摂食障害の罹患率とメディアの普及の相関性について考えた


はじめに


日本における摂食障害の罹患者は、1980年の調査から増加傾向にある。
統計では、1980年から1998年の約20年間で罹患者はおよそ10倍になり、16~23歳の女性のおよそ12%が拒食・過食・その他非定型の摂食障害をもっているとされている。(厚生労働省「みんなのメンタルヘルス総合サイト」/国立精神・神経医療研究センター「摂食障害の現状」より)

摂食障害は、生まれもった気質・性格・環境などの様々な要因によって起こる多因性の障害であるが、その中でも「ダイエット」を起因として拒食症になるケースが多く見られる。
1970年代、高度経済成長後に始まったとされるブームメントをはじめとして、ダイエットは昨今の女性にとって大きな関心事である。
年代ごとの女性の平均身長・体重を出した統計では、1970年~2000年までの30年間で平均体重はほぼ横ばいなのに対し、身長は3cm伸びている。また、1980年代前半には女性平均BMIが21を切ったり、やせすぎ(BMI18.5以下)に当てはまる割合が21.5%になるなど、この時代に多くの日本人女性がスリム化し、「痩せ」信仰が根付いたと言っても過言ではない。(社会実績データ図録より)

今回、そのようなダイエットもテーマに様々な情報を発信している各メディアの普及が、摂食障害の罹患率と何かしらの相関が見られるのではないかと考え、簡単に調べてみることにした。
(なお、今回取り上げるメディアはテレビ・雑誌を主に取り上げ、摂食障害の対象を女性、起因を「ダイエット」に限定することとする。)


テレビ・雑誌と摂食障害の関係は?

結論から言うとなかった

日本でカラーテレビが普及したのは1960年代からで、75年にはおよそ90%の世帯が所持していたとされる。(帝国書院 公民統計より)
テレビはCMによるダイエット関連商品の宣伝や番組などを通して多くの情報を受信することができると考えたが、普及率と摂食障害患者数についての統計データの年代が合わず、相関を見ることはできなかった。
また、雑誌においても同様である。
日本雑誌協会による統計は2008年からのものしかなく、摂食障害の罹患率の統計との相関がとれなかったこと、また、雑誌の発行部数は各誌減少していることから、雑誌の普及によって摂食障害の患者数に変化があったとは言えないと考える。


結論・考察

(本論めっちゃ短く終わっちゃって焦ってる)
統計だけを見ると、主なメディアの普及は摂食障害の罹患率とは特に相関は見られなかった。しかし、調べる中で以下の点について影響があったのではないかと見られたので、考察とする。

1. 読者モデルとブログの普及

今回、雑誌の刊行数との関連性は見られなかったものの、`80~`00年代にかけ増えたとされる「読者モデル」の存在は大きく影響しているのではないかと考えた。各ファッション誌では、専属モデル以外にも読者モデルを起用し、2012年には4000人を越える読者モデルが活躍していた。また、90年代には「リアルクローズ」の風潮から、街中の女性のファッションを取り上げるストリートスナップを扱うページも増えた。(宮武,2018)
このことから、それまで「美のアイコン(象徴)」として見ていたモデル(誌面に載る女性)に読者である自分もなるチャンスがあると意識した女性が増えたことで、雑誌講読者の美への意識は格段に増えたと予想する。

また、同時期にはこのような読者モデル達がブログ等のSNSを使って自身のダイエット法や美容法、ファッションなどについて独自に情報発信をすることが増えたという。(それが正しいものかどうかはさておき。)

総務省の出した統計によると、インターネットの普及によってSNSの利用者数も次第に増え、2003年の調査ではLINEを除いた閲覧・発信型SNS(twitter/FB/mixi/instagram等)の利用率はそれぞれ15%前後だったのに対し、令和元年の調査では30~40%に増加している。

また、平成15年に無料のブログ開設サービスが登場したことを皮切りにブログ件数も増え、平成20年までの5年間でアクティブブログ数は約60倍にあたる300万件を越えた。(総務省より)

ブログを閲覧する人はインターネット利用者のおよそ4割にあたるというデータもあることから、このような情報ツールを通して、憧れの存在でありながら比較的親しみやすい読者モデルが発信する美容法・ダイエット法を実践しようとした女性も多くいたのではないだろうか。

2. サプリメント業界の市場拡大

次に、健康食品・サプリメント事業の市場拡大が及ぼした影響についてだ。1991年の特保制度の開始や2006年のメタボ診断義務化、2015年「機能性表示食品制度」の開始など、昨今の健康志向も相まって健康食品関連事業の市場は1975年から40年間でおよそ20倍に増えたと言われている。また、その中でも若年層の消費者に焦点化した「ダイエット」「体脂肪対策」を唱った商品の市場は合わせて1兆円規模になっており、今後も拡大が予想されている。(三井住友銀行企業調査部,2018)

しかし、中には販売のために「誇大広告」を打つものも少なくない。また、ダイエット関連商品の販売のために必要以上に肥満への不安を煽ったり、「太ってること=恥ずべきこと」と意識させたりする広告が近年とても多くなってきているように感じる。
テレビCMだけでなく、ブログのアフィリエイト、動画サイトなどで合間にこのような広告が流れる機会が増えたことによって、多くの女性がサブリミナル的に肥満への嫌悪感と痩せ願望を強くもつようになってきているのではないかと考える。

もちろん、冒頭に記載した通り摂食障害は多因性の障害である。今回の考察が当てはまるケースはとても少ないが、今一度全員が「健康」と「痩せること」を切り離して考えなければ、間違ったダイエットは今後も横行し、摂食障害者の増加も懸念されるのではないだろうか。
今後は、ストレス等その他要因を起因とする摂食障害の罹患者についてや、非嘔吐過食等の非定型摂食障害の罹患者数の増加についてもさらに詳しく調べていきたい。


とまぁ難しく書いてきたけど

簡単に結論を言えば
「デブとかブスとか考えなしに言った奴やそれに悩んでいる人間をエサに不安を煽って金儲けをしようとしている奴は総じて滅べ。」

以上。

過食症のことをやいやいいってる→ @kashomatsu


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