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箱根駅伝の”胸スポンサー”について

2024年箱根駅伝の一覧を更新しました(2024年1月4日)

*以下、2022年に書いた内容です*

世界陸連でユニフォームの広告規定が改訂されたのが2019年12月。日本国内での適用は2020年3月から。

改訂前、ユニフォームに表示できたのは2項目でした。①所属名(学校名)②ユニフォームメーカー名です。改定後はここに、③スポンサー名(商品・サービス名)が追加されました。ユニフォーム上下で別表記はNG、1か所ずつ、40㎠以内、高さ5㎝以内という規定になっています。

この改訂から箱根駅伝は2回開催され、大学名、メーカー名と並んでスポンサー名を表示するユニフォームが増えてきました(2021年:13校、2022年:15校)。

箱根駅伝自体にスポンサードするのではなく、大学陸上部(駅伝部)にスポンサードするという新しい形。そして、モンスターコンテンツである箱根駅伝。新しい仕組みがどういった価値をもたらすのか。箱根駅伝での広告効果や、それに対する協賛金がいくらか、という視点ではなく、各大学×協賛社の取り組みや締結意図の個別具体について、見ていこうと思います。

中央大学×Regain

ストーリーが一番綺麗だと思ったのは、中央大学。古豪と言われながら、この10年間は箱根駅伝でシード圏内(10位)にも入れていませんでした。

この中央大学が2022年箱根駅伝に向け、初めて結んだユニフォームスポンサーが「Regain」です(厳密には通販会社のアイム)。古豪復活と「Re(再び) +gain(獲得する)」のブランドコンセプトが合致し、締結に至ったというリリースでした。

締結は11月5日、その3日後の「全日本大学駅伝」で初めて、スポンサーロゴ入りのユニフォームが着用されました。そして、そこで10年ぶりにシード圏を獲得するのです(Re-gain!)。その2ヵ月後の、いわゆる”本番”である箱根駅伝も、10年ぶりにシード権を獲得(Re-gain!!)!小説のようなストーリーでした。

中央大学は、予選会を通過しないと箱根駅伝には出られないチームでした(シード権をもっていないので)。今年の予選会は10月23日だったので、ここで本選出場が決定することが、契約を締結する条件だったのではないかと思います。

やはり「箱根駅伝」は特別で、そこでの露出や話題性を狙ってのユニフォームスポンサーが根底にあると思います。逆に言うと、シード権を獲得しているチームは年中スポンサー営業(もしくはオファー)がしやすいですが、どんなに強いチームでもシード権を獲得していなければ、10月で本線出場が決まるまでは締結をしにくいということになります。
※箱根以外の価値については、今回考えないことにします。

ちなみに、中央大学陸上競技部のHPには、目立つ位置に「Regain」のロゴバナーが貼ってありました。余談ですが、その隣にマッサージ器メーカーの「NEOHEALER(ネオヒーラー)」のロゴもありました。

帝京大学×フランスベッド

帝京大学も今年初めてのユニフォームスポンサーで、「フランスベッド」と10月に締結をしていました。出雲(10月)、全日本(11月)、箱根(1月)での着用と記載されており、やはり「三大駅伝」での露出に価値を見出していることがわかります。

締結の内容は「寝具を提供し、主にアスリートが快適な睡眠を得るための分析を帝京大学と共同で行う予定です」とあります。単純な宣伝広告だけではなく、アスリートに快適な寝具を提供することでコンディショニングをサポートし、そのフィードバックを得ることで製品に反映したりデータとして蓄積する。

このリリース自体は12月のため、今後実施されることになるのだと思いますが、「共同研究」的な締結は他大学のユニフォームスポンサーでは事例がないため、今後に注目したいところです。

法政大学×SENOBIRU

法政大学は、2021年に「郵生」をスポンサーロゴとして掲出しました。長年大学陸上部を支援していたということで、その恩返しにスポンサー料金が発生していなかったとのこと。

2年目となる今年は「SENOBIRU(セノビル)」のロゴが掲出されました(株式会社エメトレ)。「世界で戦うアスリートを増やせ」をブランドビジョンに掲げサプリメントを開発しており、プロスポーツチームやスクール・アカデミー、ジュニアクラブチームへ多くスポンサードしており、100mハードル日本記録保持者の寺田明日香が応援サポーターとなっています。

法政大学は、今年の箱根駅伝で10区(アンカー)の土壇場で東海大を抜いて逆転し、10位のシード権を獲得しました。抜かれてしまった東海大学は11位でシード圏外。ユニフォームスポンサーは「inゼリー」(森永製菓)でした。

青山学院大学×妙高市

ユニフォームスポンサーに自治体を掲出しているのは3校でした。うち2校は所在地を掲載(順天堂→印西市、中央学院→我孫子市)。それに対して、近年の学生駅伝を引っ張っている青山学院大学は、2年連続での「妙高市」(新潟県)です。

妙高市は、青山学院大学が毎年夏合宿を行っている場所です。「もっといいオファーもあった」とのことですが、「お世話になっている地をスポーツで創生したい」という想いで締結しているようです。

さらに妙高市は、ふるさと納税クラファンでスポンサー料を募集するという方法まで取り入れました。

これ自体は仕組みが複雑で(誰が何のために納税しているのか)、目標の240万円に対して84万円程度だったようですし、実際のスポンサー料金がどのくらいかもわかりません。ただ、青山学院大学も実際のユニフォームスポンサー掲出以外でもメディア露出の際に「妙高市」をPRしていますし、「話題性」という意味で年に1回の箱根駅伝だけに留まらないうまい使い方(使われ方)をしていると思います。

國學院大學×スボルメ

ここまで「ユニフォームスポンサー」について見てきましたが、ユニフォームメーカーについても、いくつか触れておきたいと思います。

今さら気づいたのですが、國學院大學のユニフォームサプライヤーは「スボルメ」だったのですね。陸上界ではまったく聞かないメーカーですが、2019年から契約しています。

スボルメは立ち上げてまだ16年のブランドで、社長の渡邊さんは國學院大學の前田監督と同じ43歳です。さらに、國學院大學出身でもあります。そんな共通点もひとつのきっかけではあると思いますが、純粋にウェアの質がいいという話も。

デザインだけではなく質で勝負する新興ブランドと、大学駅伝界では若い前田監督の下でここ数年シード権が定着し、上位進出もしてきた國學院大學陸上部。すでに契約開始から3年目に入っていますが、今後のストーリーにも期待して注目したいと思います。

また、今年度は順天堂大学がデサントからニューバランスに変更しました。箱根駅伝出場20校の内訳は以下の通りです。

・ミズノ:6校
・アシックス:5校
・ナイキ4校
・アディダス:2校
・スボルメ:1校
・ニューバランス:1校
・オークリー:1校

箱根駅伝初出場で話題となった駿河台大学は、オークリーでした。ちゃんと調べてませんが、オークリーウェアのチームが箱根駅伝を走るのは初めてではないでしょうか?

東洋大学×健康ミネラル麦茶

今回のスポンサーロゴ解禁が、陸上競技活用のきっかけとして多くの事例を生み出し、今後も生み出されていくと思いますが、健康ミネラル麦茶(伊藤園)は、それ以前の2018年から東洋大学をサポートしており、共同イベントも実施してきました。その流れでユニフォームスポンサー解禁初年度から2年連続で掲出となりました。

学生スポーツである箱根駅伝でのスポンサーロゴ解禁は、スポーツが多くの価値を享受し、そして生み出せることについて、今一度考えるきっかけになるかもしれません。

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