文化芸術と地域振興
少しだけ時間がとれたので美術作家展に行ってきました。美術に関しては作品を創るセンスと技術は持ち合わせていないので専ら鑑賞専門です。今日の観た作品の中に「游藝」と書かれた書がありました。これは、論語にある 「志於道拠於徳 依於仁藝游於(人として正しい道を志し、実践により体得した徳性を拠りどころにし、思いやりの心を決して離さない。そして世の中に立つために重要な教養に熱中する」に由来している言葉で、水戸の弘道館の額にもある有名な言葉です。文化芸術は、人々の創造性を育み、豊かな人間性を涵養するとともに人と人とのつながりを強め、心豊かで多様性と活力のある社会を形成するとされています。また、地域社会の基盤を形成して生活の礎となることから、文化芸術が長い人類史上において必要不可欠なものの一つであり続けています。このように地域社会に深く関係している文化芸術は、近年、まちづくりや観光だけではなく、国際交流や福祉の分野においても価値を生み出しており、今後も創造的な社会経済活動の源として、デジタル技術などを取り入れ新たな価値を生み出しながら、地域社会の持続的な発展に寄与していくものとして考えられるので、文化芸術について少しだけ考えていきたいと思います。
コロナ禍と文化芸術活動
日本全国各地域にはそれぞれ魅力的な有形・無形の文化財があり、日常生活だけではなく、各地でのお祭りなどにおける伝統行事へ参加によって保存がなされ、今日まで受け継がれてきた誇るべきものです。平成30年の文化財保護法改正により、地域における文化財の計画的な保存・活用を図るなど、文化財が後世に確実に継承される施策がはじまりました。しかし、新型コロナウイルスの影響により文化イベントの中止や、緊急事態宣言における外出を控えたことにより、文化芸術は不要不急のものとして扱われ甚大な影響を受け存続が危ぶまれました。
90%以上の団体が収入源と回答し、そのうち半減した団体が8割り超。また、他の文化芸術の鑑賞活動に参加したかに関するアンケートでは「新型コロナウイルスによって講演が中止になった」「外出を控えた」などの回答が多く、コロナウイルスの影響がいかに大きかったかがよくわかる結果となっています。
デジタル化による新しい道
コロナ禍により多大な影響を受けた文化芸術分野ですが、デジタル化の急速な発展伴うDXの進展により、オンラインでの文化芸術の鑑賞や遺跡等があたかも目の前にあるかのように体験できるなど、文化芸術とデジタルの新たな取組みも注目されました。今後は深刻な少子高齢化による人口減少によって、文化芸術の担い手が著しく減少するとともに、地域における個性的な伝統文化を後世に伝えていく役割を担う子どもたちが減少していることから、各地に存在する豊かな地域文化の衰退も懸念されています。担い手の減少だけではなく、講演や博物館の鑑賞者も減少することが予測されるため、デジタル技術を用いた需要・市場を意識した文化芸術活動を推進していくことが必要となってくると考えられます。
文化芸術が地域振興のカギ
世界に目を向けてみても世界のアート市場は2020年にコロナウイルスの影響で減少したものの現在は回復基調にあり世界全体で650億ドルを超えています。アメリカ(43%)、中国(20%)、イギリス(17%)の3カ国がアート市場全体の80%を占める一方で、日本は1%未満となっていることから、日本におけるアート市場の活性化は課題となっています。海外からの需要も見込めるインバウンド効果も含め地域の文化芸術活動の活性化によってアート市場を開拓していくことにもなり、地域の文化資源の保護・活用が、今後の地域活性化の一つのキーワードになると思います。これからの地域活性化に必要なのは、文化芸術の担い手となる団体や関係者への文化芸術活動への支援強化、芸術教育の充実、文化芸術振興拠点の整備などを行うことでアート市場を拡大させるとともに、文化芸術が持つ人々の創造性を育み、豊かな人間性を涵養することで、心豊かで多様性と活力のある社会を形成していくことが大事だと思います。
おまけ
とりわけ文化芸術に詳しいわけではないが、時間があると美術館や博物館を覗きに行くことがある。徳川斉昭公の「芸に游ぶ」というのは、ただ単に遊ぶという意味ではなく「学問武芸に悠々楽しみながら勉強する」という意味だと解釈できます。芸術文化に楽しみながら日々の仕事や勉強に励むといいのかもしれません。
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