見出し画像

おたりスマートソンプロジェクトを振り返る Vol.1

アイデアコンテストから産官学連携へ

※ 本ページは研究室教員松井の視点から書かれています。

本プロジェクトの面白い点は、アイデアコンテストから実証実験につながった点にあると思います。現在、多くのテクノロジーに関連するアイデアコンテストやハッカソンのようにプロトタイプまで作り上げよう、というタイプのコンテストなど、様々な学生向けのコンテストが存在しています。

今回は東京電機大学卒業生の西垣さん、河西さんが京セラコミュニケーションシステム(KCCS、敬称略)主催の、Sigfoxを使ったIoTアイデアコンテスト2019でプロトタイプ部門優秀賞をいただいたことから始まりました。

最近は起業までサポートするタイプのコンテストも存在しますが、ふたりが参加されたコンテストは第1回目であったこともあり、受賞後の展開は本人も知らなかったとのことですが、コンテスト終了後、2019年4月に京セラグループ KCCSモバイルエンジニアリング(KCME、敬称略)から、以下のようなご連絡をいただきました。

KCMEは小谷村と2019年3月に包括連携協定を結んでおり、Sigfoxの利用したアプリケーションやシステムを取り入れた場合、どのような利便性が生まれるのかを検証されたいという意向があり、棚田で稲作をされている方々がいらっしゃる小谷村さんとお話した結果、本アイデアに白羽の矢が立ったとのことでした。

このお話を受け、おたりスマートソンは開始していくことになりました。ただ、アイデアコンテストから実証実験の実施は、結果から申し上げるとかなり大変でした。理由は、

・アイデアの段階である程度練り上げたものであっても、(当たり前ですが)実現するにはその何十倍の作業が必要なこと

・プロトタイプはあくまでプロトタイプ、実証実験で室外に設置して動く耐久性を兼ね備えたハードウェア、ユーザに使用してもらうソフトウェアを稲作中に作り上げなくてはならなかったこと

理由を挙げたらきりはないのですが、これらの「できない」と言える理由があった中、「やります」、といった、このプロジェクトのリーダーである河西さん、西垣さんには頭が下がります。

画像1

太陽光発電の土台加工の様子

格安スマート水田でIoT導入を手軽に実現

では、ふたりのアイデアがどのようなものであったのかをご紹介しますと、

課題:兼業稲作農家の方にとって、稲の育成時期における水管理は何度も水田の見回りを実施する必要がある

解決策:見回りを行うことで稲の育成状況は目で見て確認したい、という農家の方々のご要望を叶えるために、水位の状況のみをセンサデータからモニタリングできるようにする

サービス化:Sigfox対応水位計測センサ+センサデータの見える化ソフトウェア・Webアプリケーションを提供。Webアプリケーションからは、水位情報を提供し、水田に行くか行かないかの判断材料を見える化することで、省力化を目指す

画像3

サービス概要図

農業IoTはIoT技術の広がりのアプリケーションレイヤとして、多くの研究室やサービス化がなされている分野です。稲作における水管理、環境データ収集ではPaddy Watchが有名ですし、河西さんを中心に企業さまにヒアリングさせていただくなど、様々なサーベイを行いました。

画像3

小谷村の美しい棚田の様子

本実証実験では、あくまで小谷村での稲作の特徴、「兼業農家の方向け、彼らの省力化を既に整備済みのSigfoxを利用することで低コストで実現する」、「棚田という地形は見回りに難しいため、見回り回数を減らす、もしくは必要な見回りのタイミングの情報伝達を実現する」ことに特化しました。

アイデアコンテストから新しい展開を期待して

少しお話が逸れますが、アイデアコンテンストを実施して終わり、というのは主催者側の方の負担が大きいね、というお話がありました(研究者が運営に参加している、学会の研究会主催のアイデアコンテストも多数あります)。

今回は、KCMEさまがプロトタイプしか存在していない時点で私たちとプロジェクトを組んでくださるとご決断くださり(ある意味投資)、また実証実験まで道筋を作り、長きに渡って多大なサポートをしてくださったことがきっかけで、その後の発展につながりました。

KCMEさまには、産学連携のひとつのケースを作ってくだださったと思っています。つまりは、

企業側からは産学連携を行う際にコンテストを通じて、多数の大学との繋がりを持つ(ここが一番メリットが大きいかと
・=これまでのつながりや大学の知名度に関わらず、幅広いアイデア、人脈に触れる機会を持っていただく

大学側からは研究テーマを知っていただく、かつ連携につなげる機会をいただく
・=実証実験のご協力者さまとのつながり、社会実装への道筋を作る。何より学生の方々に社会との接点を多く持っていただける(企業へのインターンが普及している今、大学側から研究へのモチベーションキープや企業や行政とのやり取りを経験として積極的に提供することの必要性

というお互いにとってのメリットにつながるケースを提示いただいた、と深く感謝しております。

Vol.1では、アイデアコンテストからプロジェクトに発展した点をお伝えいたしました。次のnoteからは、プロジェクトについてご紹介させていただきます。

今年のSigfoxを使ったIoTアイデアコンテストの結果はこちらから。



研究に関わる全てのご協力者さま方、何より研究に取り組んでいる学生、研究者の方々に♡をいただければ嬉しいです。