松千代

それっぽいことをやっているフォトグラファーです。 https://matsuchiyo…

松千代

それっぽいことをやっているフォトグラファーです。 https://matsuchiyo.jp/ https://www.instagram.com/matsuchiyo8823

最近の記事

ようこそ黄泉の国

少年はどうしてかそこに並んでいた。 淡いピンクの空に大蛇みたいに伸びた人の列の中腹に少年はいた。 「お兄ちゃん、ここがどこだかわかるかい?」知らない世界の知らない男が、振り返って聞いてきた。 「ん〜、わからないしおじさん誰?」 少年が答えると男は目を丸くして言った。 「なんで敬語を使わないんだ!全くどういう教育を受けているんだ、目上の人にはなぁ.....」 あまりにも非現実な景色の中、あまりにも無益な怒りを持つこの男を他所に少年はふと思った。 俺の名前ってなんだっけ

    • 窓際にいる人

      半年の眠りから覚めたので、以前までのいつも通りの生活に戻ったある日、その人と出会った。 白か黒しかないこの世界で、その人はその色すら持たせてもらえない透明な人だった。誰もその人を気にも留めない、ただひたすら過ぎ去る中に取り残されたその人は窓際にいた。 私だってそうだった。 真っ黒に染まりそうな世界で色を失ったひとりだった。 何を見たら良いか忘れた私は、窓際のその人にあてがわれた。 虚空を見つめるその人は、ゆっくりと昔の話をする。ところどころ下を向いて話すのは自分が情けな

      • モロヘイヤってすげえ名前だなぁ

        モロヘイヤってなんなんですかね モロヘイヤって口に出すほど「なんなんだお前?」感ありませんか? 急にその事実に続いて眠れなくなってしまった。 とりあえずググってみるとアラビア語!? モロヘイヤってアラビア語が語源らしいです。 和名はシマツナソ、またわけわからん名前が出てきた。 ツナソってなんなんですかね。 そもそもモロヘイヤってどんな味でしたっけ。 マリク!?今度は遊戯王の話になってきました。そして何故か王様の野菜になりました。 寝る前に調べるものではないですね。

        • 未来を撮ってる

          最近はとりあえずスマホでパシャパシャ写真を撮ってます。 家の近所の同じところとか撮ってます。 でもひと月もするとそのどれかはなくなってたりして、あーあなくなってしまったと思うんです。 撮ってる最中はそれが無くなることなんて考えてないから、次がある前提でそれを見てたんだなぁと気づくんです。 甥っ子を撮ってる時なんかは常に先のことを考えてたりします。 小学校、中学校、その辺りまで撮らせてくれるのかなぁとかなんとか。 写真は過去が写ってるのは確かなんですけど、なんとなく僕は遠い未

        ようこそ黄泉の国

          預かりますよ

          あげるつもりだったんだけどなぁ 中学の時に最初に買ったギターはYAMAHAのエレキギターで、結構悩んで選んだRGXA2という機種でした。本当はレスポールが良かったのですが、どうしてもレスポールならGIBSONしか受け入れられないし、かといって学生が買えるような代物ではないので、妥協に妥協を重ねて買いました。偉そうなことを言ってますが、ずっと貯めていたお年玉で買ったので実質両親のお金ですね。 ストラトを買う選択肢もあったのですが、妥協した結果ストラトさえも妥協するのが嫌だった

          預かりますよ

          タイトルが思いつかなかった

          たぶんこういう時は直接語りかけられるより、なんとなく自分のことかもしれないってくらい遠い場所から声をかけられた方がスッと心に響くよね。 そのうちこれに気づいて読んでくれると思って書きます。 何やら死にたくなったんだってね。 よく話してくれました。結構勇気のいることだと思います。こんな理不尽な世の中だから、当たり前だよって思う。大袈裟だよって周りは言うけど、想像もしてなかった酷い事は、引き当てた人にしかわからないから余計自分がおかしい気持ちになる。 そもそも死にたいって所ま

          タイトルが思いつかなかった

          みなもに映るのが星空であって欲しい

          汚れた日本庭園の池は、ゆらめく木々から漏れる木漏れ日で照らしても酷い醜態を晒している。波たつ水面に映る世界は絵の具を混ぜたように混沌としていた。 風が止むと、水面は煌めき始めた。 そこには天の川があった。 少しの願いだった。みなもに映るのが星空だったら、と。

          みなもに映るのが星空であって欲しい

          頑張れない時

          新年早々何かを拗らせずっと寝込んでいるのですが、ただ焦るだけの日々。寒さも追い風となって気分がどんどん落ち込んでいきます。 やらなきゃいけないことと不安がどんどん頭の中で増大していき、脳内のキャパシティを埋め尽くすので、何も感じません。 自分が今どんな心理状態なのかわからないのです。そう、例えば小指をぶつけた時は痛いと思いますよね。お皿を割ったら悲しいとか。宝くじが当たったら嬉しいとか。 脳内の感情フォルダに検索をかけても該当する感情が見当たらないので、フリーズしている感

          頑張れない時

          ぼくは4ばんめ

          ぼくはね〜保育園で4ばんめに足がはやいんだよっすごい〜? 4歳の甥っ子はいつも自分がしたことを僕に伝えてくれるのですが、大体褒めてもらいたいようです。何が微笑ましかったというと自己分析ができている点です。それと同時に自分が4番目だということをわかった上で、ポジションに満足しているというのは学ばされるところもあります。 こういう時って、じゃあ次は3番になろうか?とか、どうやったら1位になれるかな?なんて余計なことを言いそうになるのですが、なんだかそれも違うような気がしたのと、

          ぼくは4ばんめ

          1時間経ってもまあるいほっぺ

          甥っ子が字を書く練習をしていました。 最近はタブレットで勉強するんですね。 「ママへ手紙を書く」 おお、書け書け。何書くんだろう?と見ているとややっ! ほっぺ丸!!! なんかもぐもぐしてるし、この境界線の曖昧な曲線が心を癒してくれる。 必死に書いているのを他所にずっとほっぺをムニムニしていると、少しずつ少しずつ文章ができていく。 結構長えなっと思っていると え、なんかすごい泣けること書いてない? 小さい声で1文字1文字確認して書いてるんです。 「ま、ま、い、ちゅ、も、

          1時間経ってもまあるいほっぺ

          二眼レフはあの日の視点

          趣味でフィルムカメラを使っているんですけど、最近頻繁に使っているのがこの二眼レフカメラ。このカメラは上部にファインダーがあってそこをパカってするとレンズの先の景色がワッと見えるんです。 それでこのカメラってウエストレベルって言うんですけど、上から覗くからどうしても視点が腰の高さくらいになるんですね。 そうすると大体小学校低学年くらいの目線になるわけです。 大人を覗くようなもんなら見上げることしかできなくなるので、本当にどこか懐かしい気持ちになるわけです。 あの頃見てた世界っ

          二眼レフはあの日の視点

          あいつは面白いと言う

          2023年は、多分調子の良い年だったと思います。色々ありましたが、フォトグラファーとして生計を立てることができました。 旧友のクマガイユウヤというギタリストがいるんですけど、この男とは毎年年末に遠出をするのが昔からの慣わしで、しかもだいたいどちらかが落ち込んでいます。 その理由は様々で、おおよそは金銭面にかかるものがほとんど。 だがしかし、しかし!2023年は違った。 2人とも普通を迎えられたのだ。決して楽だったわけではなく、反吐が出そうな時もあったけど総じて丸く収まった年に

          あいつは面白いと言う

          もう二度と、うごかないそれ

          フォロワーの中に、もう二度と更新されることのないアカウントがあります。 昨年癌で亡くなった友人のアカウント。 頭のいいやつでした。 ノリのいいやつでした。 "げんき"って名前でした。 俯いて泣く彼の母親の顔が瞼の裏に焼き付いています。 皮肉なものです。 中学を卒業して以来ほとんど交流がなかったのに、今更当時のことを思い出します。 LINEのトークに、もう二度とメッセージが来ることのない名前があります。 今年自害されたクライアントの名前です。 とても明るい方でした。 駆け出し

          もう二度と、うごかないそれ

          写真の言語化

          夏終わったって聞いたのですが、なんでこんなに暑いんでしょうね。 名古屋はお祭りが多くてまだまだ夏を終わらせる気はないようです。 こんにちは。松千代です。最近クライアントと話しているとよく言われることがあります。 松千代さんって撮った写真の説明がしっかりしてますね 例えばこちらはタクシー会社様の会社案内パンフレットの表紙です。 一見何気ない運転席のシーンですが、細かい意図があります。 まず、本件は若手不足を改善するための一手としてタクシー業務のイメージを変えたいというテ

          写真の言語化

          千畳敷カールは最高

          こんにちは。松千代です。 最中、最中、「もなか」「さいちゅう」時と場合によって読み方が変わる日本語は、狂っている以外形容ができませんね。 狂っているといえば私、夏が終わる気配を感じまして、無性に登山がしたくなったのです。 夏が終わりたくないのに暑い山は嫌だという我儘ムーヴが発動した私は、小一時間悩みました。住まいは名古屋、選択肢はひとつ長野しかないのである。めんどくさい、でも行きたい、めんどくさい、でも行きたい。そんな葛藤を抱きつつ着実にレンタカーの予約を進める松千代。今

          千畳敷カールは最高

          マミヤユニバーサルプレスの描写力

          こんにちは。松千代です。 死ぬ前に何食べたいですか?私はおはぎです。 さて、今回はマミヤユニバーサルプレスについて書いていきます。 このカメラといいますか、レンズの描写力は凄まじいです。 今はなき国産メーカーMamiyaの中判カメラはMamiya7や7IIがメジャーですが、こんなカメラもあります。機構は大判カメラと大して変わりません。箱にレンズがくっついているだけで、シャッタースピードと絞りもレンズで操作します。グリップはバケペンと同様に左にありますが、何が使いづらいって

          マミヤユニバーサルプレスの描写力