松田法子研究室

建築史・都市史・領域史。京都府立大学。建築や都市と、大地との関係を考える。 「地-質か…

松田法子研究室

建築史・都市史・領域史。京都府立大学。建築や都市と、大地との関係を考える。 「地-質からみる都市と集落」「汀の人文史」などをテーマに活動中。近年は紀伊半島海付集落のフィールドワークが多めです。 http://www.matsuda-lab.net/index.php

最近の記事

Water Calling -イザベル・ダエロンさんのゲストレクチャー-

2024年5月27日、公共空間の環境とそこでの課題をテーマに活動するフランスの都市・空間・リサーチデザイナー、イザベル・ダエロン(Isabelle Daëron)さんのゲストレクチャーを開催しました。 イザベルさんのリサーチとデザインの特徴は、随所にカラフルなドローイングを用いることですが、プロジェクトのフェーズごとにドローイングがどのような役割を持っているかがよく分かるレクチャーとなりました。 イザベルさんのドローイングは、しかしそれ自体が作品というものではなく、自然科

    • 京都と水/その4

      京の黒染め ー柳の水と馬場染工業の挑戦ー 烏丸通と堀川通の間にある西洞院通には、元々、川が流れていました。そのため西洞院通はまわりよりも少し低くなっていて、碁盤目状の京のまちなかに、小さな谷筋をつくりだしています。 宝暦12(1762)年に刊行された『京町鑑』には、「この通りは山城(京都がある山城国のこと)の谷川で、この川の東西の地形は高い。西洞院通よりも西の地区を川西という。蛸薬師を下ったあたりから町の真ん中に川があらわれる。その流水は染め物にたいへんよく、よって衣服を

      • 京都と水/その3

        深泥池 —都と山地の境にある最終氷期の湿原—  京都盆地の北の端。五山送り火の「妙法」が灯される松ヶ崎の西山と、上賀茂神社のほうから伸びる小山がぶつかり合う低地に、深泥池はあります。「みぞろがいけ」とも、「みどろがいけ」とも呼ばれます。 みどろ・みぞろ、という響きに、北山の入口で山影の地という、暗く、湿っぽいイメージ。京都の大学生などには、怪談話のある地名として、よく知られているかもしれません。 深泥池にまつわる怪。あるいは畏れには、歴史があります。平安時代の歌人・和泉

        • 京都と水/その2

          吉田山 ー孤立丘の山水池ー 東山から切り離されたような格好の丘、吉田山。 活断層である花折断層の長年の活動によって隆起し、形成された丘だそうです。古い名前は神楽岡。 吉田山の西側斜面に鎮座する吉田神社は、奈良の春日大社の四神を藤原氏が平安京へ勧請した社で、現在地には15世紀後期に遷座したそうです。 2月3日の節分祭が有名で、その時にはたくさんの参拝者で賑わいます。 初詣のお客さんが一段落した頃のこの日。境内の階段を上がっていくと、本宮の反対側に目当ての池がありました。龍

        Water Calling -イザベル・ダエロンさんのゲストレクチャー-

          京都と水/その1

          嵯峨 ー愛宕山南麓の水景ー この秋冬、ゼミメンバー+αで京都の水をめぐるリサーチツアーを行いました。その様子について書いていこうと思います。 お正月明けに訪れたのは、嵯峨野の水辺。大学からは片道10km。金閣寺・龍安寺・仁和寺の門前を走り抜け、自転車で1時間くらいです。 京都盆地の北部は、北山の山裾にいろいろな水辺スポットがあります。 嵯峨野は竹林のイメージが強いですが、山裾には水辺景観が点在しています。嵯峨野から北に山を入っていくと愛宕山に至ります。東の比叡山に並ぶ西の

          京都と水/その1