見出し画像

古賀史健さんx柿内芳文さんトークイベントにいってきました 〜おふたりの共通点〜

先日、古賀史健さん柿内芳文さんのトークイベントにいってきました。

文章の考えを古賀さん、柿内さんから直接聴けるまたとないチャンスです。

たまたま同じイベントに来ていた前田デザイン室のざかさんと一緒にたくさんメモをしました(ボイスレコーダーはとってません)。

それは同じ前田デザイン室の綾さんから「めっちゃ行きたいけど行けないー!」と伺っていたから。

のざかさんとの思いは一つ。
「綾さんにイベントの内容を伝えよう!」を胸にペンを走らせました。

なのでこのnoteはのざかさんとぼくの合作です。
そしてのざかさんとぼくから、綾さんへの情報共有noteという名のラブレターです。

----------✂︎----------✂︎----------

トークイベントのテーマは、
『いまこそ聞きたい「文章を書く」ことについて』でした。

紀伊国屋書店イベントサイト
https://www.kinokuniya.co.jp/c/store/Shinjuku-Main-Store/20190710100008.html


イベントが終わったあとに内容を振り返ると、ぼくはおふたりの共通点に気がついたトークイベントとなりました。そちらは最後に。

最初に登壇されたみなさんのご紹介です。


登壇者のご紹介


古賀史健さんは『20歳の自分に受けさせたい文章講義』を執筆されました。
(イベントでおっしゃっていましたが、22刷りのロングセラーとなっています。)

柿内芳文さんは『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』、『漫画 君たちはどう生きるか』などの編集を担当されています。

司会はライターの崎谷実穂さんです。

古賀さんと柿内さんのおふたりがつくられた本といえば名著『嫌われる勇気』(共著/岸見一郎)です。190万部(2019年4月24日時点)のベストセラー。200万部も目前です。
参考:https://twitter.com/diamond_sns/status/1120824780368691200

まず『20歳の自分に受けさせたい文章講義』が発売になった経緯からお話ははじまりました。


『20歳の自分に受けさせたい文章講義』ができた経緯


この本をつくったきかっけはWebインタビューが大もとで、「Webだけだともったいないから本にしましょう」ということでつくられたとのこと。

自分が若い時にこういうふうに教えてもらえたら良かったのになという内容をつめ込んだ本になったそうです。
(古賀さんは24歳のときにフリーなられています)


また、短い期間で何冊も出す作家の方へ疑問があり、5年間は書き直さなくていい本にしようという思いもあったとのことです。


つづいては長く売れている理由について話題です。


長く売れている理由は?


柿内さん
「文章の書き方を小さいころに学んでこなかった。この本は文章を書く入口になっているんじゃないかな。古賀さんは日本一・世界一のライターだと思ってます!

少し笑いながら古賀さんがつづきます。

古賀さん
「文章を書くための本はありますが、記者、教授、ライターではそれぞれ書き方が違います。昭和30年代に『文章読本』ブームが起き、谷崎潤一郎、川端康成、三島由紀夫が文章術を書き、出版されました。しかしこの本は『自分はこうやって書いている』という本であり、著者自身の書き方解説本だから、ライター素人からすると『…だから?』となってしまいます。ライターのための本は当時なかったし、今も少ない。『私はこう書く』の本だけではなく、『なぜこう書いているのか』を普遍的に言語化しておかないと自分が困ると思いました。『見て盗め』よりも理屈で教えることが大事で、ロジック的に言語化しておかないと、と思いました。この本を書いたあとに一段上がったと思います。」


『20歳の自分に受けさせたい文章講義』がロングセラーになっていることから、賞味期限の長い文章について話題が移りました。


賞味期限の短い文章・長い文章とは?


古賀さん
「まず賞味期限の短い文章とは、(スマホの)アプリやバズる情報は、賞味期限が短い文章になりがちです。ではどうすれば賞味期限の長い文章になるかというと、別ジャンルに置き換える。たとえば野球。野球を使ってロジックを言ってから文脈にもどして、本質をとる。あと感情が動いたときは過去の経験とくらべるといいです。たとえば予防接種のドキドキとか、夕日のさみしい感じとか。一文を遠くに動かしながら共通点を探して、それが何か?を言語化すると本質的なものがつかめて普遍的になります。


対面感覚、臨場感のある文章


柿内さん
「(自分は)カッパブックス(※光文社のレーベル)に育てられと思ってて。当時書庫を探ってたら、神吉晴夫(かんきはるお)を見つけて。古い本なんだけどすごく面白かったですよ。著者が目の前にいて語りかけてるような対面感覚、臨場感のある文章で。著者がいる感覚が普遍的なんじゃないかなと。(後々意図的にそのようにつくられたことを知ったとのことです)」

古賀さん
「行間から著者の声が聴けますよね。(ボイスレコーダーなど)で録音した自分の声って恥ずかしいじゃないですか。この自分の声が文体だと思うんです。」


ここでWebと本の原稿の違いについて古賀さんから提案質問がありました。


Webと本の違いは?


古賀さん
「出版社にいるときに雑誌のライターをやっていました。ページあたりの価格が3分の1くらいに下がったときで。雑誌は一週間で消えるのであおるような内容にしていました。(雑誌は)『鮮度が命』と言われていて。本は雑誌のテクニックが使えません。本はWebに比べて5~10年後のことを考えてつくっています。嫌われる勇気は10年後を想定して書きました。なので固有名詞を入れていないし、たとえもいれてない。SNSとか、学校規則、野球とかは(入れてない)。100年前の人が読んでもわかるシチュエーションを考えて書きました。

崎谷さん
「古賀さんは毎日noteを書いていますよね。」

古賀さん
「でも文章は上達してないです。手の抜き方を覚えたとは思ってますが。糸井さんも同じ意見だけど、ぼくは(糸井さんに対しては)そう思ってないです。自分の文体や道があっていいと思うんですよね。なんでもない自分を気にとめてもらうには誠実にやっています。毎日noteを更新したのは、糸井さんに会う口実をつくるためです。会えた今でも書いてますが、書くのをやめると糸井さんと会えない気がしています。

柿内さん
「古賀さんは自分の書いたものにずっときびしい。自分で全ボツにすることもある。すごい人。ほぼできてるのにボツにして一からつくることもありますよね。

古賀さん
「そうですね。文章はカレーづくりに似ていると思います。できあがったカレーに少しスパイスをたしたり隠し味をたしても大きく味は変わらないですよね。だから間違った骨格をたしてもよくならない。労力は度外視してます。」

柿内さん
「Webは(原稿が)そのまま掲載されますよね。Webで原稿を書いた人に指摘したら喜ばれたもん。だからかわいそうだなと思って。だれかに教えてもらえないとハードルをつくって超えられないから。古賀さんは自分でハードルをつくって超えられるのがすごい。

古賀さん
「『糸井さんに読まれたときに、この文章は大丈夫か?』と思って書いてます。もしかしたら村上春樹さんが見るかもしれないとか。

崎谷さん
「あ、そこですか…!(自分が思ってた人と違ったという顔)」

古賀さん
「(ライターとして)プロとプロじゃない人の違いは、編集者がいるか、いないかの違いだと思うんですよね。収入の有無は関係ないです。Webの人は編集がいないから自分に編集者にならないといけないですから。」


良いライター、良い編集者の話


崎谷さん
「良いライター、良い編集者は育成できますか?」

古賀さん
「『良い原稿』は書けるようになると思います。ただ『おもしろい原稿』は個々のセンスが美的なもによるので・・」
(良い原稿の上におもしろい原稿があるイメージでお話されていました)

柿内さん
「正直わからない。マイウェイ(私はこう編集する)じゃなくて、編集者というものが言語化されていないので。何をもってプロなのか。編集部にいたら編集者?(かといえばそうではない)。(自分は)ようやく最近スタートラインに立てたと思ってて。」

崎谷さん
「最近ですか・・」

柿内さん
「過去16年間の編集は違う筋肉を鍛えていたと思う。この間陸上の末續さんに会ったんだけど、その時『美しい筋肉!』と思って。アスリートの筋肉の鍛え方は言語化されてる。編集者もそうあるべきだと思うんですよね。今まで違う筋肉を鍛えてた思う。」


話題は古賀さんと柿内さんのおふたりの関係性へ。


おふたりの関係性


古賀さん
「柿内さんとは学生のときに会ったら友達になってないと思う(笑)」

崎谷さん
「古賀さんからみた柿内さんはどんな方ですか?」

古賀さん
「『あの本みたいな(本をつくりましょう)』があんまりないですね。『あの映画みたいな』とか『ディズニーみたいな』という言葉多いかな。本に執着してないですね。取材後のぼくらの感想が一致していてズレがないです。読者としての柿内さんは信頼しています。彼がおもしろいと言わせるのがたのしみです。」

柿内さん
自分のことは読者として完全に信頼していますね。

崎谷さん
「(すごい・・・という顔)」


柿内さんが初稿をとりに行くお話


柿内さん
「(読者としての)訓練はしてます。はじめてふれたときの感覚を大事にしていて。何かにあたったときの感情を言語化してます。世の中は初稿であふれてますから。ただ(文章の)初稿なんてそんなにないから、自分で初稿をとりにいく。文章だけではなく広告コピー、キャッチコピー、映画。映画ならどうしたらおもしろくなるかまで一緒に考える。そういう意味での初稿は毎日10個はみてる。初稿の経験を積めるから、自分自身の読者としての信頼が上がる。」


たとえる力の鍛え方


古賀さん
たとえる力を上げるには『万人にわかるもの』にたとえるといいですよね。たとえる対象を間違えないように気をつけること。あと反対に何に似ていないかも考えるようにするといいと思います。」


柿内さん
「バカ(自分自身をバカだと思ってるとのこと)でも理解できるように、伝わるように(考える)。食べものを食べたときにどうおいしいのか言語化する。」

古賀さん
「(柿内さんは)雑談ならぬ雑"話"が多いですよね(笑)」

柿内さん
「雑話じゃない!」

古賀さん
「『言いたい』と『伝えたい』の違いですよね。『伝えたい』はいろんな道を模索するし。」


ここまでたっぷりお話されていました。
最後に質問タイムです。


質問タイム


Q1.文章を書く上で紙とWebでそれぞれ意識していることはありますか?

古賀さん
「紙は『めくり』を意識します。いかに次のページを読んでもらうかですね。Webはカラー写真が載せられるのが大きな違いです。本をオールカラーにしようとすると本の値段が全然変わってしまいますから。ほぼ日の写真の入れ方はすごいと思います。本当すごいです。あとは紙でもWebでも、横でもたてでも可読性は意識してますね。」


Q2.古賀さんとタイプの違う(ある)ライターの方はどのようにとらえていらっしゃいますか?(←勇気を出してぼくが質問をしました。詳細な内容は端折ります・・)

古賀さん
「(タイプの違うライターさんのことを)ディスってます?(笑)」

ぼく
「いやいやいやいや(焦)ディスってはないです・・・」

古賀さん
「(タイプの違うライターさんのことは)エッセイストだと思ってます。だれかに話を聞いて書くタイプじゃなくて。彼の名前を出すから良さがでると思います。」

※やさしくご説明していただいてありがとうございました。


Q3.文章をうまく書くコツはありますか?

古賀さん
「反対に失敗する例としては、最近矢沢永吉さんにインタビューをしたんですけど、矢沢さんは一人称を「俺」「ぼく」「矢沢」と使い分けてますよね。下手なライターであればすべて「矢沢」にするかもしれない。この一人称をいかにうまく使い分けるか、というのはあると思います。書くときはものまねタレントくらいに意識してます。あと夢にでてくる。その人の声を頭の中で再生できるようになるとか。録音したテープをたくさん聞きますね。ライブ、リズム感、MCまで。聞ける、見られるものはすべて。」


古賀さんと柿内さんの共通点


最後におふたりのトークを聴いて感じたことは、おふたりとも毎日続けられていることがあるということ。

古賀さん・・・毎日noteを書いている
柿内さん・・・毎日初稿を10個はみている

この継続がおふたりの土台になっているんだなと感じました。


やはり継続は力なり。近道はなさそうです。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?