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コレクターズ・ハイ

玩具会社でカプセルトイの企画をしている主人公の三川は
なにゅなにゅというキャラクターのグッズ蒐集しているオタクだ。
なんか小さくてかわいいやつっぽいやつだな。と、想像しながら
読んでいたのだが「凪のような表情、丸い、
緩やかに動き、上下伸び縮みする」らしいので
星のひとっぽいやつだな。と方向転換したら、
「キモかわいい」と評されたので最終的にこう↓なった。

君もなにゅなにゅを想像してみよう!!

三川のカプセルトイ開発話は面白くて、
「なぜ…?」と思うようなカプセルトイも、
企画プレゼン会議と部長の厳しいダメ出しなど、
様々な苦労を経て店頭に並んでいるのかと思うと、
全てのカプセルトイが愛おしく見えてくるので、
カプセルトイ好きには三川の勤務シーンだけでも読んで欲しい。

なにゅなにゅのグッズに囲まれ、
なにゅなにゅの未来と発展を真摯に考え、
(オタク特有のクソデカ主語に笑った)
なにゅなにゅになりたいと願う三川の日常が、
ある事件をきっかけに崩壊していくのだが、
この崩壊した後の世界が怖い。
交換条件とはいえ三川に対し気遣いをしてくれていた人達が、
不快で不気味な感情を抱えていたという事実と、
三川の自我の崩壊を感じさせるところが怖い。
それなのになにゅなにゅへの執着だけは残っているのが、
オタクの業の深さを感じるというか、やるせないというか。
「推し燃ゆ」は自力で立ち上がろうとする話だったけど、
「コレクターズ・ハイ」は全てが不穏なまま終わって、
これはこれで面白くてよかった。

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