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[2024/06/22] ウォノソボライフ(75):生活のドレスコード~老若男女のファッションから~(神道有子)

~『よりどりインドネシア』第168号(2024年6月22日発行)所収~

今年も無事に年度末を迎え、あちこちで卒業セレモニーのために綺麗に着飾った学生さんたちを見る季節となりました。進級する児童生徒は成績表を受け取り、約1ヵ月ほどの長期休みに入ります。少し前からサラサラした乾季の空気が定着し、朝晩は冷え込む涼しい季節になりつつあります。過ごしやすい休暇の季節です。

インドネシアの卒業式では、欧米で使われるような長いガウンにつばの四角いキャップが着用されます。トガ服(baju toga)と呼ばれ、まさに今しか見られない風物詩です。

ウォノソボにあるサインス・アルクルアン大学(Universitas Sains Al Quran、通称UNSIQ)の卒業式の様子。出典: https://unsiq.ac.id/berita/36/UNSIQ-JATENG-DI-WONOSOBO-WISUDA-708-MAHASISWA

本人にとってはこれまでの研鑽の成果を表すものであり、親にとっては子育ての一区切りを実感する感慨深い衣装です。

このトガ服を見かける頃には、市場では学校の制服を盛大に売り始めます。インドネシアでは小学生から制服が指定されており、来月の入学に向けて制服の購入が始まる時期でもあるからです。

せっかくなので、今回はここで生活するうえで持っていなくてはならない服、よく使う服などについてまとめたいと思います。


学校の制服

上述の通り、小学校から公立私立問わず制服の着用が基本です。小学生の場合は男女共に上が白いシャツに赤いネクタイ、下が赤いズボンかスカートです。男子は赤いキャップ、女子は白いヒジャブを被ります。以前は半袖半ズボン、もしくは膝丈スカートでしたが、ウォノソボでは長袖長ズボン、ロングスカートが主流になりました。おそらく、ヒジャブを着用必須にした場合、足の出る膝丈スカートは矛盾するので(イスラムの教えに従って髪を隠す場合、肌もきっちり隠す服装をするというのが常識)、長袖とロングスカートを着用せざるを得ず、男子もそれに合わせて長袖長ズボンで揃える学校が増えたのだと思います。ヒジャブはノンムスリムの場合は免除されますが、やはり長袖ロングスカートになります。ミッション系の学校などでは半袖半ズボン・膝丈スカートは健在ですが、市販のそれを探すのは難しくなっています。

学校ごとに独自の制服を作っている場合も多く、月曜日は全国共通の白シャツに赤のズボン、火曜日は学校独自の制服(チェック生地など)、と曜日ごとに使い分けをします。

また、ウォノソボでは2022年から、毎週木曜日はジャワの伝統的衣装を着用して登校する学校が増えました。これは、当時スマランで開催された『1000のクバヤの祭典』というイベントにて中部ジャワ州知事のガンジャル氏が「毎週木曜日はみんなで伝統衣装を着よう」と呼びかけたことが発端です。制服として必須ものにすることで、伝統衣装産業の活性化を目指したもののようでした。中部ジャワの他の県でもこうした動きはあったのではないかと思います。

伝統衣装といっても、インドネシアには多様な地域独自の衣装がありますが、この場合はジャワの伝統衣装限定です。バリ人の児童でもスマトラ出身の生徒でも、ジャワの衣装を着用します。男子はスルジャン(Surjan)と呼ばれる織物のジャケット、女子はクバヤ(kebaya)という前開きのシャツであることが多いようです。

また、木曜日は伝統衣装、という発想自体が、それ以前からあった『金曜日はバティック着用』のルールを真似たものではないかと考えられます。2009年、インドネシアの伝統的なろうけつ染めであるバティックがユネスコで無形文化遺産として登録されて以降、政府は会社や学校で毎週金曜日にバティック着用することを推奨しています。

現在、多くの学校がこれに倣い、毎週金曜日にバティック登校するようになっています。それぞれが手持ちのバティックシャツを用いることもあれば、学校やクラスがお揃いのバティックシャツを注文して購入することもあります。本来、バティックは製造形態により値段が大幅に変わります。一つ一つ手描きのものが最も高価で、次いでスタンプを利用してのマニュアル作業での製品、そして工場で大量生産されるプリントと呼ばれる生地が最も安価なものとなります。学校の制服として購入されるものは安価なプリント生地のものであることがほとんどです。

さらに、インドネシアの学校で欠かせないものがボーイスカウト、ガールスカウトの制服です。インドネシアはボーイスカウト数が世界一と言われており、学校でボーイスカウト教育を行うことが義務化されています。そのため小学校1年生から、週に一回はボーイスカウト活動があります。

ボーイスカウト、ガールスカウトは年齢あるいは学年によってグループ分けがされています。それぞれに異なる制服がありますが、いずれも男女ともに上が薄茶色基調のシャツ、下が焦げ茶のズボンあるいはスカート。さらに赤と白のバンダナをネクタイのように襟元に巻きます。ムスリム女子の場合は茶色いヒジャブ着用です。帽子も各グループと男女ごとに形が異なりますが、焦げ茶を基調としたものをかぶります。

このように、子供を一週間学校にやるだけでも、曜日ごとの学校制服、ボーイスカウト制服、伝統衣装、バティックシャツが必要になります。靴は基本的に黒のもののみ。また靴下も学校制服とボーイスカウトでそれぞれ指定のものがあります。また体育の授業には指定の体操服もあります。

幼稚園は園ごとに制服があります。インドネシアでは、多くは幼稚園が就学前の2年間となっており、最近はそれ以前のプレスクールもあります。経済状況などにより、プレスクールからしっかり通わせる家庭、就学前の1年だけ通わせる家庭、全くプレスクールも幼稚園も行かずに小学校入学となる家庭など様々です。

中学校は、上は小学校のような白いシャツですが、下が紺色のズボンあるいはスカート、そして同じ紺色のネクタイとなります。こちらも長袖長ズボンまたはロングスカートが主流です。

同じように曜日ごとに独自の制服があったり、バティック登校の日やボーイスカウト服の日があります。

高校はやはり上は白シャツ、下はベビーブルーというのか、青みがかった灰色というのか、小中に比べたら落ち着いた雰囲気のズボンとロングスカートです。

基本的には小学校から高校まで、シャツにズボンかスカートというスタイルです。

大学は普段は私服ですが、大学ごとに揃いのジャケットがあることが多いようです。

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