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実は奥が深いリーンキャンバス(リーンスタートアップ実践記 chap.1)

Running Lean(第3版)のプロセスに則ると、最初のプロセスはリーンキャンバスの作成になる。なるほど、これは前版から変わっていないようだ。

前職でも新規事業の研修でリーンキャンバスを書かされたことがある。どの枠から埋めるべきかという順番があるのは知られているが、各項目をどう書くべきかはイマイチつかめていない。

※ちなみに、Running Leanで紹介されているリーンキャンバスのTemplateはこちら↓
https://runlean.ly/resources

Lean Canvas Template(LEANSTACK)

リーンキャンバスを書くときのポイント

Running Leanを読んで改めて重要だと感じたポイントをいくつか書き留めておく。どこかで同じような内容を目にしているはずだが、忘れがちなので、書く際は今一度思い出したい。

アウトカムにフォーカスする
UVP(Unique Value Proposition)を書く際、機能やベネフィットではなく、アウトカムにフォーカスして記載する。つまり、ソリューションによって結果的にユーザーがどういった望ましい状態を得られるのかに重点を置く。これに関連してRunning Leanにいい名言があったので紹介する。

顧客はあなたのソリューションに興味はありません。興味があるのは、顧客自身の課題です。

アッシュ・マウリャ(2023) 『Running Lean リーンキャンバスから始める継続的イノベーションフレームワーク』(角征典 訳)オライリージャパン

ハイコンセプトピッチとして表現する
Running Leanでは、映画の『エイリアン』を「宇宙のジョーズ」と表現した例が挙げられている。非常に短いワンフレーズにアイデアを凝縮させる必要がある。とはいえ、簡潔にまとめることよりはむしろ、新しい概念を既存の概念で語るということが重要に思える

先進企業が獲得してきた「信頼」にフォーカスした書籍であるレイチェル・ボッツマンの『TRUST』でも、新しいアイデアが認められるための教訓として、まったく新しいものは使われることは少なく、「新しいのに見慣れたもの」として提供することの重要性を説いている

他人に説明するときに使えば、5秒で概要を理解してくれるはずだ。逆に言うと、ハイコンセプトピッチとして言い表せられなかったり、5秒で理解してもらえないようであれば、ニーズが合うとかの前にアイデアがそもそも信頼されないことさえありうる

他の項目もそうだが、具体的に冗長に書くことよりもいかに本質を抽象できるかが問われている気がして、リーンキャンバスも奥が深いな~と改めて感じた。

リーンキャンバスは分割する
おそらく多くの人が「どの粒度で書けばいいの?」と悩むことになるだろう。このお悩みに対してRunning Leanでは、ビッグアイデアキャンバスを分割することを推奨している。

サービスの中で供給者と重要者が分かれるならそれぞれで書き分ける。顧客とユーザーが異なるならそれも書き分ける(顧客は対価を支払ってくれる主体のこと。ユーザーと同一の場合もあれば異なるケースもある)。最初はざっと書いて、後から細かくすればOKのようだ。

早速リーンキャンバスを書いてみた

ということで20, 30分ほどでざっと書いてみた。作成後の修正すらしていないので本当にそのままだ。キャッ-!!! 見ないで恥ずかしい

書いてから私の第六感が働いた(!?)。
「これ、使われる未来が見えねえ!!!!!」

これまで作ってきたWebサービスの失敗要因の多くは「課題の弱さ」だった。いわゆるバーニングニーズがなく、後から見れば「なくてもええやん」と思えるようなものを作っていた。その失敗で培った感覚が、このアイデアにNGを突き付ける。

そうなると、あとは無限にあるアイデアから考え直しになる。「つながり」「きっかけ」「信頼」が私のテーマではあるが、アイデアはかなり広い。

・toC間取引に対して担保を設定するサービス
・toCユーザーの信用度を、サービス横断で保証できるようなデジタルバッジサービス
・場所やイベントに対してチェックインすることを発信して、偶発的な人のつながりを起こすサービス
・イベント企画に関するニーズをBotがアンケートして、イベントのテーマや時期をいい感じに調整するサービス
・友人・知人の空いている日と遊びたい意欲をBotがそれとなく聞いて、ニーズがマッチする人がいたらつなげる、既につながっている人同士のマッチングアプリ
・その他多数のアイデア…

どうやって絞り込めばいいんだ!!!
ということでまだ迷宮に迷い込むことになった。次回の記事で紹介する「需要のストレステスト」を行って、需要があると現時点で信じ切れるものに絞ることにした。

そして… 結局元のアイデアに回帰した。
ネットワーキングイベント、本当の意味で"ネットワーキング"できない問題」を解決するアイデア、君に決めた!!!

欲を言えば信頼できるつながりを持ちたいとは思いつつも、1回のイベントだけだとどうしても表層的な会話で終わりがちだし、2回目の機会を作りづらい。これをどうにかできないかと前から思っていた。企画者の視点と参加者の視点があって結構複雑だが、ピンと来た課題とインサイトがあったのでこれに選んだ。

肝心のリーンキャンバスは… 次回の記事に載せる。正直迷宮で迷い過ぎた。とはいえ、Running Lean第3版でも、すぐに検証に移るのではなく、リーンキャンバスを机上でブラッシュアップすることを重要視しているので、机上で迷うのもそんなに悪くない。

...おっと、こういう考えもRunning Leanで幾度となく批判している「正当化」の一つかもしれない…..

とりあえず次回は、Running Lean第3版で新たに導入されたアイデアの「ストレステスト」を説明しつつ、実際に検討したことをまとめていくことにする。

(続く)

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