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窓際にいる人

半年の眠りから覚めたので、以前までのいつも通りの生活に戻ったある日、その人と出会った。

白か黒しかないこの世界で、その人はその色すら持たせてもらえない透明な人だった。誰もその人を気にも留めない、ただひたすら過ぎ去る中に取り残されたその人は窓際にいた。

私だってそうだった。
真っ黒に染まりそうな世界で色を失ったひとりだった。

何を見たら良いか忘れた私は、窓際のその人にあてがわれた。
虚空を見つめるその人は、ゆっくりと昔の話をする。ところどころ下を向いて話すのは自分が情けないからなのかはわからないが、輝かしい日々を持っていたのは確かなのが伝わってくる。

この世界の窓際で二人、そこにいる意味すら失いそうな透明な空間で最後にひと言、その人は言った。

見失わないでほしい

一体どういう意味だったのかはわからない。私に言ったのか、あるいは自分自身への問答か。気づけばその人はそのまま透明になっていなくなった。

私はといえば、色のある世界になったのはそれから5年の月日が流れてからだった。

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