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観光産業の町で人口の半数の会員数をもつ総合型地域スポーツクラブ

総合型地域スポーツクラブ(以下、総合型クラブ)は、“地域住民の誰もがスポーツに親しむことができる社会の形成”を目指し、1990年半ばから導入され始めたものです。現状、3,500ほどのクラブが全国各地で立ち上がっていますが、実情として上記の目標を達成しているとは言い難いものも多く、主に経営面で課題を抱えているケースが多いです。

そんななか、琴平町(ことひらちょう)の総合型クラブである「ヴィスポことひら」は、人口約8,300人の町に対して会員が4,000人、そして連日1,000人ほどの利用者がいるという驚異的なクラブです。公式HPを開くと「初めてのワタシもココなら1人でも安心。入会キャンペーン」と大きく記載があり、女性が走っている画やトレーニングバイクの写真。これが総合型クラブのトップページだと言われ違和感を感じる僕は、すでに考えが凝り固まっているのかもしれません。

この小さな町で、ヴィスポことひらが総合型クラブの目的を達成するために、どのような道筋をたどり、そして運営されているのか、調べてみました。

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神宮と“うどん”の町

琴平町は、47都道府県のなかで一番面積の小さい香川県の内陸部に位置しており、町の西側が標高524mの象頭山の山裾に沿っています。この象頭山にある「金刀比羅宮」は中世を起源としており、現在も町の観光資源の中心です。琴平(ことひら)町の情報を集めていると、いたるところに「こんぴら」が出てきますが、中世から続く由緒あるこのフレーズは地名:金毘羅村として明治初期まで使われていました。それが琴平村に改称され、現在に至ります。

もうひとつの名物は、全国的に有名な「讃岐うどん」です。空海により唐から伝えられたといわれるうどん。その空海は讃岐(現在の香川)を故郷としており、金刀比羅宮へ参詣に来た人々によって、うどんが全国に伝えられたと言われています。

地域住民の“いこいの場”をつくる

このように、歴史ある資源や産業を中心に観光が発達している琴平町において、スポーツは発展しにくいものだったようです。1990年代まで琴平町内にはスポーツ施設が一か所もなく、小中学校の施設を時間外に利用するのが日常的であり、住民がいこいの場としてくつろぐ場所もありませんでした。この状態を脱するべく1995年から始まった事業が「いこいの郷づくり事業(総合運動公園建設事業)」です。

地権者との交渉を経て、工事が始まったのは1999年。多目的グラウンド、こどもの広場、展望広場、ゲートボール場、芝生広場などを有する総合運動公園が建設されました。2000年には「かたらいの森」が整備され、2004年には体育館(愛称:ヴィスポ)がオープン。同時にテニスコートも設置され、駐車場300台、全面積が15.5ha(東京ドーム3個分)という広大な「いこいの郷公園」が完成しました。

いこいの郷公園は、琴平町の中心市街地から徒歩で通える位置にあり、民間企業からソフトや人材の提供を受けた公設民営(PPP)が取り入れられました。

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