらい頑張ったのだが、全く釣れず。ボッケ横にいたフライマンも暇そうだったので、多分みんな釣れていなかったのだろう。諦めて車に戻り、また阿寒川に戻って2匹釣りあげ、計13匹でフィニッシュ。川の方もちょっと渋めだったのだが、徐々にパターンを探っていき、最後は完全に狙い通りの釣り方で結果を出せた。満足である。
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ということで、長いようで短かった旅行も終わり。再びレンタカーに乗り込み、釧路を目指す。ひたすら山と草原が広がっている景色が延々と続くので、かなり眠い。こういう道を走っていると、確かにUFOが降りてきてもおかしくはないなと思うし、やはり村上春樹は天才だとの思いを強くする。それはそれとして体力が限界に近く、眠気がやばかった。
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飛行機まではちょっと時間があったので、空港に行く前に釧路フィッシャーマンズワーフという施設に立ち寄る。釧路で一番有名な橋、幣舞橋のたもとに建つ複合商業施設で、一階が観光客向けの土産物屋、二階にはレストラン街と役所が入っている。
……役所?
最初はどういう施設なのかよくわからなかったが、確かにハローワークやら、男女平等参画センターやらが入っている。というか、一階以外は大体がお役所のようである。リミナルスペースもかくや、という人気のない廊下にはちらほらと座り心地の悪そうな椅子が置かれ、地元の高校生らしい子たちが試験勉強をしている。お土産エリアも繁盛しているとは言い難く、どことなく寂れた雰囲気の中でEiffel 65のBlueが爆音で流れている。なんでエッフェルなんだ??
地域振興の目的で観光客向けの商業施設を建てたかったけど、それだけだと絶対採算とれないことが分かりきってるので、お役所の建物と一緒にしたとか、そういうことだろうか。そういえば、前に夕張の方に行った時も民間のスーパーが全然なくて、道の駅が唯一の商業施設として頑張っていた記憶がある。なんだかちょっと寂しい気持ちになってきてしまったので、いくらの醤油づけを買って外へ。ちょうど夕暮れ時だったので、幣舞橋が綺麗だった。ぶらぶらと散歩を楽しみ、空港へ。ボロボロに疲れていたので帰りの飛行機は爆睡でした。(ちなみに翌日からは普通に仕事……)。
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まとめ
北海道最高!!
またいきたいぜ!!!
〜完〜
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