ばあちゃんからの洗礼
横浜から色んな行き方がある中で、俺は新幹線で姫路まで行きそこからフェリーに乗ることにした。
飛行機に乗るのは好きだが、国内線は乗っている時間が短く慌ただしいので、どうも苦手だ。空港へ早めに行って時間を取られるのも嫌だ。
新幹線は次から次へとくるし、姫路くらいまでなら本を読んでいたらあっという間だ。
そして、姫路と小豆島は意外と近く、フェリーの便もそこそこあるのだ。
潮の香りとほのかに醤油の香りが入り混じった街に、俺は降り立った。
「幸太!よくきたねぇ。ちょっと痩せたんやない?」
勢いよく玄関を開けたばあちゃんは、笑顔で俺を出迎えてくれた。
ばあちゃんに最後に会ったのは5年前のじいちゃんの法事のときだ。そのときも、親父の実家嫌いのせいで、ちょっとしか話せなかった。
俺なんかより、ばあちゃんの方が5年前よりよほど小さく見える。親父なんか無視して、もっと頻繁に会いに来たらよかったな。
と、そんな後悔の念を覚えていると、
「電車おくれたんやない?大丈夫やった?」
「新幹線が停電して遅れたから、フェリーも1本遅いのにしたよ。けど、なんでばあちゃん知ってるの?」
一瞬、ばあちゃんがエスパーに見えたけど、そうか、ニュースでやっていたんだな。
「今日から水星が逆行しよるから、大丈夫かなとおもてたんよ」
ん?やばい、俺の脳みそにない言葉が出てきたぞ。水星?逆行?ばあちゃんは一体何の話をしているんだ?
俺の頭がパニックを起こしているのを察知したばあちゃんは、
「ごめんごめん、享がそういう話毛嫌いしとるせいで、幸太に免疫ないの忘れとったわ。長旅疲れたやろ?さ、入って!」
荷物を部屋に置き、居間に行くと、ばあちゃんが早めの晩御飯を持ってきてくれた。
今日は俺の大好物の生姜焼きだった。おいしそうに頬張っているとばあちゃんがソワソワしながら口を開いた。
「ところで幸太。母ちゃんに”あれ”聞いてきたかい?」
「聞いてきたよ。けどこんなの何に使うの?」
と俺はとあるメモをばあちゃんに渡した。
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ばあちゃんの道しるべ
主人公がどん底の状態から、自分のやりたいことを見つけていくお話
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