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【祝】デビュー短編集『射手座の香る夏』、発売しました

ワハハ(挨拶)
このブログで私を知った方には、時々アニメとか映画の感想を書いてるオタクの人と思われがち(実際そう)なんですが、一応プロの小説家でもありまして。デビューしたのが短編の賞だったので、これまで単著がなかったのですが、この度ついに初の単著となる短編集『射手座の香る夏』が発売されました!

素敵なカバーイラストはhale(はれ)様、帯文と解説は飛浩隆様です。あまりにも「すべて」が良すぎて、中身がデビューほやほやの新人の小説であることがちょっと申し訳なくなるくらいなのですが、ともかく最高の本に仕上がっておりますので、みなさまぜひお手にとってみてください。

本格的に小説を書くようになったのが大学生の頃。それから賞の一次選考を通過できるようになるまで6年、受賞するまでさらに6年、デビューしてから本が出るまで3年。感無量、ですね。が、これはあくまでスタートラインに過ぎないのです。最初の一冊までに15年かかったので、その倍くらいの年数は作家として活動していきたい!
よろしくお願いします。

以下、簡単に収録作の紹介を。第12回創元SF短編賞を受賞した表題作をはじめ、全4編が収録された青春SF短編集です。

「射手座の香る夏」


意識転送技術が確立された近未来。超臨界地熱発電所で人工身体に意識を転送中だった作業員たちの肉体が、密室状態の転送室から消え失せる事件が発生する。事件の謎を追う刑事の前に現れるのは、転送技術を濫用し、犬の身体で野山を駆け回る〈動物乗り〉の若者たち。彼女たちもまた、大きな傷と秘密を抱えていて……。

第12回創元SF短編賞を受賞した表題作。「匂い」と「記憶」をテーマに、動物に意識を転送する〈動物乗り〉たちの物語を描いています。デビュー作なので思い出深い反面、今読み返すとかなり肩に力が入っているな〜と感じるところも。とはいえ、そうした初々しさも作品の一部なので、改稿にあたってはあまり直し過ぎないように気をつけました。

「十五までは神のうち」

「飲むタイムマシン」の発明によって、出生のキャンセル〈巻き戻し〉が制度化された世界。全ての子供たちは、十五歳の誕生日になると、自分の出生を追認するか、あるいは「なかったこと」にするかを選択する機会を与えられる。〈巻き戻し〉によって息子を失った「ぼく」は、瀬戸内海に浮かぶ故郷の島を訪れていた。30年前に〈巻き戻し〉を選んで消えてしまった、兄のことを思い出すために。兄はなぜ〈巻き戻し〉を選んだのか。「ぼく」の歩みはやがて残酷な一つの真実に辿り着く。

Web東京創元社マガジンに掲載された短編作品。商業作品としては3作目に当たります。いわゆる反出生主義(より厳密には同意不在論)を扱っており、テーマの重さも相俟って書き上げるのにかなり苦労しました。それだけに思い入れが深い作品でもあります。

↑Webマガジン掲載版のリンク。本を買う前の試し読みとしてもぜひ。

「さよなら、スチールヘッド」

永遠の夏が続く仮想世界〈アイデス〉。そこに暮らす人工知性のエドは生身の肉体を持たない意識だけの存在だが、あり得ないはずの吐き気に悩まされていた。オーナーの元を離れ、同様の問題を抱えた人工知性たちとともに治療キャンプに参加した彼は、やがて毎夜同じ夢を見るようになる。動く死体《ウォーカー》に埋め尽くされた、荒廃した世界の夢。二つの世界は徐々に交わり始めるのだが…

4編の中で唯一の書き下ろし作品ですが、元々は第11回創元SF短編賞の最終候補作です。今回、大幅に改稿を行なったので、当時とはだいぶ異なった姿になっていますが……。受賞こそ逃したものの、自分が本格的にSF作家を目指すきっかけとなった作品でもあり、大きく書き直して収録することにしました。なお、仮想世界の名前がアイデスなのは、私がブローティガン大好き人間だからです。

「影たちのいたところ」

八月、夕暮れ。南イタリアの寂れた島で暮らす父のもとで退屈な夏休みを過ごしていたソフィアは、九つの影を持つ少年に出会う。自らの意志で動く生きた影たちは、海の向こうの国で居場所を追われ、逃げてきたのだという。ソフィアは影の運び屋を名乗るその少年を助けることを決意するが、彼らを狙う〈影狩り〉たちの手が徐々に迫りつつあった。

「紙魚の手帖 vol.3」(東京創元社、2022)に掲載された受賞第一作となる短編。EUから離脱したイタリアを舞台とした、ジュブナイル色の強い冒険ファンタジーです。収録作の中だと一番爽やかで真っ直ぐな作品かもしれません。(他が鬱屈としすぎなのでは…?)。射手座を書いた時がかなりガチガチに緊張していたので、2作目はもっとリラックスして自然体で書くぞ!と思った記憶。それが良かったのか、本作が一番好きだと言ってもらえることも多いです。

以上、収録作のあらすじでした。
私自身がまあまあSF初心者ということもあり、あまりSFを読んだことがない方にも楽しんでいただけるのではないかと思います。逆に!

というわけで、短編集発売のお知らせでした。
この先の予定はあんまり決まっていないのですが、長かった単行本の作業が終わって色々とスッキリした気持ちになっているので、またドシドシ本を読んでバリバリ書いていこうかと。
お仕事の依頼もお待ちしております!
(ご連絡はRin_Matsuki1993@outlook.jpまで)
それでは〜〜。

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