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【10〜11日目】 街と見知らぬ人に助けてもらう/魂の旅の途上

2024年3月6日(水)〜3月7日(木)
24:啓蟄 72:蟄虫啓戸(ちっちゅうこをひらく)

運転免許証の住所変更へ行くなどする。
ショートカットのために入った裏道は、どこを歩いても風情がありすぎて、これが自分の地元だなんて改めて信じられない。
何も感じなかったのか、高校生までの私は。

それ以前に、バスで犀川大橋を渡った時、白山連峰のあまりの美しさに驚かされた。
たとえ曇り空でも、やけにはっきり見える日があるのだね。 
タテマチ通りの向こうにも涅槃(山々)が見える。
私は高校を出るまで何を見ていたんだろう。
(路地の文化屋雑貨店などを見ていた)

これは帰りの時の写真。行きはさらに山が鮮明だった

警察署へ行く前に、近くにある、行ってみたかったカフェへ。
窓際でお茶を飲んでいたらふわーっと日が差してきた。
この町で日が差すのは神の福音。

こうして美しく心地よく整えられた空間にいると、我が家を整えることは、やはり急務だと思われた(荷解きすら終わっていない)。
焦らなくてよい、けれど心にとっては最重要だと身に沁みた。

おしゃれなカフェに行くのって、たまにだからいいんだ。情報でもイベントでも、ちょっと不便な場所で、ちょっと飢えて待ち望んでいるくらいが好きだ。

kakurezato coffee
柚子とチョコのパイが天才的に美味しかった
平日でもけっこう混んでいる
上階はギャラリーか何かなのか、カフェの入るビル自体がかわいくなっていた

その後、甥っ子の大学進学祝いのオマケを買いに、21世紀美術館のミュージアムショップへ。ほか、そういうものを買えるお店が思い当たらない。

買い物後、「雲を測る男」の正面のロッキングチェアに座り、相変わらずの曇天を眺めながらぼんやりしていたら、隣の御婦人から「あら、ちょっと晴れてきましたねえ」と話しかけられる。見ると、雲を測る男がわずかに光っていた。

そこから30分以上、実にいろんな話をした。かつてこのすぐ隣の市役所でずっと働いていて、美術館が完成するまでを毎日見ていたこと。元市長のことはみんな「たもつ」と呼んでいたこと。「たもつ」は金沢を観光都市呼ばわりすると「文化産業都市!」と即反論したこと。親族が遭った地震のこと。城南エリアの自宅から見える犀川と山々の景色のこと。
「私は定年後、67歳で免許取ったの。バケモンでしょ。だから大丈夫」と励まされる。 

まちなかに出てくると気が晴れる。部屋に帰ることを考えると鬱々とした気分になる。あの部屋と良い記憶を結びたいのだが。

その後ひとりでタレルの部屋に座っていると、涙が出てきた。
私は変化の旅の只中にあるのだろうな、と思った。

いまは家族よりむしろ、この街に住む見知らぬ人に救われ続けている。

甥っ子には金沢のまちを


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