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love letter / 百万円と苦虫女

ひょんなことから前科持ちになってしまい、百万円が貯まるごとに引っ越しをくりかえす鈴子。海辺の町、山間の村、地方都市の町。それぞれで意外な才能を見つけたり、いろんな人にで出会っては、その場所へ置いて次の町へ。旅が進むにつれて見えてきたものとは。

映画「百万円と苦虫女」へ。

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夏でよかった。

何度も見ようと心に決めていたのに、タイミングを逃しすぎて今年やっと見ることができた。見るキッカケとなったのは、花とアリス殺人事件を見たから。「ハッ…!いまのわたしには蒼井優が足りない…」と謎感情が芽生え、本作の鑑賞に至った。もう●ikipediaでもよく見るあらすじ「ひょんなことから前科持ちになってしまい…」という日本語すら愛おしい。(状況的に良くは無い)

昔から遠くへ行くのは好きだし、知らない場所を歩くことも好きだ。でも「自分探し」という行為だけはまったく共感できなかったので、この映画を見る時は少しソワソワした。が、すぐ安心できた。鈴子の考え方とわたしの考え方がすごく似ていたから。こんなに共感できるキャラクターっているんだ。しかも12年前からいるではないか。あんだよ、もっと早く声をかけて欲しかった。

わたしは関係を積み重ねることが苦手だ。誰が相手でも一言一句自分の言ったことを反省してしまう。もう二度と会わないであろう、名前も知らない人との方が本音に近いものをたくさん出せる。3年くらい仲がいいと、急に壁を作ってしまう。頻繁なコミュニケーションが苦痛、LINEが地獄。昨日までは好きだったけど、いまは理由もなく生理的に受け付けない。

他人が嫌、というよりはそんな状態になる自分が嫌だった。早く、早く、こんな自分を切り取って置いていきたい。リセットしたい。ということにずいぶん悩まされたけど、経済的に難しく、知恵や強さもなく、ただただ他の人を真似て取り繕ってきた。

「百万円貯まったら出ていく」こんな選択肢、知らなかった。

この「百万円貯まったら出ていく」という鈴子の目標もすごく心地がよかった。私たちは小さい頃から何者になりたいのかを問われ、常に成長することを求められ、誰かの役に立たないと存在を否定される。鈴子の目標が「愛される人になって、人に役に立つ仕事を見つけたい!」とかだったらわたしは吐いていたかもしれない。(*それが悪いことではない。)そうだよね、誰かのために生きなくったって、暮らしていくだけでいいよね。当たり前なんだけど、こんなにも安心してそれがスッと入ってきた物語は久々だった。もう〜〜ありがとうね本当に〜〜。

最後が気に入らない。なんでそうなるの!、というような意見も多く見たけどわたしはあの最後が好き。わたしが鈴子の友達なら「あなたらしいよ」と笑っていたと思う。やっぱりいいな鈴子。夏に会えてよかった。

嫌なことからは逃げてもいいし、戦ってもいい。鈴子はこれからも転々としていてほしい。

百万円が無くても、ドーナツがあればどこにでもいける気がする。

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