視座を上げるにはどうしたらいいか?
「視座を上げる」。ビジネスマンならよく聞く言葉だと思います。1つ上の視座を手に入れると、以前よりも全体観を持って思考することができるので、どんな仕事においても検討の広さや深さの程度が上がり、より重要な論点をつかみ、結果として部分最適でなく全体最適の成果を出せるようになります。1段上に成長することができます。
視座は自覚するのが難しい
ただ、これが厄介で、すでに視座が上がっている人(例えば上司)からすると、視座が上がっていない人(例えば部下)の発言は、「そんな細かい事を言っていないで、もっと全体観を持って考えようよ」と言いたくなるし、一方でその発言は、視座が上がっていない人からすると何をどう対処したらよいかわからない、ということが起きます。
例えば、とある業務改革のプロジェクトがあったとします。業務工数が肥大化しオペミスも多発しており、それを解決するためのプロジェクトです。上司はあなたにプロジェクト全体のマネジメントや推進を期待しているものの、あなた自身はプロジェクトマネジメントをやったことながなく、どうすすめたらいいか勝手がわかっていません。進捗報告一つとっても、下記の状態だと上司とコミュニケーション齟齬が起きてしまうでしょう。
・あなたは細かいタスクの状況を説明するばかりになってしまい「Aの件について総務部のXさんにメールで確認したのですが返事が来ません、明日またリマインドする予定です」と個別具体な話をしてしまう。
・一方上司が知りたいのは、プロジェクト全体のマイルストンの進捗、そもそもオンスケなのか、論点は、重大なリスクはないのか、といった観点で、そんな細かい話は後でする、もしくはメールで共有してくれれば十分だと思っている。
仕事の例でなくても、「理解するのが難しい次元の概念を伝えるのは難しい」というのはよくあります。例えば、現在スマートフォンがこれだけ普及している現代の私たちにとっては、スマートフォンなしの生活は考えられませんが、「iPhoneが生まれる前のiモードやEZWebを楽しむガラケー世代の人たち」に、「スマートフォンはこんなに便利なんですよ」といくら説明してもぴんとこないでしょう。より卑近な例で言えば、「彼女ができたことがない男子校に通う高校生」に対して、すでに恋愛経験のある大学生が「恋愛って意外とめんどくさいんだよ」といっても、全然伝わらないだろうし、男子高校生は恋愛への夢を膨らませるばかりです。
視座を上げるには?
仕事で成長するためとして、視座を上げる方法は1つしかありません。それは、適切なフィードバックを受けることです。
良い上司に恵まれたら、実際の仕事を通して「こういう観点で考えればよかったのか」と上司からのフィードバックを通して気づくことができます。そういった経験を重ねることで、点として受けていたフィードバックがつながり線となり、いつしか「視座が上がる」タイミングが来ます。これが上司の腕の見せ所ですね。先の例であれば、上司から「プロジェクトの進捗報告では全体感をまず知りたいので、まず大まかなマイルストンの状況について共有してほしい」とフィードバックすることです。
これは別に、人からのフィードバックである必要はなくて、書籍を読んで得られる知見にも当てはまります。ただし、この場合も、自分で試行錯誤して悩んでいることが重要です。何も悩んでいなかったり取り組んでいるものがなければ、書籍の中でであってもそれを重要な情報とは捉えられないからです。
また、このフィードバックをより効果的にするものが、大きな失敗をすることです。単なる失敗ではダメで、本当に自分にとってショッキングな出来事で、なぜ失敗してしまったのか振り返る強い動機を生むものでなければなりません。そうやって深く悩んでいる状態は、脳が「答え」を渇望している状態なので、必要な情報に出会ったときの吸収度合いが高くなるのです。
自発的に動けてこそ本物
最後に重要なポイントとして、「私は視座が上がったんだ」と言えるためには、その仕事をただこなせるだけでは不十分で、自発的に動けることが重要です。例えば、上司から「この提案書にはクライアントのリソース面の考慮が足りないから〇〇の追加をお願いします」とフィードバックを受けたときに、それを言われてから追加できることと、言われなくても最初から追加できていることには雲泥の差があります。自分から「今回のクライアントは、ちょうど施策の実施時期と繁忙期が重なるので、普段よりもスケジュールを調整する必要がある」と判断し、具体的なスケジュールを立ててパワーポイントスライドの矢羽に反映した上で上司に資料をレビューしてもらってこそ、「視座が上がった状態」と言えるのです。
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