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日本初の陸上クラブ運営会社、新潟アルビレックスランニングクラブ(#1/2)

株式会社新潟アルビレックスランニングクラブは、日本で初めての陸上競技クラブ運営会社として2005年に設立されました。「企業スポーツ」が主流の日本陸上界では珍しい地域密着型の運営方式で、地元の行政、企業、各協会や個人から支援を受け、自主事業を確立させて運営されています。

日本陸上界を取り巻く「企業スポーツ」という環境のなかで、新潟アルビレックスランニングクラブがどのようにしてクラブをビジネスとして保持させて、どんな価値を地域にもたらしているのかを調べてみました。

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実業団制度

新潟アルビレックスランニングクラブのような形態の陸上クラブは、現時点でも追随して出てきていないと思われます。そもそも、日本の陸上競技クラブがどういった構成になっているのかから見ていきたいと思います。

日本の陸上競技は、ずばり実業団(企業スポーツ)で成り立っています。

実業団とは企業や組合の従業員で構成されるスポーツチームで、選手は基本的にその企業の正社員です。戦後、企業によるスポーツ施設の整備費が福利厚生として法人税の控除対象になったこともあり、練習や試合設備を用意し選手の待遇を保証した実業団が急速に発展していきました。企業側も、右上がりの経済発展の中で、実業団スポーツの振興が企業宣伝や人材育成に有用と考え、資金が投入されました。

ただし、平成に入る時代から実業団は衰退していきました。昭和末期以降にプロスポーツ化が進み、通信技術の発達により実業団スポーツへの注目度が相対的に薄れ、加えて、バブル崩壊による企業の縮退傾向は経営資源の選択と集中へと向かわせ、十分な費用対効果を生み出せないと判断された実業団は次々と整理の対象とされました。

現在は存在しない、昭和期スポーツを支えた実業団リーグとして、日本サッカーリーグ、日本アイスホッケーリーグ、バスケットボール日本リーグなどがあります。

陸上競技は、こういった時代背景のなかで生き残った実業団種目となります。なかでも長距離走は駅伝の影響が強く、実業団と実業団大会への指向が強められました。駅伝競走というガラパゴス化した競技形態への依存を強めているとも言えます。

大企業が選手を社員としてチームを成立させ、リーグ組織や興行的な競技会がほぼなく、そもそもクラブが稼ぐ必要のない陸上競技。そんななかで、新潟アルビレックスランニングクラブは、日本で初めて地域密着型の運営方式で陸上競技クラブの運営会社として設立されました。つまり、ランニングクラブ自体が企業ということになります。

新潟アルビレックスランニングクラブ

新潟アルビレックスランニングクラブの「思い」として、HPに以下のように記されています。

スポーツを通じて沢山の夢と感動を与えるだけでなく、日本で初めての地域密着型ランニングクラブとして地域の元気と健康のために活動していきます。

陸上競技のチーム組織として特徴的な実業団では、「地域の元気と健康のために」という文脈はなかなか出てこないかと思います。出てきたとしても、それを事業の中心に据えることはありません。あくまで各企業(本業=事業)の社員だからです。むしろこの文章はJリーグクラブに近いものです。

本題からは逸れますが「新潟アルビレックス」について補足しておきます。新潟アルビレックスを掲げるチームは以下の通り存在します。

新潟アルビレックス(Jリーグ)
アルビレックス新潟レディース(WEリーグ)
新潟アルビレックスBB(Bリーグ)
新潟アルビレックスBBラビッツ(バスケットボール女子日本リーグ)
チームアルビレックス新潟(スキー、スノーボード)
新潟アルビレックス・ベースボール・クラブ(独立リーグ)
アルビレックスレーシングチーム(モータースポーツ)
新潟アルビレックスランニングクラブ(陸上競技)

各「アルビレックス」はイメージカラーを共有していますが、各競技チームの運営会社は全く別個の企業であり、各運営会社間に直接の資本関係等はありません。陸上競技も完全に単独の組織として事業を成立させているのです。

日本陸上競技を取り巻く実業団制度、そして新潟アルビレックスランニングクラブの外枠まで確認してきました。次回、陸上競技をどのようにして事業として成り立たせているのかについて、記していきたいと思います。

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▼地域スポーツ事業の実施事例を調べて記事にしているマガジンです。



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