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事業性のストレステスト ー死んだアイデアでMVPに進まないために(リーンスタートアップ実践記 chap.3)

前回の需要性のストレステストが終わり、顧客/ユーザーのジョブ、既存の代替品やその課題は整理することができた。今回は次のステップである「事業性のストレステスト」に移る。

解決に値する「十分に大きな」課題がなければ(紙の上でも説得力がなければ)、時間や労力をかけるべきではありません。

アッシュ・マウリャ(2023) 『Running Lean リーンキャンバスから始める継続的イノベーションフレームワーク』(角征典 訳)オライリージャパン

名言。圧倒的名言。
当たり前のことだけど、どれだけの人がゆるふわアイデアのままでMVPに突き進んで爆○してきたのだろうか。机上のうち潰すことができたアイデアを検証に持ち込むのは愚かである。と過去の自分に言ってやりたい。

事業性はフェルミ推定でテストする

Running Lean第3版では、TAM/SAMのn%を獲得するといった曖昧すぎる論理や、アイデアを正当化するための試算を避けるためにも、フェルミ推定を使って事業性をテストすることをすすめている

顧客ファクトリーで考える

アイデアのビジネスモデルを表したものを本書では顧客ファクトリーと言っているが、AARRRモデルほぼそのままである。AARRRの詳細はこちら。

獲得、アクティベーション、定着、収益、紹介というビジネスモデルの基本的な構造をベースに具体的な数値を当てはめる。
事業性のテストの手順としては、目標(MSC)を設定し、AARRRにざっくりの値を当てはめていって目標達成できるか検証、できなければ改良するというシンプルな流れだ。

目標を設定する

まずはMSC: Minimum Success Criteriaを設定する。これは、「3年後にプロジェクトが成功したとみなせる最小限の成果」(p.94)のことである。なお、この目標には収益(特にARR)を設定することが推奨されている。

精緻に出すよりはおよその数字感が出せればOK。VCに支援されるレベルを目指すなら1,000万ドル、現在の仕事を辞めるくらいであれば10万ドルといったイメージだ。

実践!AARRRの値を見積もってみる

ここからは実際に私のアイデアをベースに見積もりとテストをやってみる。

私のアイデアは「(主に大企業の社内向け)ネットワーキングイベント、参加しても次につながらない問題」を解決するサービス。話の取っ掛かりがなくて話しかけられなかったり、相手からうまく引き出せなかったり逆にうまく伝えられなかったり。どうにかならないかな~と思っていきついたアイデア。

前回のキャンバス。今は少し変わってます。

①MSCの設定

正直お金儲けはあまり考えていないが、まずはトライしてみる。

先ほどの話だと一旦10万ドルで設定してもいいのだが、インパクト重視のビジネスは提供したいインパクトから収益を導き出そうとの説明があったので、その考え方で計算する。なお、私は一応コンサルではあるものの、今回のフェルミ推定は大雑把にやるのでその辺は気にしないでほしい。

ざっくり行こう。ネットワーキングイベント(以下、NWイベントという)の総機会数に対して5%使ってもらえたら十分では?と思ったので根拠のない5%を目標値にする。割合ねじ込むのはあまりいいやり方ではないと思うけど。
MSP = NWイベント参加人口 × NWイベント参加回数/年 × 目標利用率(5%) / NWイベント平均参加人数 × 有償化率 × 顧客あたり収益/年

労働者人口 × 飲み会頻度(回数)/年 × 会社関連飲み会比率 × NWイベント比率 × 目標利用率(5%) / NWイベント平均参加人数 × 有償化率 × 顧客あたり収益/年

7,000万人(*1) × 17回(*2) × 0.5(*3) × 0.2(*4) × 0.05 / 20 × 0.1 × 1,000円
=29,750,000円/年

*1 https://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/nen/ft/pdf/index.pdf 
*2 https://www.randcins.jp/fin/special/drinking-party/ 
*3 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000114004.html 
*4 肌感覚。以降の数値も同様。

29,750,000円!!!
金持ち確定だ!!!今までありがとう!これで私もFIREだ(!?)
……..こういうのを取らぬ狸の皮算用というか。ちなみに私は100億もらってもFIREなんてしない(突然の自己主張)。

②必要な顧客数の計算

本書のp.100で簡単な計算式「アクティブな顧客の人数=年間収益目標/年間顧客収益」があるのでそれで計算。
29,750,000 / 1,000 = 29,750人(無償ユーザー含めると297,500人)

こう見るとそんなに簡単ではなさそうに見える。全然現実的じゃないという訳でもないのでOKとしよう。

③必要な顧客獲得数/月の計算

本書p.102の試算表を使いながら、「最小限の顧客獲得率(月間)=アクティブな顧客数×月間離脱率」を計算。
29,750 × 0.0417(顧客ライフタイム2年の場合)≒1,241人

ん!?さらに難しそうに見える数値に。大丈夫なのだろうか。

④必要なリード数の計算

標準的なCVR1%と置くと、1,241 / 0.01 = 124,056人/月

えっ だ、大丈夫??プロモーション費用で収益が消えるのでは?

⑤紹介率を考慮する

④のリード数をすべて自力で獲得せずとも、バイラルによってカバーすることができる。紹介の可能性が高くなるような仕掛けにするとして、バイラル率50%で、半分の62,029人のみ自力でリード獲得すればいいことになりそう。1日2,000人強のリードを獲得しろと!?

⑥ビジネスモデルを修正する

本書では価格や課題、顧客セグメントの再考を推奨している。

まず、有償化顧客の年間収益1,000円は控えめすぎた。マッチングアプリと類似したマネタイズの仕組みを作る作戦はあるので(といってもストックよりフロー系)、もう少し高めにして5,000円にして計算してみよう。また、MSCも欲張らない。1,000万円にしよう(弱気)。

その前提で計算すると、自力で獲得する必要のある月間リード数は4,170人となった。簡単ではないが、現実味はあるように思える

とはいえ、このままだと営業利益率が低くなりそうなので、LTV向上のために何ができるかは今後も検討しないといけなさそう。

ここで謎のお気持ち表明

ここまで実践して思った。
お金を稼ぎたいと思いが強い方が成功するのでは?と。当たり前のことかもしれない。

変なこだわりが邪魔している気がする。個人的には本業の年収を高めて心の平穏は保ちたい一方で、本業以外に関してかねかねかねかね言いたくない。余暇までお金を気にしてバカみたいに思えてしまう(あくまで私自身がやることに対して)。だから個人開発で利益重視でやるつもりはない。

と私がどう思うのは勝手だが、結局結果がすべてでもある。金のことばかり考えていたとしても、結果的にユーザーを集められている人には頭が上がらないし、理想だけ追求して誰にも使われないもの作っても意味ないじゃん

何が言いたいか。動機はともかく、結果を出せ
お金がそんなに嫌なら、お前の思う崇高なビジョンを達成するためにやれよと。やりきれないならその程度だよと。びえん…. そこまで言わなくても😢 

次に向けて

本来は次に「実現性のストレステスト」という事業性のテストの続きみたいなことをするべきではあるが、一旦省略する。少なくとも今の段階ではVCに支援してもらうイメージはゼロなので、事業としてのポテンシャルを追求することよりはむしろ課題解決にフォーカスしたい。

ではストレステストの次は何かというと「エレベーターピッチ」の作成だ。LPを作る前に、まずは人の気持ちをつかめるようなインサイトをつくフレーズ、ストーリーを考えていきたい

続く。


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