宝くじを買うのは本当に「馬鹿」なのか

私は大学で「行動経済学」を学んだ。

行動経済学とは、人間の行動心理学とそれが経済にどう影響をもたらすのかという、言わば「経済×心理」のような学問だ。

その代表的な話として、宝くじがある。

資産は安全な形で保有する、万が一にそなえて保険に加入する。ここまで安全志向の人間が宝くじを買う理由は長い間謎であったらしい。

さて、人間は(もしかしたら、あなたは)なぜ宝くじを買ってしまうのだろうか。実はこれには明確な答えが出ている。

人間は確率の計算が苦手なのだ。

宝くじに当たるような僅少な確率を、正しく頭の中で捉えることができない。例を見てみよう。

皆さんの目の前に宝くじを買った二人の男がいます。その宝くじは5桁の数字を当てるものです。1人の男性は数字を「62984」と予想し、もう1人の男性は「00000」と予想した。どちらの男性がより当たりそうに感じますか?

もちろん答えはどちらも同じ確率である。しかし大事なのは、後者がなぜか当たらなそうに見えてしまうこと。頭の良いみなさんならすぐ計算できてしまうが、理論は今どうでも良い。直感で、確率に差があるように感じてしまうことが重要だ。

行動経済学において、理論的に選択するべきでない選択肢を選んでしまう現象を、「不合理行動」といい、確率の把握を直感に任せると、不合理な行動がかなり起きやすくなる。

宝くじはまさにその代表だ。宝くじが当たる確率をうまく頭の中で処理できないため、「自分は当たる気がする」という錯覚を起こし、宝くじ購入という不合理な行動を起こす。

さて、ここからが私の意見。期待値から考えて、宝くじを購入すれば損をすると言うことはわかっている。宝くじを購入してしまうのは馬鹿なのだろうか。

人間が確率を上手く把握できないことは科学的根拠をもとに間違いない。
それにより不合理な行動を連発してしまうこともわかっている。

その行動自体を馬鹿だと批判してしまうのはあまりに野暮である。

宝くじを買うのが不合理であることは間違いない。しかし、それが人間なのだ。

人間は不合理行動を繰り返す。宝くじはあくまでその1例で、わたしもあなたも、日々客観的には不合理な行動を行っている。

その人間の本質を否定してはならない。あなたが不合理行動を一切起こさない神でもなければ。

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