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在宅勤務と長時間労働の問題 ~自律した働き方の幻想

従業員と企業の関係性において、正社員5点セットがあり、それらが基本的に、一律&デフォルトに適用されていると私は考えます。

すなわち、①何でもやります(業務内容)、②どこでも働きます(勤務地)、③いつでも働きます(長時間労働)、④定年まで働き続けます、それに加えて、⑤一定の能力、適性などをクリアしている、といったものです。

最近の人事関係のトピックスにおいて、①~④それぞれ、ジョブ型雇用、転勤の廃止、労働時間規制、高年齢者雇用などなどの観点から、議論を呼んでいます。

③労働時間規制について見ると、在宅勤務を経験した会社の人事担当、従業員にとっては、

・仕事とプライベートの境界が緩やかな中で、どうやって労働時間を把握、管理するのか。そもそも厳格に管理しないといけないのか。

・業務上のコミュニケーションが少なくなり、かえって根を詰めてしまい、かつてより長時間労働になりがち

といった現状も見受けられます。
言い換えれば、労働時間に関するルール・法規制がもつ問題点を際立たせているといえます。

労働時間規制については、労働時間の考え方を、
・賃金計算の根拠とする時間をどう把握するか
・健康障害の防止のために上限規制をどうかけるか
という点で、分けて考えることが、ホワイトカラーに真に適した制度を構築していく基本だと考えます。

時間外割増賃金は、基本給の上乗せであり、最低賃金法と違って、生活を脅かすことはないです。管理に伴う手間ややり取りがなくなるメリットと天秤にかければ、ある程度みなしで払っておくことで、特段の問題は生じないでしょう。

むしろ日本企業の働き方をみたとき問題は、過重労働の方でしょう。かつて、働きます改革の名のもとに、自律した働き方が推奨されていましたが、実際のところ、そんなのものは幻想だと思います。
つまり、組織が重層化していて、かつ、各階層で報連相や仕事のお作法や進め方が求められるなか、とても自律とは言い難い現状もあります。ただ、そういった仕事のやり方を全否定するわけではなく、すり合わせや合意形成を大事にすることは必要だと思います。

労働時間規制の点からは、ある程度、時間のかかる働き方を受け止めたうえで、過重労働により健康を害することのないように、管理職も含めて上限規制がより必要になっています。非管理職は、2019年の労基法改正により、36協定の特別条項に上限時間が設定されましたが、問題は管理職の方が置き去りになっていることです。

いわゆる「名ばかり管理職」問題と言われるように、管理職は労働時間の上限規制の枠外に置かれている会社も多いようです。打ち手として、労基法でいう管理監督者の適用要件を厳格にする、勤務インターバル制度をあらゆる労働者に適用する、など、考えられます。
職場は、様々な人材群(管理職・非管理職、無期・有期雇用、コース別人事など)で構成されており、こと長時間労働の問題は、職場の中間管理職にしわ寄せが行っているのが現実に思えます。

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