人間の集団について 2023夏
自分の人生観・社会観・SNS観に影響を及ぼしている『人間の集団について』という本がある。
『われわれは人間の集団を生物の次元で考えねばならない時代にきている。…いまとなっては、逆に人間の状況を破壊から救いだす唯一の拠点ともいえるかもしれない。』(文庫版76-77ページより)
『人間は孤立しては棲めない生物でもある。…都市生活はときに個々に孤立に似た状態を強いる。それに堪えられなくなったとき、たとえ短時間でも激しく群れたがる。』(文庫版75ページより)
という人間の習性について、生前の司馬遼太郎氏がベトナムを取材旅行した際の体験をもとに書いている。
これがまたヘタな(?)旅行ガイドブックより知的好奇心を刺激してくる、しかも歴史小説の分野で有名な文豪が手掛けたという珍奇な本である。
『坂の上の雲』のドラマに衝撃を受けてから司馬作品に手を出していく中で初めて読んでからもう10年近くになるだろうか。
今でも時々この本のことを思い出す。
他人に薦めてみたい本の一冊でもある。
新型コロナウイルスのパンデミックが始まってから3年経過し、世界中が『ウィズコロナ』に移行する中で、自分は在福FM局のイベントにも時々参加してみることにした。
SNSなどで皆さんの面白おかしいコメントや番組・楽曲の感想を拝読したりする中で、リスナーの皆さんの日常生活や人生の一端をうかがい知るようになり、どんな方が『常連』なのだろうか、と関心を持つようになった。
ラジオ番組の繋がりで集まる『人間の集団』に興味が湧いた、というのもある。
ラジオ番組は、テレビや映画よりも双方向性があり、放送局とリスナーの間の関係性が強まりやすい傾向がある。
その一方で例えば極右勢力や詐欺集団などの『反社会勢力』がスポンサーとなる場合もあり、要注意である。メディア大国のアメリカ合衆国の場合も以前このような事例があり(町山智浩氏の『未公開映画を見るテレビ』でも紹介されていた)、日本の場合はCROSS FMの以前のスポンサーがDHCだったことやかつて福岡市にあったFM Mimi(閉局)が投資詐欺グループに支配されたことがある。
それは別として、いちリスナーとしての自分は、皆さんが番組を楽しみ、イベントにも参加してイベントを楽しみ、DJの皆さんやスタッフの皆さん、放送局を支援していき、より良い世の中作りのために役立てていければいい、という感覚で聴いている。
リスナーの間だとSNSでの繋がりもできたり現実の世界での繋がりもできることがあるが、SNSも現実社会の写し鏡。
縁がなかったり繋がりを制限したり、ということもある。
それは皆さんの信条や生活スタイルの問題であり、各々の意思を尊重し皆さんにとって楽しいラジオライフに役立つような雰囲気作りが最も大事なことである。
いくつかイベントに顔を出し、DJの皆さんやリスナーの皆さんを拝見するうちに、生身の人間の集団というものについても頭の片隅で折に触れて考えるようになってきた。
生身の人間の集団が現代文明社会の基礎であり、それぞれの異なる思想信条・生活スタイル・人生観を大切にすることから民主制や資本主義社会というものも始まるのではないか、と思う。
果たして、X(ツイッター)で長いこと論壇(などというものがあるか疑わしく思うこともあるが)に立ってきているみなさんが、生身の人々の心を動かせてきたのだろうか。
以前自分も世の中の観察や思考整理の場として出入りしていたXの『政治クラスタ』というムラ社会に集う皆さんを折にふれて観察するうちに、彼等が、そして時には自分自身も人間の集団という『生物の次元』から価値観を組み直した方がいいんじゃないかと思わされることが、5年ほど前にリセットして出直した時よりも多くなっている。
※2017年にブログ(休止中)にも『人間の集団について』について書いてます
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