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内憂外患を招くもの

 江戸時代についての本を読んでいると、江戸後期の世相と現代日本のそれとが非常に似通っていることに驚かされる。
 ふたつの時代の類似点は、「政権の動揺」と「異国の脅威」である。しかも、これらの内憂外患に対し、対策が後手後手に回っているのも共通している。
 この内憂外患を誘発しているものは、政治を担う者たちの利己的な縄張り争いに他ならない。嵐の襲来が予見されているのにも関わらず、家の中では兄弟喧嘩が絶えない。
 現代日本の政界において、『論語』でいう「小人は利にさとる」的な為政者が、あまりに幅を効かせてはいないか。まさに、代議士は倒るる所に土を掴め。それは「政治屋稼業」の面目躍如ともいえるよう。
 権力を持ち続けると人は堕落だらくする。その象徴は権力を継承する“世襲議員”の存在だ。
 日本国民は政治に政治に参加しているだろうか。政治がひと握りの一族の私物と化してはいないか。政治を私物化する世襲議員が政権の中枢に居座っていては、近い将来、この国は立ち行かなくなるだろう。
  澱む水は腐敗する。
 今こそ日本の政界に膠着こびりついた水垢を洗い落とし、新鮮なる泉水を注ぎ入れるときではないか。
 しかし政界の蘇生手段として、「選挙」を安直に頼るのは宜しくない。なぜなら、泉水の中に無色透明を装う“汚水”が何食わぬ顔して紛れ込むからだ。これらの汚水に、有権者は何度裏切られたことか。選挙制度そのものが“小悪党”の金儲けの手段に悪用されている。
 この国の政治の質を向上させるには現行の制度では、どうも心許ない。この期に及んでは国体を覆すほどの荒療治を実行するしかあるまい。
 だが、現状維持を好む“革命嫌い”の国民性はそれを望まない。何とももどかしい限りだ。(了)

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