見出し画像

利用者2800万人突破 巨額投資でキャッシュレス市場を牽引するPayPayのマーケティング戦略に学ぶ

おはようございます。ドドルあおけんです。

さて、マーケティングの月曜日。今日はあっという間にQRコード決済のトップに上り詰めたソフトバンクグループPayPayのマーケティング戦略に迫ってみたいと思います。

PayPayってどんな会社?

まずはWikiから会社の概要をさらってみます。

PayPay株式会社(ペイペイ、英語: PayPay Corporation、旧社名:Pay株式会社)は、電子決済サービスを展開する日本のIT企業。ソフトバンク株式会社とヤフー株式会社の合弁により、2018年6月15日に設立された。
中国の電子商取引企業・アリババが多額出資する、インド最大の決済サービス企業・ペイティーエムと連携し、2018年10月にQR・バーコード決済サービスを開始した。2020年4月22日時点で、2800万人のユーザーと、220万箇所の加盟店をもつ。

SBグループは古巣ですが、ペイティーエムにアリババが多額投資していたのは調べて初めて知りました。なんでインド?なんでペイティーエム?と思っていたのですが、なーるほど、です。色々つながってますね。

10日で終了の100億円キャンペーン

PayPay「100億円キャンペーン」は13日23時59分で終了_-_Impress_Watch

2018年10月のサービスローンチの後、PayPayは11月から100億円キャンペーンをはじめます。詳細は↓。

2018年11月22日、2018年12月4日から総額が100億円になるまで、PayPayで支払った購入額の20%、全ユーザ、Yahoo!プレミアム会員、ソフトバンクとワイモバイルのスマホユーザそれぞれ、1/40、1/20、1/10の確率で、10万円を上限とした購入額全額がチャージ残高としてキャッシュバックされるキャンペーンを行うことを発表した。12月13日、還元額が100億円へ達しキャンペーンが終了した。朝日新聞では「開始わずか10日」と報道された。

グロービスの対談でYahoo!の川邊社長は、情報技術におけるイノベーションの普及の観点で見るとブロードバンドの時と今回のキャッシュレスの時は同じパターンといいます。その普及のための打ち手が100億円キャンペーンということです。

2000年台冒頭、ブロードバンドは絶対に日本には来ない、と言われてた。なぜならNTTの料金が高いから。でも、ソフトバンクは月額2980円で出した。(NTTの半額くらい)それだけでもだいぶお得だけど、それだけなら使ってもらえないだろう、ということで、酔っ払って家に帰る途中のお父さんにモデム、タダなので使って!といって配りまくって、それで問題になったりもしたけど、それがあって今はブロードバンドなしには成り立たないという状況になったことを例にあげています。

便利でお得であればみんな使う。大事なのは一回それを体感してもらうことで、体感してしまえば、不可逆、元には戻らないというのが技術のイノベーションで起こること。その体験をしてもらうためにブロードバンドの時は、モデムを配り、今回は100億円還元のキャンペーンをする、ということで奇抜なマーケティングに見えて、プラットフォームを取りに行く時のソフトバンクの常套手段というのが見えてきますね。

PayPayユーザーは「2000万人超え」目前、アスクルは営業利益4割増。ZHD第2四半期決算___Business_Insider_Japan

SBパワー、数千人が加盟店を口説きまくる

決済プラットフォームを確立する上で、ユーザ向けにはマス媒体を使って広告やPRで「100億円」「20%還元デフォルト」「たまに全額タダ」というのをお金を使って告知すればいいのですが(できる会社限られてますけどね)、一番大変そうなのがPayPayが使えるお店をどうやって(短期間に)開拓するか、です。

EC業界カオスマップ2019 - EC決済サービス編___EC業界ニュース・まとめ・コラム「eコマースコンバージョンラボ」

キャッシュレスに向かっていく決済サービス市場に続々と競合が参入する中で、ユーザの認知獲得と同時に使えるお店を囲い込むための営業力が非常に大事なってきます。その辺の事情について昔一緒に今PayPayのマーケのトップをしている藤井さん(あの藤井さんPayPayに、とびっくり)のインタビュー記事があったので、そこからポイントを拾ってみたいと思います。

記者コメント:さて、ここで「投資」と言うと『100億円あげちゃうキャンペーン』を思い出す方が多いに違いない。しかし実はこれ、巨大な計画の一部にすぎなかった。まず、ユーザーを勧誘しても、使えるお店が少なければ意味はない。そこで......。
藤井さん:当社には数千名を超える営業がいて、全国津々浦々、様々なお店で『PayPay』を使えるようにしています。その結果、第三者の調査で圧倒的な数字が出ています。新宿駅付近のお店でどのスマホ決済サービスが使えるか調べると、『PayPay』が他のサービスを圧倒しているのです」
記者コメント:『100億円あげちゃうキャンペーン』の知名度は高いが、こちら(営業コスト)も莫大な資金が必要だ。仮に2000人(くらいと思われる)が年収500万円で動いているとすると、こちらにも年間100億円かかる計算になる。
次に、お店側の導入費用が無料。運用費用も2021年9月までは無料と約束している。ようするに、システムをつくっても、ユーザーがどれだけ便利に使っても、2021年9月まで費用は出ていく一方なのだ。これも普及のためとはいえ"太っ腹"。2019年12月には、単月での決済回数が1億回を超えたらしい。決済の平均単価が1回500円、クレジットカード会社の決済手数料が3%だとすれば、『PayPay』は全国のお店に1カ月150億円もの利益を還元していることになる。むしろ100億円あげちゃうキャンペーンよりお金がかかっているかもしれない。

僕がまだSBにいた時、PayPayに使うと言われている金額を噂で聞いたときはびっくりしたものですが、加盟店・ユーザ双方を短期間で押さえにいって競合をぶち抜くにはそれくらいかかるなぁ、と思います。

学び・気づき

・一見奇抜なことをやっているように見えて、イノベーションがもたらすエンドユーザーの不可逆な態度変容を見越してのかなり理詰めのマーケティング

・とにかく一回体験させるために圧倒的投資。ただ、体験して後戻りできない便利さをきちんと準備していることが大事で、その点、モバイル決済で相当先を進むアリババとそこが巨額出資するインドのPaytmがすでに技術・UX的に優れたソリューションを持っていたというのが大きい。(ユーザ煽ってこけてしまったセブンペイは対照的)

・今回のモバイル決済ソリューション戦争は、加盟店という使える場所をどれだけ増やせるか、というのもエコシステムを創り上げる上で重要な要素だけど、そこに数千単位で人をかけられるSBが持つ強みが他社との差を生み出している。ただ、そこに数千人かけよう、という覚悟がやはり先にあることを見逃してはいけない。

・PayPayの事例は空中戦すぎて自分ごとにしづらいけど、イノベーションをベースとしたエンドユーザの態度変容を起こさせたいときは相当のパワーがいるということ、やるときは徹底的にやる、というのは、今後の勝負どころでは覚えておきたい。

ということで本日のお話は以上です。

明日は、 経営戦略・事業開発の火曜日。先週に引き続き、ヤマト運輸の小倉元社長の著書から組織・チームマネジメントを学びたいと思います。

マーケティングの月曜日
経営戦略・事業開発の火曜日
EC・ロジスティクスの水曜日
DXの木曜日
グローバル・未来の金曜日
ライフハック・教養の土曜日
エンタメの日曜日

それでは今日もよい一日を。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?